シドニー西部のオウムが、公園の水飲み器を足でひねって飲んでいた。近くの群れの約7割が挑戦

シドニー西部のキバタンは、公園の水飲み器のハンドルを足でひねって水を飲む。1台を44日見張ると525回の挑戦があり、成功は41%だった。

No.010 8分で読めるえっ度 論文 2025年
公園の芝生に立つ腰の高さほどのコンクリートの水飲み器の上で、黄色いとさかの白いオウム(足の指は前に2本、後ろに2本)が片足でハンドルをつかみ、体を低くして、出てきた水に顔を向けている。

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  1. キバタンは、公園の水飲み器のハンドルを足でひねって水を飲む
  2. 1台の水飲み器に、44日で525回の挑戦があった
  3. ゴミ箱を開ける技に続く、2つ目の「地域の伝統」と考えられている

人に話すなら

オーストラリアのキバタンっていう白いオウム、公園の水飲み器のハンドルを足でひねって水を飲むんだって。体重をかけて回して、そのまま飲むらしい。近くの群れの7割くらいが挑戦してるみたいだよ。

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読む前に予想しよう

キバタンが水飲み器を使うのは、ほかの水場が干上がる暑い日だけだ

オーストラリアのシドニーには、キバタンという大きな白いオウムがたくさんすんでいます。黄色いとさかが目印です。このキバタンは、家の前に出されたゴミ箱のふたを開けて、中の食べ物をあさることで知られるようになりました。

そのキバタンが、今度は公園の水飲み器を使っていました。人が手でひねるハンドルを、足でつかみ、体重をかけて回すのです。研究チームが1台の水飲み器を44日間カメラで見張ると、挑戦は525回ありました。成功したのは、そのうち41%でした。

ある鳥が思いついた技が、まわりの鳥に広まって、地域に根づく。動物の世界でそうした例は、まだあまり多く見つかっていません。この水飲み器の技は、キバタンで見つかった2つ目の例と考えられています。

01シドニーのキバタンは、ゴミ箱を開ける技で知られていた

キバタンは、オーストラリア東部にすむ、脳が大きく長生きで、群れで暮らすオウムです。近年は都会でもよく見かけます。シドニーでは数年前から、キバタンが家庭のゴミ箱のふたを開ける姿が報告されていました。

ドイツのマックス・プランク動物行動研究所のバーバラ・クランプ(Barbara Klump)さんたちは、この技を調べました。2018年と2019年にインターネットで住民にアンケートをとり、1322人から1396件の報告を集めました。その結果、ゴミ箱を開ける技が見られた地区は44ありました。2018年より前に見られていたのは、そのうち3地区だけでした。

チームは、地区どうしの距離と、技が見られた時期を分析しました。すると、技が近くの地区から地区へ伝わったと考えると、よく説明できました。チームは、この広がりの大部分が、ほかの鳥を見て覚える学習によると結論しました。この研究は2021年に発表されました。

02公園の水飲み器を、足と体重を使ってひねっていた

水飲み器の技に最初に気づいたのも、クランプさんです。2018年9月、シドニー西部で鳥の調査のために歩いていたときに見つけました。公園の管理をする人たちからも、同じ報告が届きました。2019年6月に、チームはこの行動が続いていることを確かめました。

その水飲み器は、高さ約1mのコンクリートの台に、ゴムの飲み口がついたものです。飲み口から約15cm下に、ひねって回すハンドルがあります。手をはなすと、ばねで元に戻ります。

キバタンはまず、片方の足(多くは右足)でハンドルをつかみます。もう片方の足でゴムの飲み口をつかむか、両足でハンドルに乗ります。そして体を沈めて体重をかけ、ハンドルを時計回りに回します。ハンドルが戻らないようにおさえたまま、首をひねって出てきた水を飲むのです。

031台を44日見張ると、525回の挑戦があった

チームは、近くのねぐらの鳥24羽に、色の目印をつけました。つかまえずに、慣れさせてから目印をつける方法です。ねぐらには100〜150羽ほどがいたので、その2割ほどにあたります。

2019年8月末から10月上旬まで、1台の水飲み器の両側に、動くものを感知して撮影するカメラを置きました。撮れた短い動画は約1万6000本、そのうち鳥が写っていたのは約3500本です。合わせると約13.5時間分になりました。

44日間で、水飲み器を開けようとした挑戦は525回ありました。目印をつけた24羽のうち、17羽が挑戦しました。チームはここから、この地域のキバタンの約7割が挑戦していると見積もっています。成功したのは全体の41%でした。

目印のある鳥の成功の割合は52%で、ゴミ箱を開ける技の54%とほぼ同じでした。 チームは、2つの技のむずかしさや、覚えるのにかかる時間が似ているのかもしれないと考えています。

公園の柵の上に白いオウムが何羽も並んで、水飲み器の上の1羽を見ている。水飲み器の上のオウムは、両足でハンドルと飲み口をつかんでいる。

水飲み器のまわりでは、順番待ちも起きていました。柵の上にキバタンが並び、ほかの鳥が出した水を横から飲む鳥もいました。まわりにいる鳥が少ないときや、長く挑戦したときほど、成功しやすくなりました。

04ひねり方には1羽ずつのくせがあった

チームは、足とくちばしの動きを0.2秒ごとに記録しました。そして、1羽ずつの動きの順番を比べました。すると、同じ鳥の動きは、ほかの鳥の動きよりもよく似ていました。ひねり方に、1羽ずつのくせがあったのです。

成功したときの動きは、失敗したときよりもばらつきが少なくなりました。うまくいかない鳥ほど、いろいろなやり方を試しているのかもしれない、とチームは考えています。

ゴミ箱を開ける技では、オスが多く挑戦し、群れの中で強いオスほど成功していました。ところが水飲み器では、オスとメスで挑戦の数にも成功にも差は見られませんでした(ただし、性別の分かる鳥は9羽だけです)。チームは、ゴミ箱のふたを開けるほうが力がいることや、ゴミ箱の取り合いが激しいことが関係しているかもしれないと考えています。

05暑い日に頼る水場ではなかった

チームは最初、こう予想していました。暑くて小川や水たまりが干上がる日に、キバタンは確実に水が出る水飲み器に頼るのだろう、と。ところが、使う回数はその日の最高気温と関係がありませんでした。雨の日には、使う回数が減りました。

キバタンが水飲み器に来るのは、朝の7時半ごろと夕方の5時半ごろが多く、夕方が一番でした。これは、鳥が水場を使う時間帯として予想どおりです。けれども、なぜわざわざ水飲み器を使うのかは分かっていません。チームは、水の味がよい、手間をかけて手に入れること自体を好む、ひらけた場所で敵を見つけやすい、などの考えをあげています。どれもまだ確かめられていません。

この技は、少なくとも2年間続いていました。それでも、確かめられたのは1つのねぐらの行動範囲にある5台だけです。チームは、ほかの地域から同じ行動の報告も受けていません。

06水飲み器の形が、技の広がりを止めているのかもしれない

ゴミ箱を開ける技は、数年で44地区に広がりました。なぜ水飲み器の技は広がらないのでしょうか。チームが注目したのは、水飲み器の形です。

家庭のゴミ箱は、オーストラリアのどこでもほぼ同じ形です。一方、公園の水飲み器の形は、市や町ごとに違います。シドニーの水道局が置いている水飲み器は、ボタンを押す形で、ひねるハンドルはありません。チームは、鳥のつながりや頭のよさではなく、水飲み器の形の違いが広がりを止めていると考えています。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

動物の「文化」をどうやって見分けるのか

研究者のあいだでは、動物の文化を「ほかの個体から学んだ、その群れに特有の行動」と考えることが多いです。ところが、ある地域の動物だけが特別な行動をしていても、すぐに文化とは言えません。遺伝の違いや、すむ環境の違いで説明できるかもしれないからです。

都会は、この問題を調べやすい場所だとクランプさんたちは書いています。ゴミ箱のように、どこでも同じ形の道具があるからです。さらに、住民という「たくさんの目」が報告をくれます。2021年の研究では、地区ごとにふたの開け方に違いがあり、離れた場所ほど開け方が違っていました。チームはこれを、地域ごとの小さな文化の違いだと考えています。

文化を持つ動物は、どんな動物か

脳が大きく、群れで暮らし、長生きする動物ほど文化を持ちやすい、という考えがあります。実際、サルの仲間、クジラやイルカ、カラスの仲間で、多くの文化が見つかってきました。大型のオウムもこの特徴を持ち、鳴き声には地域の違いがあることが知られていました。けれども、えさのとり方の文化の証拠は、ほとんどありませんでした。

1949年には、イギリスでシジュウカラやアオガラが、牛乳びんのふたをつついて開ける行動が報告されています。都会で生まれた新しい技の、古くから知られる例です。水を飲むための新しい技となると、さらに珍しくなります。論文があげている例は、チンパンジーの群れで、コケを使って水をすくい取って飲む行動が広まったものです。

ゴミ箱を開けるオウムは、ほかにもいる

2021年の論文によると、ゴミ箱のふたを開ける鳥として知られていたのは、ほかにニュージーランドのミヤマオウムだけでした。ミヤマオウムでも、ふたを開けたのはオスだけでした。ただし、その観察は1か所だけで、成功の割合も低かったため、キバタンとくわしく比べるのはむずかしいと論文は書いています。

この研究の弱点

水飲み器の技については、広がっていく様子を直接見たわけではありません。調べ始めたときには、すでに群れの約7割が挑戦していました。そのため、チームは「すでに広がり終わったあと」と考えています。ほかの鳥を見て覚えた、という点も、状況から考えた結論です。

また、目印をつけたのは、自分から人に近づいてきた鳥です。目印の鳥は、大胆な性格の鳥にかたよっていたかもしれないと論文は書いています。目印のない鳥は1羽ずつ見分けられないので、同じ鳥を何度も数えた可能性もあります。

07まとめ

シドニー西部のキバタンは、公園の水飲み器のハンドルを足でつかみ、体重をかけて回して水を飲みます。1台を44日見張ると、525回の挑戦があり、成功は41%でした。地域のキバタンの約7割が挑戦していると見積もられています。

使う回数は気温と関係なく、なぜ水飲み器を使うのかはまだ分かっていません。技が見つかったのは、1つのねぐらのまわりの水飲み器だけでした。

ゴミ箱を開ける技は、数年で44地区に広がりました。ゴミ箱は、どこでもほぼ同じ形です。一方、水飲み器の技は、町ごとに違う水飲み器の形に止められているのかもしれません。鳥の技が広がるかどうかは、人が作った道具の形にも左右されるのです。

RESEARCH FILE

研究カルテ

オーストラリア・シドニー西部

研究チーム
ドイツのマックス・プランク動物行動研究所などのチーム(第一著者バーバラ・クランプ)
調べた場所
オーストラリア・シドニー西部の3つの公園(合わせて約250ヘクタール)
調べた動物
キバタン(学名 Cacatua galerita)
調べ方
24羽に目印をつけ、水飲み器1台の両側に自動カメラを置いて44日間記録した
分かったこと
525回の挑戦のうち41%が成功。目印をつけた鳥の約7割が挑戦し、ひねり方には1羽ずつのくせがあった
まだ分からないこと
ほかにも水場があるのに、なぜ水飲み器を使うのか。広まった道すじは直接は見ていない
論文
Biology Letters(2025年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Cockatoos Learn to Use a Drinking Fountain

Sulphur-crested cockatoos are big white parrots with yellow feathers on their heads. In Sydney, Australia, some of them open trash bins to find food.

Now scientists have found a new skill. In western Sydney, the birds drink from drinking fountains in parks. A bird holds the handle with one foot and turns it with its body weight. Then it turns its head and drinks the water.

The scientists watched one fountain with cameras for 44 days. The birds tried to use it 525 times. Only 41 percent of the tries worked. Each bird had its own way of turning the handle.

The birds used the fountain most in the morning and the evening. Hot days did not bring more visits. Scientists do not know why they use it. Fountains look different in other towns, so the skill may not spread there.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. What do the cockatoos use to turn the handle?キバタンは何を使ってハンドルを回しますか。

Q2. How many times did the birds try to use the fountain in 44 days?44日間で、鳥たちは何回水飲み器を使おうとしましたか。

Q3. Why may the skill not spread to other towns?なぜこの技はほかの町に広がらないのかもしれないのですか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Klump, B. C., Walter, D., Martin, J. M. & Aplin, L. M. (2025) Emergence of a novel drinking innovation in an urban population of sulphur-crested cockatoos, Cacatua galerita. Biology Letters 論文確認済みdoi:10.1098/rsbl.2025.0010
  2. 2PMC:上の論文の全文pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12133349/
  3. 3Klump, B. C. et al. (2021) Innovation and geographic spread of a complex foraging culture in an urban parrot. Science 論文確認済みdoi:10.1126/science.abe7808
  4. 4コンスタンツ大学リポジトリ:上の2021年の論文の著者版nbn-resolving.de/urn:nbn:de:bsz:352-2-iqhbj14h34ly7

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい