魚のスジアラは狩りの相棒を選べた。ウツボの模型2枚から、役に立つほうを2日目には選んでいた
スジアラという魚は、獲物が穴にかくれているときのほうがウツボの模型をよく呼び、2日目には役に立つ模型を選んだ。チンパンジーとほぼ同じ成績だった。

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- スジアラの仲間は、獲物が穴に逃げるとウツボを呼んで狩りをする
- 獲物が穴にかくれているときのほうが、ウツボの模型をよく呼んだ
- 2日目には、獲物を追い出してくれる模型のほうを選んでいた
人に話すなら
スジアラっていう魚は、獲物が岩の穴に逃げると、ウツボを呼びに行って一緒に狩りをするんだって。ウツボの模型で実験したら、穴に逃げたときのほうがよく呼んで、2日目には役に立つほうのウツボを選ぶようになったらしいよ。
読む前に予想しよう
スジアラは、一緒に狩りをするウツボを選べる
2つの模型を使った実験で、2日目には獲物を追い出す模型をよく選んだ。
獲物を追いかけていたら、岩の穴に逃げこまれてしまった。そんなとき、あなたなら穴にもぐりこめる仲間を呼びに行くでしょう。サンゴ礁にすむスジアラの仲間の魚は、本当にそうします。呼ぶ相手は、種のまったく違うウツボです。
イギリスのケンブリッジ大学などのチームは、ウツボの写真で作った模型を使って、スジアラを試しました。スジアラは、獲物が穴にかくれているときのほうが、ずっとよくウツボを呼びました。さらに、獲物を追い出してくれる模型と、どこかへ行ってしまう模型を並べると、2日目には役に立つほうを選ぶようになりました。
「いつ仲間を呼ぶべきか」と「誰を呼ぶべきか」の両方を正しく選べると実験で示された動物は、それまで人以外ではチンパンジーだけでした。チンパンジーの実験と同じ回数で試したところ、スジアラの成績はチンパンジーとほとんど同じでした。
01サンゴ礁の魚が、種の違うウツボを狩りにさそう
この協力の狩りを最初にくわしく報告したのは、スイスのヌーシャテル大学のレドゥアン・ブシャリー(Redouan Bshary)さんたちです。舞台はエジプトのラス・モハメッド国立公園の紅海です。2002年から2004年まで、14匹のハタをシュノーケルで泳ぎながら追いかけ、合わせて400時間あまり観察しました。主役はスジアラと同じ仲間のハタで、相手はドクウツボです。
ハタとウツボは、狩りの得意な場所が違います。ハタは開けた水の中で、すばやく獲物を追いかけます。けれども獲物がサンゴのすき間に逃げこむと、手が出せません。ウツボは細長い体ですき間にもぐりこめますが、昼は穴で休んでいることが多い魚です。
ハタは、休んでいるウツボの目の前で頭を1秒に3〜6回ふって見せました。するとウツボは、観察の58%で穴から出て、ハタと一緒に泳ぎ出しました。ウツボと一緒のとき、ハタが1時間にとれた獲物は、1匹のときの5倍近くになりました。ウツボも、ハタと一緒のときに獲物をとっていました。とった獲物はすぐに丸のみにされ、取り合う争いは一度も見られませんでした。
02獲物が逃げこんだ穴の上で、魚が逆立ちして場所を示していた
ハタには、もう1つの合図がありました。獲物を取り逃がすと、その穴の真上で頭を下にして逆立ちし、間をおいて頭をふるのです。ケンブリッジ大学のアレクサンダー・ベイル(Alexander Vail)さんたちは、紅海の観察記録をもう一度くわしく調べ、2013年に発表しました。
記録された逆立ちは34回で、少なくとも9匹のハタがしていました。逆立ちは、獲物が逃げこんだ場所の真上でだけ行われました。そして34回すべてで、近くにウツボやメガネモチノウオなど、すき間の獲物に手が届く魚がいました。近くに相手がいないときに、逆立ちをした例はありませんでした。
合図はちゃんと届いていました。ハタが逆立ちすると、23回のうち12回で、5分以内にメガネモチノウオが来て穴を調べました。合図をせずに待っていたときに来たのは、74回のうち6回だけでした。ウツボが逆の方向へ行ってしまうと、ハタはウツボのところへ泳いで行き、体をふるわせる合図をし直しました。ウツボの横に並び、穴のほうへ押しやるようなしぐさを見せたこともありました。
チームは、オーストラリアのグレートバリアリーフでも、スジアラが同じ逆立ちをするのを見つけました。相手はワモンダコでした。指し示すしぐさが見つかっていたのは、それまで人と類人猿、カラスの仲間のワタリガラスだけでした。論文は、脳の大きな動物だけの能力ではないと結論しています。
03ウツボの写真で作った模型で、「呼ぶべきとき」を試した
ベイルさんたちは次に、スジアラが相手を「考えて」呼んでいるのかを実験で確かめました。2012年の1月から4月、グレートバリアリーフのリザード島の研究所で、野生のスジアラをつりで捕まえました。体の長さは46〜59cmほどです。
使ったのは、直径2m強の円い水槽です。真ん中に、サンゴのかけらを積んだ小山を置きました。小山の下のすき間には、えさの魚を糸でつって置きます。小山のまわりは透明な筒で囲み、スジアラが直接は獲物にさわれないようにしました。
ウツボの役は、ほぼ実物大のウツボの写真を両面に貼り、フィルムでおおった板です。写真のウツボの長さは52cmです。研究者が板に糸をつけ、引いて動かしました。スジアラが模型の30cm以内で体をふるわせたり、背びれを上下させたり、模型を鼻先でつついたりしたら「呼んだ」と数えます。
試したのは2つの場面です。1つは、獲物が小山の下のすき間にかくれている場面です。ここでウツボを呼べば、模型がすき間に入り、獲物が外に出され、スジアラはえさをもらえます。もう1つは、獲物が最初から外にいる場面です。ここでは自分でおそえばえさがもらえ、ウツボを呼ぶとえさはもらえません。
8匹のスジアラが、1日に最大8回、6日間この実験を受けました。結果、6日とも、スジアラは獲物がすき間にいるときのほうが、はっきり多くウツボを呼びました。日がたつにつれて、獲物が外にいるときに呼ぶまちがいも減りました。決めるまでの時間も短くなりました。

04役に立つウツボと役に立たないウツボ、2日目には選び分けた
2つめの実験では、見た目の違う2枚のウツボの模型を、水槽の左右に置きました。獲物はいつもすき間にかくれています。「役に立つ」模型は、呼ばれるとすき間まで泳いで獲物を追い出します。「役に立たない」模型は、呼ばれると反対側のレンガのほうへ行ってしまい、スジアラはえさをもらえません。
6匹のスジアラが、1日6回、2日間この実験を受けました。チンパンジーの実験と同じ数にそろえたのです。1日目は、2枚の模型を選ぶ回数に、はっきりした差がありませんでした。ところが2日目には、役に立つ模型のほうを、はっきり多く選ぶようになりました。
チームは、チンパンジーの結果と並べて比べています。チンパンジーの実験では、えさをのせた台をひもで引き寄せるしかけを使いました。チンパンジーは、1匹では引き寄せられないときほど仲間をよく呼びました。そして、うまく引ける仲間を数回のうちに選ぶようになりました。スジアラの成績は、このチンパンジーとほぼ同じでした。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
本当に「分かって」選んでいるのか
この研究で分かったのは、スジアラがチンパンジーと同じように正しく選べたということです。どうやって選んでいるのかまでは、分かっていません。論文自身が、すばやく覚える力だけで説明できる可能性を認めています。「呼んだらえさがもらえた」ことを、何度かくり返すうちに覚えただけかもしれないのです。
ほかにも注意する点があります。スジアラの実験では、2枚の模型の置き場所が毎回同じでした。野生のウツボは何か月も同じ穴を使うので、それに合わせたのです。そのため、スジアラは「右のウツボ」のように場所で覚えられました。チンパンジーの実験でも、よく引く仲間のほうが、おりの戸の前に座って戸をゆらすことが多かったと論文は書いています。どちらにも、覚える手がかりがあったのです。
また、獲物が外にいる場面でウツボを呼ぶと、スジアラはえさをもらえませんでした。チンパンジーは同じ場面で仲間を呼んでも、分け合えばえさを得られました。論文は、この違いがスジアラにとって覚えやすくした可能性があると書いています。
脳の大きさより、暮らしに必要かどうか
それでも、この研究は大事な問いを投げかけました。協力の相手を選ぶ力は、人とチンパンジーの共通の祖先から受けついだものだと考えられてきました。脳の大きさや、人との近さが決め手だという見方です。
スジアラは、人ともチンパンジーとも遠い動物です。そのスジアラが同じ課題をこなせるなら、決め手は暮らしの中で必要かどうかかもしれません。スジアラは野生で、種の違う相手と組んで狩りをします。その暮らしが、相手を選ぶ力を育てた可能性があります。論文は、人やチンパンジーとスジアラが似ているのは、別々に同じ能力を身につけた結果だろうと考えています。
種の違う相手と組むと、なぜうまくいくのか
同じ種の仲間で役割を分けて狩りをするのは、実はむずかしいことです。役割を分けると、ある個体は自分では獲物をとりにくい役を引き受けることになります。誰が損な役をするかという問題が生まれるのです。
ブシャリーさんたちは、種の違う相手と組めば、この問題がなくなると考えました。ハタもウツボも、ふだん1匹で狩りをするときと同じ動きをするだけです。それでも一緒に動くと、獲物の逃げ道がなくなります。さらに、どちらも獲物を丸のみするので、分け方でもめることもありません。
05まとめ
サンゴ礁のスジアラの仲間は、獲物が穴に逃げこむと、ウツボを呼んで一緒に狩りをします。穴の真上で逆立ちして、場所を指し示すこともあります。
ウツボの模型を使った実験では、スジアラは獲物が穴にいるときのほうが、ずっとよくウツボを呼びました。そして2日目には、獲物を追い出してくれる模型のほうを選ぶようになりました。チンパンジーとほぼ同じ成績です。ただし、相手の役割を分かって選んでいるのかは、まだ分かっていません。
紅海で観察されたドクウツボは、体の長さが1.3〜2mほどありました。観察されたハタ(55〜100cmほど)より長い相手です。それでも、一緒に狩りをしたあとに獲物を取り合う争いは、一度も見られませんでした。
研究カルテ
オーストラリア・リザード島
- 研究チーム
- イギリスのケンブリッジ大学とスイスのヌーシャテル大学のチーム(第一著者アレクサンダー・ベイル)
- 調べた場所
- オーストラリアのグレートバリアリーフにあるリザード島の研究所
- 調べた動物
- 野生でとったスジアラ(学名 Plectropomus leopardus)。相手はウツボの写真で作った模型
- 調べ方
- 獲物が穴の中か外かでウツボを呼ぶかを6日間試した。次に、役に立つ模型と立たない模型を並べて2日間選ばせた
- 分かったこと
- 獲物が穴にいるときによく呼び、2日目には役に立つ模型をよく選んだ。チンパンジーの実験とほぼ同じだった
- まだ分からないこと
- 相手の役割を分かって選んでいるのか、すばやく覚えているだけなのか
- 論文
- Current Biology(2014年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
The coral trout is a fish that lives on coral reefs. It is fast in open water, but it cannot get into small holes. So when its prey hides in a hole, it asks a moray eel for help.
Scientists tested coral trout with model eels made from photos. The trout called the model eel more often when the prey was in a hole. Day by day, they called it less often when the prey was in the open.
Next, the scientists used two model eels. One eel helped and pushed the prey out of the hole. The other eel swam away. On the second day, the trout chose the helpful eel more often.
Chimpanzees did about as well in a similar test. But we still do not know if the fish understand the eel's role.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. When did the coral trout call the model eel?スジアラは、どんなときにウツボの模型を呼びましたか。
スジアラは、獲物が穴にかくれているときにウツボの模型をよく呼びました。
Q2. What were the model eels made from?ウツボの模型は何で作られていましたか。
模型は、ウツボの写真を両面に貼った板でした。
Q3. Which animal did about as well in a similar test?似た実験でほぼ同じ成績だった動物はどれですか。
相手を選ぶ実験で、スジアラの成績はチンパンジーとほぼ同じでした。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Vail, A. L., Manica, A. & Bshary, R. (2014) Fish choose appropriately when and with whom to collaborate. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2014.07.033
- 2Vail, A. L., Manica, A. & Bshary, R. (2013) Referential gestures in fish collaborative hunting. Nature Communications 論文確認済みdoi:10.1038/ncomms2781
- 3Bshary, R. et al. (2006) Interspecific communicative and coordinated hunting between groupers and giant moray eels in the Red Sea. PLoS Biology 論文確認済みdoi:10.1371/journal.pbio.0040431
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