カナダの小鳥の歌に「流行」。新しい歌い方が約3300km広がり、元の歌と入れかわった
カナダの小鳥ノドジロシトドの歌の終わり方が、西から東へ約3300km広がり、元の歌と入れかわった。冬を過ごす場所で覚えるらしい。

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- 歌の最後が「3音のくり返し」から「2音のくり返し」に変わった
- 新しい歌い方は、カナダの西から東へ約3300km広がった
- 冬を過ごす場所で、ほかの地域の鳥から覚えるらしい
人に話すなら
カナダの小鳥の歌って、最後のくり返しが3つの音から2つの音に変わって、それが20年くらいで西から東へ3000km以上広がったんだって。冬に南で一緒になった鳥から覚えるらしいよ。
読む前に予想しよう
カナダの小鳥ノドジロシトドの歌は、この20年ほどで大きく変わった
歌の最後が2音のくり返しになった新しい歌い方が、西から東へ広がった。
カナダの森で、ノドジロシトドという小鳥のオスが、口笛のような澄んだ声で歌います。この歌の最後の部分が、この20年ほどのあいだに、大陸の規模で変わりました。
カナダのノーザン・ブリティッシュ・コロンビア大学などのチームは、オス1785羽の歌を調べました。昔の歌は「3つの音のくり返し」で終わっていました。それが「2つの音のくり返し」で終わる歌に置きかわっていたのです。新しい歌い方は、カナダの西から東へ、約3300km広がっていました。
鳥の歌には、地域ごとの「方言」があります。これまで方言は、同じ地域では長いあいだ変わらないものだと考えられてきました。新しい歌い方が外から入ってきて、元の方言と入れかわるのは、めったにないことだとされていたのです。
011960年代は、どこでも「3音」だった
ノドジロシトドは、北アメリカにすむ、スズメの仲間の小鳥です。オスの歌は、はじめにいくつかの音を出したあと、最後に短い音のまとまりをくり返します。昔からの歌では、このまとまりが3つの音でできていました。1960年代にカナダ全体で調べたときも、どこでもこの「3音」の歌でした。
ところが、ロッキー山脈の西側で、最後のまとまりが2つの音の歌が現れました。1960年から2000年のあいだのどこかです。同じチームの2015年の研究では、ブリティッシュ・コロンビア州のプリンスジョージの鳥が「2音」で歌っていました。その東どなりのアルバータ州を東西に調べると、西へ行くほど「2音」の鳥が多くなっていました。
021785羽の録音で、広がりを地図にした
チームは、北アメリカ各地で録音されたオスの歌を集めました。録音したのは2000〜2019年です。自分たちで録音した895羽に、ほかの研究グループから482羽分が加わりました。さらに、市民が録音を投稿する2つのサイトから、合わせて408羽分を使いました。比べるために、1950年代までさかのぼる古い録音も調べました。
1羽ごとに、声を図にするソフトで歌を見て、最後のまとまりの音の数を数えました。音がはっきり見える録音だけを使いました。
結果は、はっきりしていました。2004年、アルバータ州では約半分のオスが、まだ「3音」で歌っていました。10年後の2014年には、同じ地域のオスがすべて「2音」になっていました。さらに東では、新しい歌は2010年までにオンタリオ州の北西部に届きました。2015年までには、オンタリオ州の中ほどより西で録音した歌が、すべて「2音」になりました。2019年には、ケベック州の西部まで届いていました。
ブリティッシュ・コロンビア州の中央部から、まっすぐ測って約3300kmです。新しい歌が広がった地域では、元の「3音」の歌は完全に消えていました。チームは、これほど速い歌の入れかわりは、知る限りどの鳥でも例がないと書いています。

03新しい歌は、最初ゆっくり、あとで一気に増えた
東のオンタリオ州には、アルゴンキン州立公園があります。ここでは1950年代から、研究者がノドジロシトドを調べ続けてきました。2000年より前の録音では、どのオスも「3音」で歌っていました。
初めて「2音」のオスが見つかったのは2005年です。調べた76羽のうちの1羽でした。2010年になっても、「2音」のオスは5%に届きませんでした。2014年には、101羽中21.8%になりました。2017年には92羽中47.8%、およそ半分が「2音」で歌っていました。
約1%から約22%になるまでに、9年かかりました。ところが、約22%から50%近くまでは、3年しかかかりませんでした。チームは、ある程度の数のオスが歌い始めると、その後は一気に広がるのかもしれないと考えています。
04冬を過ごす場所で、遠くの鳥から歌を覚えるらしい
新しい歌は、どうやって遠くまで伝わったのでしょうか。ノドジロシトドは、冬になるとアメリカの南のほうへ渡り、越冬地でも歌います。チームは、西の鳥と東の鳥が、冬に同じ場所で過ごしているのではないかと考えました。
確かめるため、プリンスジョージで繁殖するオス50羽の背中に、小さな記録装置を付けました。毎日の明るさを記録して、鳥がいた場所を割り出す装置です。装置の重さは0.9グラムで、オスの体重(平均約25.5グラム)の約3.5%です。
翌年以降に戻ってきたオスから、9羽分の装置を回収できました。1羽は、カリフォルニア州の海岸で冬を越していました。残りの8羽は、ロッキー山脈をこえて東へ渡っていました。冬を越した場所は、テキサス州東部やオクラホマ州、アーカンソー州、カンザス州です。この地域は、ほかの鳥たちの越冬地と重なります。ロッキー山脈の東からオンタリオ州北西部までの、北の森で繁殖する鳥たちです。
つまり、新しい歌が生まれた西の鳥と、新しい歌が速く広がった地域の鳥が、冬に同じ場所にいるのです。市民が投稿した冬の録音も調べました。カリフォルニア州やテキサス州など、西寄りの越冬地では「2音」の歌が聞かれました。東海岸の越冬地では、まだ多くが「3音」でした。
チームは、オスが冬に西の鳥の歌を聞いて覚え、繁殖地へ持ち帰ったのではないかと考えています。ただし、鳥が冬に歌を覚える場面を、直接確かめたわけではありません。
05なぜ新しい歌が選ばれたのかは、まだ分からない
なぞは残っています。チームによると、「2音」の歌のほうが、なわばり争いで有利だという理由は見当たりません。それなら、2つの歌い方が同じ地域に混ざって残ってもよいはずです。実際には、新しい歌が広がった地域では、元の歌は消えてしまいました。
チームが挙げる説明の一つは、「新しさ」がメスに好まれる可能性です。ノドジロシトドのメスは、最後のくり返しの部分がない歌より、ある歌を好むことが知られています。メスの関心が慣れた歌から少しずつ離れるなら、オスが新しい要素を取り入れる理由になります。ただし、メスが「2音」と「3音」のどちらを好むかは、まだ調べられていません。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
鳥はどうやって歌を覚えるのか
人間や鳴き鳥など、ほかの個体の声を聞いて鳴き方を覚える動物は、8つのグループに限られます。鳴き鳥が大人の歌を聞いて覚えることは、主に飼育下の実験で確かめられてきました。野生の鳥で実験した証拠は、長いあいだありませんでした。
ダニエル・メニル(Daniel Mennill)らのチームは、2018年にこれを野生で確かめました。チームは、自動で歌を流すスピーカーを使い、特徴のある歌を1年がかりで聞かせました。相手はカナダ東部の野生のサバンナシトドで、5つの年に生まれた若い鳥たちに聞かせました。若いオスはその歌を覚え、次の世代にも伝えました。特に、生まれた年の夏と、初めて繁殖する春の始めに聞いた歌を、よく覚えていました。
この研究で使った歌は、2000km以上離れた地域で録音したものでした。それでも、新しい歌を取り入れたオスは、なわばりをもち、つがいになり、子を育てていました。オッターらは、この結果を、野生のオスが遠くの歌を実際に取り入れる例として挙げています。
方言はなぜ、ふつうは変わらないのか
これまでの考えでは、若い鳥が生まれた場所以外に住みつくとき、近所の鳥の歌に合う歌だけを残します。そのため、地域の方言が長く保たれると考えられてきました。
一方、オッターらの2015年の研究は、ノドジロシトドの「2音」と「3音」の違いについて、別の見方を示しました。地域ごとに相手を見分けるために生まれた違いではなく、たまたま起きた文化の変化と考えたほうが結果に合う、というものです。
歌の始めの部分は、事情が違います。始めの音には、高くなっていくものや低くなっていくものなど、何種類もあります。それらは、どの地域でも混ざったまま残っています。ところが最後の部分だけは、地域ごとにそろって入れかわりました。
研究方法の工夫と限界
1785羽という数は、研究者の録音だけでは集まりません。自動録音機や、市民が投稿した録音を組み合わせたことで、大陸全体の変化が見えるようになりました。装置の付け方にも気を配りました。2016年には、装置を付けない比べるためのオス30羽にも足輪を付け、同じ日に交互に捕まえて扱いました。装置が鳥の負担になって、戻ってくる割合が下がっていないかを確かめるためです。
一方、冬の行き先が分かったのは、1か所で繁殖する9羽だけです。50羽に付けた装置のうち、回収できたのは一部でした。ほかの地域の鳥が冬にどこへ行くのかは、これまでの別の調査の結果に頼っています。チームによると、ロッキー山脈の西では、さらに別の新しい歌い方が生まれて広がり始めています。次の「流行」も、追いかけられています。
06まとめ
カナダの小鳥ノドジロシトドの歌は、最後のくり返しが3つの音から2つの音に変わりました。この新しい歌い方は、20年ほどで西から東へ約3300km広がり、広がった地域では元の歌と完全に入れかわりました。
西のブリティッシュ・コロンビア州で繁殖する鳥の多くは、カナダ中部の鳥と同じ地域で冬を越していました。研究チームは、そこで歌を覚えて持ち帰ったのではないかと考えています。カナダ東部の森で今ノドジロシトドの歌を聞けば、最後のくり返しが「3音」か「2音」かで、流行がどこまで来たかが分かるかもしれません。
研究カルテ
カナダ(ブリティッシュ・コロンビア州プリンスジョージ)
- 研究チーム
- カナダのノーザン・ブリティッシュ・コロンビア大学のケン・オッター(Ken Otter)らのチーム
- 調べた場所
- カナダを中心とする北アメリカ
- 調べた動物
- ノドジロシトド(学名 Zonotrichia albicollis)のオス1785羽の歌
- 調べ方
- 2000〜2019年の録音(市民の投稿を含む)で歌の終わり方を数え、オスの冬の行き先を小型の装置で調べた
- 分かったこと
- 2音で終わる歌が西から東へ約3300km広がり、広がった地域では元の歌と完全に入れかわった
- まだ分からないこと
- なぜ新しい歌のほうが選ばれるのか。メスの好みが関係するのかは確かめられていない
- 論文
- Current Biology(2020年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
The white-throated sparrow is a small bird in North America. Males sing a song like a clear whistle. In the old song, a group of three notes repeats at the end.
In the west of Canada, a new song appeared. It ends with a group of two notes. Scientists studied the songs of 1,785 male birds. Some recordings came from ordinary people. The new song moved east about 3,300 kilometers. In those places, the old song disappeared.
How did the song travel so far? The scientists put tiny tracking devices on birds in the west. Most of them flew to the south of the United States for the winter. Birds from farther east also spend the winter there.
The scientists think birds may learn the new song in winter. Then they may take it back home in spring. But nobody knows yet why the new song wins.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How does the new song end?新しい歌はどのように終わりますか。
新しい歌は、最後のくり返しが2つの音のまとまりになっています。
Q2. How far did the new song move?新しい歌はどれくらい広がりましたか。
ブリティッシュ・コロンビア州の中央部から、東へ約3300km広がりました。
Q3. Where do the scientists think birds learn the new song?研究者は、鳥がどこで新しい歌を覚えると考えていますか。
西と東の鳥が冬に同じ越冬地にいるので、そこで覚えると考えられています。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Otter, K. A. et al. (2020) Continent-wide Shifts in Song Dialects of White-Throated Sparrows. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2020.05.084
- 2Ramsay, S. M. & Otter, K. A. (2015) Geographic variation in White-throated Sparrow song may arise through cultural drift. Journal of Ornithology 論文確認済みdoi:10.1007/s10336-015-1183-8
- 3Mennill, D. J. et al. (2018) Wild Birds Learn Songs from Experimental Vocal Tutors. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2018.08.011
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