カモメは人が食べているお菓子の袋の色を見ていた。つついた22回中21回が同じ色

人が青い袋のお菓子を食べると、カモメは地面の青い袋をつついた。人が手に取った食べ物を選び、人に見つめられると近づくのが遅れることも分かった。

No.164 8分で読めるえっ度 論文 2023年
海辺の石畳の上に、青と緑のお菓子の袋が離れて置かれている。大人のセグロカモメ(白い頭、灰色の背中、翼の先は黒に白い点、黄色いくちばしの先に赤い点、ピンク色の脚)が、青い袋に近づいている。奥に、青い袋を手に座る人の後ろ姿。

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  1. 人が青い袋から食べると、カモメは地面の青い袋をつついた
  2. 人が手に取ったほうの食べ物を、カモメはよく選んだ
  3. 人に見つめられると、カモメは食べ物に近づくのが遅くなった

人に話すなら

海辺のカモメって、人が食べてるポテトチップスの袋の色を見てるんだって。人が青い袋から食べると、地面に置いた青と緑の袋のうち、青いほうをつつくらしいよ。

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読む前に予想しよう

人の食べ物をねらうのは、町のカモメのほとんどだ

イギリスの海辺の町で、海岸通りに青と緑のポテトチップスの袋が置かれています。少し離れた所に座った人が、青い袋を取り出して食べ始めます。近くにいたセグロカモメが歩いてきて、地面の袋をつつきます。選んだのは、青い袋でした。

イギリスのサセックス大学のチームは、この実験を海辺のカモメのべ183羽で行いました。人が食べていると、袋をつつくカモメが増えました。そして、カモメがつついた22回のうち21回は、人が食べている袋と同じ色の袋でした。

カモメが人の食べ物をねらうことは、よく知られています。けれども、カモメが人の何を見て、どう行動を決めているのかは、ほとんど調べられていませんでした。ここ数年、イギリスの研究者たちが、海辺の町で野生のカモメを相手に、この問いを実験で確かめています。

01町のセグロカモメは、人のそばで食べ物を探す

セグロカモメは、潮が引いた海辺の生き物を食べるだけでなく、ほかの鳥の獲物を横取りもする鳥です。イギリスでは、1940年代に町の建物で巣を作る例が出てきました。その後、町で暮らすカモメが各地に広がりました。屋根の上で子育てをし、人の捨てた食べ物も食べています。

その一方で、イギリス全体のセグロカモメは、1969年から2015年の間に60%減りました。そのため、保護が必要な鳥のリストにも入っています。町では人の食べ物を取られたという苦情が多く、人とカモメのトラブルを減らす方法が求められています。

トラブルを減らすには、まずカモメが人をどう見ているかを知る必要があります。そこで研究者たちは、野生のカモメに、人の行動を手がかりにする力があるかを調べ始めました。

02人に見つめられると、カモメは近づくのが遅くなった

最初の実験は、イギリスのエクセター大学のマデレン・グーマス(Madeleine Goumas)たちが行いました。時期は2018年の11月から12月です。場所は、イギリス南西部コーンウォールの海辺の町です。実験する人は、揚げたポテト250グラムを、口を閉じた透明な袋に入れて、自分の前約1.5メートルに置きました。カモメが中身を食べてしまわないよう、袋には重りもつけました。

カモメが歩いて近づき始めると、実験する人は2つのやり方のどちらかをとりました。1つは、カモメの目をじっと見つめ続けるやり方です。もう1つは、頭と目を約60度横に向け、カモメを見ないやり方です。同じカモメで両方を試し、袋をつつくまでの時間を比べました。

結果、見つめられたときのほうが、カモメは袋に近づくのに時間がかかりました。2つのやり方の差は、中央値で21秒でした。見つめられると、5分たっても袋に触れなかったカモメが6羽いました。その6羽も、目をそらされたときは全部袋に触れました。

ただし、実験を試みた74羽のうち、両方の試験をやり終えたのは19羽、全体の26%だけでした。多くのカモメは、人のすぐ近くの食べ物には近づかなかったのです。

03人が手に取ったほうの食べ物を、カモメはよく選んだ

グーマスたちは次に、カモメが人の手の動きを見ているかを調べました。2019年、イギリス南西部の町で、休んでいる大人のセグロカモメの約8メートル前に、まったく同じ焼き菓子を2つ置きました。お菓子は袋に入ったまま、重い板にテープでとめてあります。

グーマスは、2つのうち1つだけを手に取り、顔の近くまで持ち上げて20秒間持ちました。それから元の場所に戻し、約10メートル離れて見守りました。目線で合図にならないよう、色の濃いサングラスをかけていました。

お菓子をつついたカモメ24羽のうち、19羽(79%)が、人が手に取ったほうを選びました。比べるために、別のカモメ41羽には、同じ大きさに切った青いスポンジで同じ実験をしました。こちらは、スポンジをつついた23羽のうち15羽が、手に取ったほうを選びました。けれども、偶然と区別できる差ではありませんでした。人が手に取ることが手がかりになるのは、食べ物のときだけらしいのです。

海岸通りで、セグロカモメが首を後ろに回して、ベンチに座る人の手元を見ている。人の顔は見えず、手に青い袋を持っている。

04人が食べている袋と同じ色の袋を、カモメは選んだ

3つ目は、冒頭のサセックス大学の実験です。実験したのは、フランツィスカ・ハッカー(Franziska Hacker)とキーラ・スミス(Kiera Smith)です。2021年と2022年に、ブライトンの約8.7キロメートルの海岸通りで行いました。

青と緑のポテトチップスの袋を、タイルにテープでとめ、1.5メートル離して地面に置きます。カモメからの距離は5〜10メートルです。実験する人は、袋から約5メートル離れて地面に座ります。そして、何もせずに座っているか、かばんから青か緑の袋を出して食べるかのどちらかをしました。同じカモメを2回試さないよう、実験の場所は毎回200メートル以上ずらしました。

人が何もしないときは、80羽のうち袋をつついたのは2羽だけでした。人が食べているときは、103羽のうち22羽がつつきました。そして、その22回のうち21回が、人が食べている袋と同じ色の袋でした。人が食べているとき、カモメは人のほうへ何度も首を向けました。袋に近づいたカモメの割合も、人が何もしないときの約19%から、約48%に増えました。

袋ではなく、人のほうへ向かったカモメもいました。人が食べているとき、10羽は地面の袋の横を素通りして、食べている人に近づいていきました。

05ただし、人をよく見ているのは一部のカモメ

3つの実験には、共通する限界があります。人が近づいても逃げなかったカモメだけが、実験の対象になりました。グーマスたちも、町のカモメ全体を代表しているとは限らないと書いています。人の食べ物に手を出すのは、カモメの中でも一部の、慣れて大胆な個体らしいのです。

年齢による違いもありました。サセックス大学の実験では、人を見る首の動きは、若いカモメと大人とであまり変わりませんでした。けれども、袋をつついたうちの86%は大人でした。観察したカモメのうち、大人は半分より少なかったのに、です。若いカモメが大人に追い払われる場面も見られました。経験を積むうちに、人を読む力を使いこなすようになるのかもしれません。

また、カモメが人の「好み」を理解しているとまでは言えません。人が食べている物と同じ見た目の物に、注意が向いただけとも説明できます。論文も、まずはこの説明が当てはまると考えています。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

なぜカモメは人をよく見るのか

セグロカモメは、ほかの鳥の獲物を横取りする鳥です。サセックス大学の論文によると、横取りをする鳥は、横取りされる側の鳥より、体に比べて脳が大きい傾向があります。横取りには、周りの環境とほかの個体の両方の情報を使う必要があるからだと考えられています。また、カモメは仲間が集まる所を見て、食べ物を見つけることがよくあります。大人になるまで4年かかり、長生きなので、見て覚える機会も多い鳥です。

町のカモメの歴史は、まだ80年ほどです。論文は、人を読む力は、町の暮らしのために新しく進化したというより、横取りの名人としてもともと持っていた柔軟さの「おまけ」かもしれないと考えています。

場所に引かれるのか、物に引かれるのか

動物が他者を見て行動を変えるしくみには、いくつかの種類があります。1つは、他者がいた「場所」に引き寄せられることです。もう1つは、他者が触っていた物と「同じ種類の物」に引き寄せられることです。

人が手に取ったお菓子を選んだ実験は、どちらとも説明できます。けれども、袋の色をそろえた実験では、カモメは人から離れた地面の袋のうち、人の袋と同じ色の袋を選びました。これは、「同じ種類の物」に引かれたと考えるほうが自然です。一方で、袋の横を素通りして人に近づいたカモメは、「場所」や人そのものに引かれていたのかもしれません。

ほかの動物との比較

人の合図を使って食べ物を探す力は、イヌやウマ、ヤギなど、人に飼いならされた動物でよく調べられてきました。イヌは人の視線の向きを手がかりにできます。ヤギやウマは、人の指さしを使えます。人に手で育てられたワタリガラスが、実験者が触った物を選んで触った研究もあります。

ただ、こうした研究の多くは、人に慣れた飼育下の動物が対象でした。カモメの実験は、野生で自由に暮らす動物も、人から学べることを示しています。トウゾクカモメの仲間で、やはり横取りをする海鳥でも、人が触った食べ物を好むことが報告されています。

人とカモメのトラブルを減らすには

グーマスたちは、人の小さな行動の変化で、トラブルを減らせるかもしれないと考えています。たとえば、近づいてくるカモメを見つめれば、近づくのが遅れる可能性があります。ただし、見つめられてもすぐ近づくカモメもいて、個体差は大きいものでした。サセックス大学のチームは、カモメにえさを与えないだけでなく、人が何を食べているかをカモメが見ていることも、対策で考える必要があると書いています。

06まとめ

イギリスの海辺の町のセグロカモメは、人の行動をよく見ていました。人に見つめられると近づくのが遅くなり、人が手に取ったほうのお菓子を選びました。人が青い袋から食べると、地面の青い袋をつつきました。

ただし、人の食べ物に手を出すのは、一部の大胆なカモメです。人が食べているとき、大人のカモメは1分間に中央値で約6回、人のほうへ首を向けていました。人が何もしないときの約2倍です。

RESEARCH FILE

研究カルテ

イギリス(ブライトン)

研究チーム
イギリスのサセックス大学のフランツィスカ・ハッカー、キーラ・スミス、ポール・グラハム
調べた場所
イギリス南部の海辺の町ブライトンの海岸通り(約8.7km)
調べた動物
野生のセグロカモメ(学名 Larus argentatus)のべ183羽
調べ方
青と緑のポテトチップスの袋を地面に置き、少し離れた人が青か緑の袋から食べるか、何もせず座るかで比べた
分かったこと
人が食べるとつつくカモメが増え、つついた22回中21回は人の袋と同じ色の袋だった
まだ分からないこと
若いカモメはなぜあまりつつかないのか。どのように人を読むことを覚えるのか
論文
Biology Letters(2023年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Gulls Watch What We Eat

Many gulls live in towns by the sea in the UK. Some of them take food from people. Scientists wanted to know if gulls watch people.

In one test, a person put a blue bag and a green bag of chips on the ground. Then the person sat down and ate from a blue or green bag. Gulls pecked the bags 22 times. In 21 of them, the bag was the same color as the person's bag.

In another test, a person picked up one of two snacks for 20 seconds. Most of the gulls that pecked chose the snack the person had touched. Gulls were also slower to come near food when a person looked at them.

But only some gulls are brave enough to come close. Adult gulls pecked the bags more often than young gulls. These gulls seem to learn from watching people.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. What colors were the bags on the ground?地面に置かれた袋は何色でしたか。

Q2. What happened when a person looked at the gulls?人がカモメを見つめると、どうなりましたか。

Q3. Which gulls pecked the bags more often?どのカモメのほうが、よく袋をつつきましたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Hacker, F., Smith, K. & Graham, P. (2023) Inter-species stimulus enhancement: herring gulls (Larus argentatus) mimic human food choice during foraging. Biology Letters 論文確認済みdoi:10.1098/rsbl.2023.0035
  2. 2Goumas, M., Boogert, N. J. & Kelley, L. A. (2020) Urban herring gulls use human behavioural cues to locate food. Royal Society Open Science 論文確認済みdoi:10.1098/rsos.191959
  3. 3Goumas, M., Burns, I., Kelley, L. A. & Boogert, N. J. (2019) Herring gulls respond to human gaze direction. Biology Letters 論文確認済みdoi:10.1098/rsbl.2019.0405

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

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