飼育員が2分間話しかけると、ルリコンゴウインコの目のまわりの白い肌が赤くなりやすかった
飼育員が見つめて話しかけた後は、背中を向けた後より、インコの目のまわりの白い肌が赤いと判定されやすかった。頭の羽も立ちやすかった。

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- 飼育員が話しかけた後は、背を向けた後より目のまわりが赤いと判定されやすかった
- 頭のてっぺんの羽も、話しかけられている間のほうがよく立っていた
- ニワトリでは、こわい場面のほうが顔が赤くなったという研究もある
人に話すなら
ルリコンゴウインコって、ほおに羽のない白い肌があるんだけど、なじみの飼育員が話しかけると、そこが赤くなりやすいんだって。鳥にも顔色の変化があるらしいよ。
読む前に予想しよう
ルリコンゴウインコの顔の白い肌は、場面によって赤くなることがある
飼育員が話しかけた後の写真のほうが、目のまわりが赤いと判定されやすかった。
人は、照れたりほめられたりすると顔が赤くなります。顔が赤くなるのは人間だけのもの、と考えられてきました。では、鳥の顔の色は変わるのでしょうか。
ルリコンゴウインコは、青と黄色の羽を持つインコです。ほおには羽のない白い肌があります。フランスの研究チームは、なじみの飼育員がインコを見つめて話しかける2分と、背中を向ける2分を比べました。飼育員が見つめて話しかけた後の写真は、背中を向けた後の写真より、目のまわりが「赤い」と判定されやすくなりました。
鳥には、人のような顔の筋肉がありません。そのため、鳥の顔に「表情」があるかどうかは、ほとんど調べられてきませんでした。この研究は、羽の立て方と肌の色という2つの手がかりで、コンゴウインコの仲間の顔を初めてくわしく調べました。
01ルリコンゴウインコの顔には、動く羽と白い肌がある
鳥の頭の羽は、場所ごとに別々に立てたり寝かせたりできます。羽が生えている皮ふそのものに、縮んだりゆるんだりする働きがあるからです。研究チームは、ルリコンゴウインコの頭を3つの場所に分けて見ました。
- 頭のてっぺん(緑の羽)
- 首の後ろ(青・黄・黒の羽)
- ほお(白い肌の上に、黒い羽が線のように並ぶ)
羽を寝かせると、羽の1本1本は見分けられません。ほおの黒い線も、つながって見えます。羽を立てると、羽の先が1本ずつ見えます。ほおの線は、とぎれとぎれになります。
顔の皮ふが赤くなる鳥は、ほかにもいます。2006年に、そうした鳥を初めて一覧にまとめた論文が出ました。それによると、そうした鳥は鳥の分類で12の「目(もく)」、少なくとも20の「科」にまたがっていました。赤い色のもとは、血液の中のヘモグロビンです。ただ、インコの仲間で顔色の変化を調べた研究はありませんでした。
02まず、ふだんの暮らしで羽の立て方を記録した
実験したのは、フランス国立農学研究所(当時の略称INRA)のアリーヌ・ベルタン(Aline Bertin)さんたちです。調べたのは、フランスのボーバル動物園で飼われている5羽です。5羽とも人の手で育てられ、毎日、屋外を自由に飛ぶショーの練習をしていました。年齢は1〜4歳で、まだ子どもを作る年齢ではありません。客の前には出ない鳥でした。
最初に、ふだんの暮らしを撮影しました。1羽を20分ずつ追いかけ、1羽につき合わせて2時間分のビデオを撮りました。そして5秒ごとに、何をしているかと、3か所の羽が立っているかを記録しました。記録の数は、1羽あたり平均で約1,300回になりました。
結果ははっきりしていました。休んでいるとき、木をかじっているとき、羽づくろいや仲間とのふれあいのときは、羽がよく立っていました。歩いたり飛んだり、えさを食べたりしているときは、羽が立つことが少なくなりました。研究チームは、頭の羽を立てるのは、落ち着いた状態と関係があるのかもしれないと考えています。
03飼育員が話しかける2分と、背中を向ける2分を比べた
次が本番の実験です。飼育員がインコを1羽ずつ手に乗せ、数メートル先の空いた飼育場に運びます。そこには見慣れた止まり木と、三脚に立てたビデオカメラがあります。相手をする飼育員は、毎日この鳥たちに飛ぶ練習をさせている、いちばんなじみの人でした。
1回の実験は、2分ずつの2つの場面でできています。
- 場面1:飼育員がインコを見つめ、話しかける(なでたりかいたりはしない)
- 場面2:飼育員は同じ距離にいるが、インコに背中を向ける
それぞれの場面の終わりに、インコの左の横顔を写真に撮りました。これを1羽につき10回、2週間かけて1日1回ずつ行いました。
写真は全部で100枚になり、ぶれた3枚を除きました。ぶれていたのは、3枚とも飼育員が背中を向けていたときの写真です。この写真を、実験の中身を知らない4人に見せました。4人は、目のまわりの白い肌が赤くなっているかどうかを、1枚ずつ判定しました。目のまわりを選んだのは、前もって観察したとき、そこがいちばんよく赤くなっていたからです。

04話しかけられた後の写真は「赤い」と判定されやすかった
飼育員が話しかけた後の写真は、背中を向けた後の写真より、赤いと判定した人の割合が高くなりました。この差は、偶然とは考えにくい大きさでした。
羽にも違いが出ました。頭のてっぺんの羽は、話しかけられている間のほうが、よく立っていました。首の後ろの羽には、はっきりした違いがありませんでした。ほおの羽は、飼育員との実験では一度も立ちませんでした。仲間どうしのときとは、羽の使い方が違うことになります。
飼育員が背中を向けると、インコは別の行動も見せました。飼育員の服をくちばしやつめでつかむ、体を横に傾けて飼育員の方をのぞきこむ、飼育員に飛び乗る、などです。研究チームはこれを「相手をしてほしい」という行動と考えました。この行動は、話しかけられている間より、背中を向けられている間のほうが多く出ました。研究チームは、インコが話しかけてもらう時間を取り戻そうとしていた、と考えています。
05ニワトリでは、こわい場面のほうが顔が赤くなった
ただし、この結果だけで「インコはうれしくて赤くなった」とは言えません。論文自身が、その弱いところを書いています。
1つめは、場面の順番です。実験はいつも「話しかける」が先で、「背中を向ける」が後でした。予備の実験で、最初に相手をされないと、インコが止まり木にとどまらなかったからです。そのため、飼育場から運ばれてきた直後の興奮で赤くなっていた可能性を、消しきれません。2つめに、背中を向けられた場面での行動は、いらだちを表していたかもしれません。そして何より、調べたのは5羽だけです。
同じ研究グループは、その後ニワトリでも顔色を調べました。2024年の論文では、2つの品種の若いめんどり計18羽を撮影しました。休む・羽づくろいをするなど、落ち着いた場面では、肌の赤さが低くなりました。ほおと耳たぶは、人につかまえられたときや、危険に身がまえたときのほうが赤くなりました。砂浴びや、ごほうびの虫を食べるときのような、楽しいはずの場面より赤かったのです。2025年には大人のめんどり12羽で調べました。いちばん赤くなったのは、やはりこわい場面や、思いどおりにならない場面でした。
つまり鳥の顔の赤さは、「うれしい」の印とは限りません。興奮の強さを表している部分が大きいのかもしれません。インコの実験の論文も、赤くなることは「興奮の強さ」か「気持ちのよしあし」、またはその両方の手がかりになりうる、と書いています。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
鳥の顔が赤くなるしくみは、もとは体を冷やすためだったかもしれない
顔の皮ふが赤くなる鳥を調べた2006年の論文は、カンムリカラカラとズキンハゲワシという2種の鳥の皮ふを顕微鏡で見ています。羽のない顔の皮ふのすぐ下には、血管がたくさん集まった層がありました。ここに血が流れこむと、皮ふが赤く見えます。羽の生えている部分には、血管がほとんどありませんでした。
この論文によると、顔が赤くなる鳥の多くは、色が黒っぽく、体が大きく、暑い所にすむ鳥でした。そこで論文は、こう考えています。血管の多い皮ふは、まず体の熱を逃がすために発達したのではないか。その後で、体の調子や群れの中の地位を伝える合図として使われるようになったのかもしれない、という考えです。
「鳥に表情はない」という考えの見直し
人やサル、犬、ネコ、ウマ、ブタ、ネズミでは、顔の筋肉の動きから気持ちを読む研究が進んできました。鳥にはその筋肉がないため、表情の研究からは外されてきました。ルリコンゴウインコの論文は、羽と肌の色という別の道具で、鳥の顔を調べる道を開きました。
論文は、比べる相手としてサルを挙げています。サルの仲間の顔の色や、毛のない肌の色には、その個体が誰か、繁殖できる状態かといった情報がふくまれます。ただ、サルが人のように一時的に顔を赤らめるのかは、まだ分かっていません。また論文によると、同じ地域にすむベニコンゴウインコでは、顔が赤くなることは報告されていません。
いちばん大きな宿題:仲間はその色を見ているのか
顔の赤さが「合図」だと言うには、見る側の反応を確かめる必要があります。仲間のインコが、赤くなった顔を見て行動を変えるのか。これはまだ誰も調べていません。研究チームは、飼育場の中では光の明るさが大きく変わるため、仲間どうしでいるときの顔色は測れなかったと書いています。野生のインコでも同じことが起きるのかも、これからの課題です。
06まとめ
ルリコンゴウインコの顔には、羽のない白い肌があります。なじみの飼育員が2分間見つめて話しかけると、その後の写真では、目のまわりが赤いと判定されやすくなりました。頭のてっぺんの羽も、よく立っていました。
ただ、調べたのは5羽だけで、場面の順番も固定されていました。ニワトリでは、こわい場面のほうが顔が赤くなったという結果もあります。顔の赤さが何を表すのかは、まだ決まっていません。それでも、顔の筋肉がなくても鳥の顔には変化がある、ということは見えてきました。動物園でルリコンゴウインコを見かけたら、ほおの白い肌と、頭の緑の羽に注目してみてください。
研究カルテ
フランス
- 研究チーム
- フランス国立農学研究所(当時INRA)などのチーム(第一著者アリーヌ・ベルタン)
- 調べた場所
- フランスのボーバル動物園(サンテニャン)の飼育場
- 調べた動物
- 人の手で育てたルリコンゴウインコ5羽(学名 Ara ararauna)
- 調べ方
- 飼育員が話しかける2分と背中を向ける2分を10回ずつ。ビデオと写真で羽と肌の色を調べた
- 分かったこと
- 話しかけた2分間は、頭のてっぺんの羽がよく立ち、目のまわりが赤いと判定されやすかった
- まだ分からないこと
- 赤くなるのが「うれしさ」なのか「興奮」なのか。仲間がその色を見て反応するのか
- 論文
- PLOS ONE(2018年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
The blue-and-yellow macaw is a parrot with white skin on its face. There are no feathers on this skin. Scientists in France wanted to know if the skin changes color.
They studied five macaws at a zoo. For two minutes, a keeper looked at a bird and talked to it. For the next two minutes, she turned her back to the bird. They took a photo of the bird's face after each part.
Four people checked the photos. The skin around the eye looked red more often after the keeper talked to the bird. The green feathers on top of the head also stood up more.
But we do not know if the birds were happy or just excited. In a study of chickens, their faces got redder when they were scared. Birds have no face muscles like ours, but their faces can still change.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How many macaws did the scientists study?研究者は何羽のインコを調べましたか。
動物園のルリコンゴウインコ5羽を調べました。4は写真を確かめた人の数です。
Q2. What did the keeper do in the second part?2つめの場面で、飼育員は何をしましたか。
飼育員は同じ場所にいましたが、インコに背中を向けました。
Q3. When did chickens' faces get redder?ニワトリの顔は、どんなときに赤くなりましたか。
ニワトリでは、こわい場面のほうが顔が赤くなりました。赤い顔がうれしさの印とは限りません。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Bertin, A. et al. (2018) Facial display and blushing: Means of visual communication in blue-and-yellow macaws (Ara Ararauna)? PLOS ONE 論文確認済みdoi:10.1371/journal.pone.0201762
- 2Bertin, A. et al. (2023) Captive Blue-and-yellow macaws (Ara ararauna) show facial indicators of positive affect when reunited with their caregiver. Behavioural Processes 論文確認済みdoi:10.1016/j.beproc.2023.104833
- 3Arnould, C. et al. (2024) Facial blushing and feather fluffing are indicators of emotions in domestic fowl (Gallus gallus domesticus). PLOS ONE 論文確認済みdoi:10.1371/journal.pone.0306601
- 4Negro, J. J. et al. (2006) Function and occurrence of facial flushing in birds. Comparative Biochemistry and Physiology Part A 論文確認済みdoi:10.1016/j.cbpa.2005.10.028
- 5Soulet, D. et al. (2025) Adult chicken hens express their affective states via bare facial skin blushing and head feather movements. Animal Behaviour 論文確認済みdoi:10.1016/j.anbehav.2025.123277
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