北米の湖にすむ魚が112歳まで生きていた。年をとっても衰えの印が見られなかった

北米の淡水魚ビッグマウスバッファローは112歳まで生きていた。年をとった魚ほどストレスの印が少なく、免疫の力も強い傾向があった。

No.059 7分で読めるえっ度 論文 2021年
浅い湖の水の中を、大きな灰色の魚ビッグマウスバッファローがゆっくり泳いでいる。頭の先に、斜め上を向いた大きな口がある。体には黒い斑点と、頭にオレンジ色の斑点がある。

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  1. 耳の中の小さな石の輪を数えると、112歳の魚が見つかった
  2. 核実験で増えた炭素を使って、その年齢が正しいと確かめた
  3. 年をとった魚ほど、ストレスの印が少なく免疫が強い傾向があった

人に話すなら

アメリカの湖にいるビッグマウスバッファローって魚、112歳まで生きるんだって。しかも90歳をこえた魚の血を調べても、若い魚より免疫が強いくらいで、衰えた様子がなかったらしいよ。

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読む前に予想しよう

ビッグマウスバッファローは、年をとるほど免疫の力が弱くなっていた

ビッグマウスバッファローは、アメリカとカナダの湖や川にすむ大きな魚です。長さは1.25メートルを超え、重さは36キロ以上になります。アメリカでは、夜にライトで水を照らし、弓矢で魚を射る釣りの人気のえものです。

アメリカのノースダコタ州立大学などのチームが、この魚の年齢を調べました。すると、112歳の魚が見つかりました。それまでの最高記録26歳の4倍以上で、淡水の硬骨魚(骨がかたい魚)では、知られている中で最も長生きです。2021年の続きの研究では、90歳をこえた魚にも、体の衰えの印が見つかりませんでした。

これまで、この魚は早く育ち、早く大人になる魚だと考えられていました。最高年齢を10〜20歳とする報告もありました。すんでいるのは、深さ4メートルより浅い、温かい湖や川の流れのゆるい所です。そうした浅い場所の魚は、ふつう長生きしないと考えられていました。

01魚の年齢は、耳の中の石に刻まれている

魚の頭の中には、耳石という小さな石があります。耳石には、1年に1本ずつ輪ができます。この輪を数えれば、魚の年齢が分かります。

チームは2016〜2018年に、ミネソタ州の12の集団から386匹を集めました。網や釣り竿、弓矢の釣りなどでとられた魚です。取り出した耳石は樹脂で固め、0.3〜0.5ミリの薄さに切りました。そして顕微鏡で75倍に拡大して何枚も写真をとり、つなぎ合わせて輪を数えました。

輪は2人が別々に数えました。数が大きく食い違ったときは、3人目が数えたり、同じ魚の別の耳石を切り直したりしました。耳石には種類があり、2種類の耳石で数えた年齢がほとんど同じになることも、72匹で確かめました。

02核実験で増えた炭素が、年齢の正しさを裏付けた

輪の数だけでは、本当に1年に1本ずつできているのか分かりません。そこでチームは、核実験の名残を使いました。1950〜60年代、大気中で核実験がくり返され、放射性の炭素(炭素14)が急に増えました。この時期にできた耳石の部分には、その炭素が多く入っているはずです。

チームは、輪の数から決めた「生まれた年」と、耳石の炭素の量が合うかを調べました。1926〜1938年生まれとされた魚の耳石の中心は、核実験の前の低い値でした。1960年生まれとされた魚の中心は、炭素が急に増えていく途中の値でした。

2匹の魚では、耳石の中心から外側へ、順番に削って調べました。90歳と92歳とされた魚です。どの部分の炭素の量も、輪の数から予想される年代の値と合っていました。90歳の魚では、1950年代の終わりにあたる部分から、炭素が増え始めていました。こうして、100歳をこえる年齢の読み方にも、しっかりした裏付けができました。

魚の頭の横に、取り出した小さな白い耳石が置かれている。その横に、薄く切った耳石の断面が拡大され、細いしま模様が何十本も重なっている。

こうして年齢を読んだ結果、ペリカン川流域でとれた224匹のうち、1匹を除くすべてが26歳を超えていました。186匹は75歳以上で、上位5匹は100歳を超えていました。最高は112歳です。

03年をとった魚ほど、ストレスの印が少なかった

人間や多くの動物は、年をとると、ストレスへの対応や免疫の働きが衰えていきます。染色体の端にあるテロメアという部分も、短くなっていきます。ビッグマウスバッファローでも同じことが起きるのでしょうか。

2021年、ニュージーランドのオークランド大学のデレク・ソーアー(Derek J. Sauer)さんと、ノースダコタ州立大学などのチームは、2〜102歳の240匹から血液をとりました。調べたのは3つです。

1つ目は、白血球の中の2種類の細胞の数の比です。長くストレスを受けると、この比は高くなります。年をとると高くなる動物も多くいます。2〜91歳の92匹で調べると、年をとった魚ほど、この比はむしろ低くなっていました。

2つ目は、血液が細菌を殺す力で、免疫の働きの一つです。2〜99歳の86匹を調べると、年齢の構成が似た場所どうしで比べた場合、年をとった魚ほど細菌を殺す力が強くなっていました。

3つ目は、赤血球のテロメアの長さです。2〜99歳の97匹で調べると、年齢との関係は見られませんでした。ただし、ストレスの比が高い魚ほど、テロメアは短くなっていました。

04長生きの魚がいる湖で、若い魚が育っていない

この魚には、心配な事実もあります。ペリカン川流域で調べた魚の82%は、1939年より前に生まれていました。この流域では、1936〜1938年に4つのダムが作られました。チームは、ダムで魚が産卵場所へ行けなくなり、80年ほどのあいだ、若い魚がほとんど育っていないのではないかと考えています。

さらにミネソタ州では、2010年から、夜にライトを使う弓矢の釣りが認められました。弓矢で射た魚は逃がすことができず、この魚には、とってよい数の上限もありません。アメリカでこの魚がもともとすむ22州のうち19州では、釣り人がとる数に制限がありません。

一方、カナダでは1989年に、この魚が「特別な注意が必要な種」に指定されています。世界の魚の情報を集めたデータベースのFishBaseには、2026年10月の時点でも、最高年齢が「26歳」と載っています。

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もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

なぜ年をとっても体を手入れし続けるのか

老化の考え方の一つに、「使い捨ての体の理論」があります。生き物が使える資源には限りがあり、成長や子作りに多く使えば、体の手入れに回す分が減る、という考えです。ビッグマウスバッファローは、大人になってからも、ストレスへの対応や免疫に資源を使い続けているように見えます。

ソーアーらは、その理由を次のように考えています。大きくなった年寄りの魚には、天敵がほとんどいません。そして、年をとるほど多くの卵や精子を作ります。さらに、子が育つのに向いた年は、たまにしか来ません。それなら、長く生きて何度も子作りに挑むほうが得になります。

研究の歴史:年齢の読み方が変わると、魚の一生が変わる

この魚は、昔から人に知られていました。ミネソタ州のバッファローという町の名前は、この魚に由来します。1804年には、アメリカ西部を探検したルイスとクラークが、ネブラスカでこの魚の仲間(バッファローフィッシュ)をとっています。ところが20世紀になると、アメリカでは「ラフフィッシュ(雑魚)」とひとまとめに呼ばれるようになりました。そのため、外国から来た魚やコイの仲間だと誤解されることもあったと、論文は書いています。

この魚の最高年齢は、それまで26歳とされていました。同じサッカー科の魚でも、41〜56歳の長生きが報告されています。論文によると、そのうち2種は、耳石を使わずに年齢を調べたため、実際より若く見積もられているかもしれません。このチームが耳石で調べた近い仲間の1匹は56歳で、それまでの最高記録より32歳も上でした。

淡水魚でこれまで知られていた長生きの記録は、遺跡から見つかった耳石による73歳と、北の湖の魚の62歳でした。ビッグマウスバッファローは、それを40年近く上回りました。

年齢を確かめる方法の工夫と限界

核実験の炭素を使う方法は、海の魚では広く使われてきました。淡水では、比べるための記録が少ないのが弱点です。この研究では、北の湖のマスの仲間などの記録を基準にしました。調べた魚のうち1匹だけ、別の水系の魚は値が基準と合いませんでした。チームは、水系による違いのためと考えています。

ほかの動物との比較と、反対の見方

年をとってもあまり衰えない動物は、ほかにも知られています。ハダカデバネズミは、同じくらいの大きさのネズミの約9倍、28年以上生きます。一部のカメにも、年をとっても死にやすくならない例があります。一方で、寿命の短いトカゲの仲間では、年とともに免疫が大きく衰えます。

ただし、「老化がほとんどない」という考えそのものには、まだ反対の意見もあります。ソーアーらの研究も、同じ魚を何十年も追ったのではなく、いろいろな年齢の魚を一度に比べたものです。丈夫な魚だけが長く生き残った結果を見ている可能性があります。著者たちは、ばらつきの分析からその可能性は低いと考えていますが、確かめるには同じ魚を長く追う研究が必要です。

05まとめ

ビッグマウスバッファローの耳石の輪を数え、核実験でできた炭素で確かめると、112歳の魚が見つかりました。それまでの最高記録の4倍以上で、淡水の硬骨魚では知られている中で最も長生きです。2〜99歳の魚の血液を比べても、年をとった魚に衰えの印は見られませんでした。

その一方で、ダムができてから若い魚がほとんど育っていない湖が多く、弓矢の釣りもほぼ制限なしで続いています。ペリカン川流域の湖で調べたこの魚の8割以上は、第二次世界大戦が始まる前に生まれていました。

RESEARCH FILE

研究カルテ

アメリカ(ミネソタ州ペリカン川流域)

研究チーム
アメリカのノースダコタ州立大学のアレック・ラックマン(Alec R. Lackmann)らのチーム
調べた場所
アメリカ・ミネソタ州の湖と川(12の集団)
調べた動物
ビッグマウスバッファロー(学名 Ictiobus cyprinellus)386匹
調べ方
耳石(耳の中の小さな石)を薄く切って輪を数え、核実験でできた炭素の量で年齢を確かめた
分かったこと
最高112歳。それまでの記録26歳の4倍以上で、淡水の硬骨魚で最も長生きと確かめられた
まだ分からないこと
なぜこれほど衰えないのか。ダムができてから若い魚が育っていない湖が多い
論文
Communications Biology(2019年)、Scientific Reports(2021年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

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A Fish That Lives for More Than 100 Years

The bigmouth buffalo is a large fish in North America. It lives in lakes and slow rivers. People once thought it lived for only about 26 years.

Scientists studied 386 of these fish in Minnesota. A fish has small stones in its head, called ear stones. A new ring grows on the stone every year. The scientists counted the rings, and one fish was 112 years old.

They checked the ages with a special kind of carbon. This carbon increased in the air after bomb tests in the 1950s and 1960s. The carbon in the ear stones matched the ages.

In another study, scientists tested the blood of fish from 2 to 99 years old. The old fish did not look weaker. They showed fewer signs of stress, and their blood killed bacteria better. But in some lakes, almost no young fish are growing up now.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How old was the oldest fish?一番年をとった魚は何歳でしたか。

Q2. What did the scientists count?研究者たちは何を数えましたか。

Q3. What did the blood tests show about the old fish?血液検査で、年をとった魚について何が分かりましたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Lackmann, A. R. et al. (2019) Bigmouth Buffalo Ictiobus cyprinellus sets freshwater teleost record as improved age analysis reveals centenarian longevity. Communications Biology 論文確認済みdoi:10.1038/s42003-019-0452-0
  2. 2Sauer, D. J. et al. (2021) No evidence of physiological declines with age in an extremely long-lived fish. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-021-88626-5
  3. 3FishBase:Ictiobus cyprinellus(魚類データベース)fishbase.se/summary/Ictiobus-cyprinellus.html

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい