シーラカンスの寿命は約100年らしい。うろこに見落とされていた細い年輪があった

シーラカンスのうろこを特殊な光で見ると、細い年輪が現れた。数えると最高84歳。寿命は約100年、おなかの中で子が育つ期間は5年ほどと推定された。

No.047 8分で読めるえっ度 論文 2021年
深い海の暗い岩場のそばで、青い体に白い斑点のあるシーラカンスが、太い肉質のひれをゆっくり動かして漂っている。体をおおう大きなうろこが見える。

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  1. シーラカンスのうろこを特殊な光で見ると、細い年輪がたくさん見えた
  2. 数えると最高84歳。寿命は約100年と推定された
  3. 子どもは、母親のおなかの中で5年ほど育つらしい

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シーラカンスって100年くらい生きるかもしれないんだって。うろこに細い年輪があって、昔の研究は5年に1本くらいの太い線を数えてたらしい。大人になるのも40〜60代だって。

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シーラカンスの寿命は20年ほどだと分かっている

シーラカンスは、大昔に栄えたなかまのほとんどが絶滅したあとも、今まで生き残っている魚です。生きた個体が初めて見つかったのは1938年のことでした。それから80年以上たっても、この魚が何年生きるのかは、はっきりしていませんでした。

2021年、フランスの研究チームが、博物館に保管されていたシーラカンス27匹のうろこを調べ直しました。特殊な光で見ると、それまで見えていなかった細い線が現れました。この線を年輪として数えると、最も年をとった個体は84歳でした。寿命は約100年と推定されます。

それまでの研究では、寿命は20年ほどとされていました。5倍もの差が出たのは、昔の研究者が数えていた線が、実は1年に1本ではなかったからです。

01昔の研究で数えると、シーラカンスはマグロ並みに速く育つことになっていた

魚の年齢は、うろこなどの硬い部分にできる線で調べます。成長の速い時期と遅い時期がくり返すと、その跡が線になって残ります。1年に1本できる線なら、木の年輪と同じように数えられます。

シーラカンスの年齢を調べた研究は、それまで2つしかありませんでした。どちらも同じ12匹の標本を使い、うろこの線を数えました。その結果、最高でも20年ほどしか生きない、と考えられてきました。

ところが、この数字には大きな矛盾がありました。20年で2メートル近くまで育つなら、シーラカンスはマグロ並みの速さで大きくなる魚になります。一方で、シーラカンスは体の働き(代謝)がゆっくりな魚です。卵ではなく子どもを産み、産む数も少ないことが分かっています。こうした特徴は、ふつうはゆっくり育って長生きする魚に見られるものです。

02博物館の27匹のうろこを、特殊な光で調べ直した

フランス国立海洋開発研究所(Ifremer)のケリグ・マエ(Kélig Mahé)さんたちは、この矛盾を確かめることにしました。使ったのは、パリの国立自然史博物館などに保管されていた27匹の標本です。いずれもアフリカ東岸に近いコモロ諸島の沖で、1953年から1991年の間にとれたものでした。

27匹の内訳は、メス13匹、オス11匹、若い個体1匹、母親のおなかにいた子ども2匹です。体の長さは30.5センチから180センチまでありました。研究チームは1匹につき2〜5枚のうろこを、第1背びれの根もとから取りました。

まず、昔の研究と同じように、ふつうの光でうろこを見ました。はっきり見える太い線を数えると、年齢は1〜17歳になりました。これでは、昔の研究と同じ「速く育つ魚」という答えになってしまいます。

そこで研究チームは、偏光顕微鏡を使いました。ふるえる向きをそろえた光を当てて、ふつうの光では見えにくい細かいつくりを浮かび上がらせる顕微鏡です。すると、太い線の間に、もっと細い線がたくさん並んでいるのが見えました。この細い線を数えると、年齢は5歳から84歳になりました。太い線は、細い線のおよそ5本ごとに1本現れていました。

顕微鏡で大きく写したシーラカンスのうろこ1枚。中心から外側へ向かって、細い同心円の線が何十本も並び、その間に少し太い線がところどころ入っている。

03細い線が「1年に1本」だと、どうやって確かめたのか

線を数えるだけでは、それが年輪だとは言えません。1年に1本なのか、半年に1本なのかが分からないからです。

一番確かな方法は、年齢の分かっている魚で確かめることです。たとえば、薬でうろこに目印をつけてから海に放し、何年かあとにつかまえて、目印の外側に線が何本増えたかを見ます。しかし、シーラカンスは絶滅のおそれが極めて高い魚です。このような方法は、保護と倫理の面から使えませんでした。

そこで研究チームは、うろこの一番外側に注目しました。線が1年に1本できるなら、一番外側の線から、うろこのふちまでの幅は、季節によって規則正しく変わるはずです。この幅を、魚がとれた月ごとに並べて比べました。

すると、細い線では12か月周期の変化がはっきり見つかりました。一方、昔の研究が数えた太い線では、そのような変化は見つかりませんでした。研究チームは、細い線が1年に1本できる年輪だと考えました。

04シーラカンスが大人になるのは40〜60代、子はおなかの中で5年育つ

新しい年齢の数え方で、シーラカンスの一生を見直すと、さらに大きな変化がありました。

まず、成長の速さです。細い線で数えた年齢と体の長さから、成長の曲線を描きました。すると、180センチの最大の個体は成長がゆっくりになった段階にあり、最大の大きさの88%に達していました。曲線から計算した最大の体の長さは約204センチです。これまでにとれた最大の個体(190センチ)とよく合いました。研究チームは、世界の海の魚1313種のデータとも比べました。シーラカンスは、同じくらいの大きさの魚の中で最も成長の遅いなかまに入り、深海のサメに近いことが分かりました。

次に、大人になる年齢です。オスは体の長さ120〜129センチ、メスは160〜179センチで大人になることが、以前の研究で分かっていました。これを新しい年齢に当てはめると、オスは40〜69歳、メスは58〜66歳になります。

最後に、おなかの中で子どもが育つ期間です。標本には、母親のおなかにいた子どもが2匹ありました。どちらのうろこにも細い線が5本あり、5歳と推定されました。すでに生まれたあとにとれた、いちばん小さな2匹は、9歳と12歳でした。昔は1〜2年と考えられていた期間が、少なくとも5年になります。研究チームは、脊椎動物の中で最も長い部類だと述べています。

05まだ「確定」ではない。年齢の分かる個体で確かめた人はいない

この研究は、寿命の推定を大きく変えました。ただし、限界もあります。

一つ目は、年輪の確かめ方です。研究チームが使ったのは、うろこのふちの幅を月ごとに比べる「間接的な」方法でした。年齢の分かっている個体で直接確かめたわけではありません。研究チーム自身も、議論の余地なく確かめるには直接の方法が必要だと書いています。

二つ目は、標本の状態です。パリの標本は、とれたときからホルマリンにつけられていました。長い年月の間に液が酸性になり、一部のうろこは傷んで、線が読めませんでした。母親のおなかにいた子どもは2匹だけで、5年という推定もこの2匹にもとづいています。

三つ目は、太い線の正体です。太い線は、どの個体でもおよそ5年ごとに現れていました。もし天候のような海の変化が原因なら、同じ年に全員の線がそろうはずです。しかし、線ができた年は個体ごとにばらばらでした。研究チームは、移動や子育てなど、体の内側のリズムが原因かもしれないと考えています。ただ、シーラカンスの生活はまだよく分かっておらず、確かめられていません。

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もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

海の中の観察からも「100年」という数字が出ていた

実は、うろこの研究より前に、まったく別の方法で長寿を予想した研究がありました。フリッケ(H. Fricke)さんたちの研究チームは、1986年から2009年まで、潜水艇や遠隔操作の機械でコモロ諸島の海にもぐりました。調査は9回に及びます。そして、145匹を1匹ずつ見分けて記録しました。

シーラカンスの多くは、昼間は同じ洞くつで休んでいました。同じ行動範囲を21年も使い続けた個体もいました。グランドコモロ島の大人の数は、300〜400匹ほどと推定されました。観察を続けた区域では、1年に死んだり新しく加わったりする数が平均3〜4匹ほどと見積もられました。数がほとんど入れ替わらないことから、フリッケさんたちは寿命が100年をこえる可能性があると考えました。ただし、これは直接の証拠ではありませんでした。2021年のうろこの研究は、別の方向から同じ答えに近づいたことになります。

なぜ、こんなにゆっくり生きるのか

生き物の一生には、「速い生き方」と「遅い生き方」があります。速い生き方の魚は、すぐ大人になり、たくさんの小さな卵を産みます。多くの子は死にますが、数で補います。遅い生き方の魚は、大人になるのが遅く、少ない子どもを大きく育ててから産みます。

シーラカンスは、はっきり遅い側です。論文によると、子どもが生き残りやすい産み方をする生き物では、大人になるのを遅らせることが有利になりやすい、と考えられています。シーラカンスの子どもは、生まれたときにすでに35センチほどあります。体の働きをおさえ、エネルギーを節約しながら深い海で暮らす生き方とも合っています。

ほかの「超スロー」な生き物との比較

研究チームが、似たような一生を送る魚として挙げたのは、深海にすむサメや、ヒウチダイのなかまです。おなかの中で子どもが育つ期間については、深海にすむサメのラブカの約3年が比べられています。シーラカンスの5年は、それより長い可能性があります。

論文では、洞くつにすむホライモリという小さなサンショウウオのなかまも挙げられています。脊椎動物の中で、最もゆっくりした一生を送る動物の一つです。体の大きさも暮らす場所も違う生き物が、同じように「遅い生き方」をしているのです。

長生きの魚は、守るのが難しい

シーラカンスは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで、絶滅のおそれが極めて高い種とされています。大人になるまで数十年かかり、子どもも少ない動物は、一度数が減ると元に戻るのに長い時間がかかります。研究チームは、今回の結果から、シーラカンスはこれまで考えられていた以上に危うい状態かもしれないと書いています。フリッケさんたちの調査でも、地元の漁がシーラカンスをおびやかしていると指摘されています。

06まとめ

シーラカンスの寿命は、20年ほどと考えられてきました。2021年、博物館の27匹のうろこを偏光顕微鏡で調べ直すと、見落とされていた細い年輪が現れました。数えると最高84歳で、寿命は約100年と推定されます。大人になるのは40〜60代、おなかの中で子どもが育つのは5年ほどです。

ただし、年齢の分かった個体で確かめたわけではなく、まだ推定の段階です。それでも、20年と100年の差を生んだのは、新しくとれた魚ではなく、何十年も博物館に眠っていた標本のうろこでした。

RESEARCH FILE

研究カルテ

コモロ諸島(標本がとれた海)

研究チーム
フランス国立海洋開発研究所とパリの国立自然史博物館などのチーム(第一著者ケリグ・マエ)
調べた場所
パリとミュンヘンの博物館の標本(コモロ諸島の沖でとれたもの)
調べた動物
アフリカのシーラカンス(学名 Latimeria chalumnae)の標本27匹
調べ方
うろこを偏光顕微鏡で観察して細い線を数え、線が1年に1本できるかを統計で確かめた
分かったこと
年齢は5〜84歳。寿命は約100年、大人になるのは40〜69歳ごろと推定された
まだ分からないこと
年齢の分かった生きた個体で確かめた人はいない。5年ごとに出る太い線の理由
論文
Current Biology(2021年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Coelacanths May Live for About 100 Years

The coelacanth is a large fish that lives in the deep sea. For many years, scientists thought it lived for about 20 years.

In 2021, a team in France looked again at the scales of 27 coelacanths. The fish were kept in museums. The team used a special kind of light. Under this light, they saw many thin lines on each scale. One thin line seems to grow every year, like a tree ring.

The oldest fish was 84 years old. So the team thinks coelacanths can live for about 100 years. They may become adults at age 40 or later. A baby may stay inside its mother for about five years.

Nobody has checked these ages with a living fish yet. But the study shows that coelacanths live very slowly. The team says this slow fish may be in more danger than we thought.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How long did scientists think coelacanths lived before 2021?2021年より前、科学者たちはシーラカンスの寿命をどのくらいだと考えていましたか。

Q2. What did the team look at?チームは何を調べましたか。

Q3. How old was the oldest fish?一番年をとった魚は何歳でしたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Mahé, K. et al. (2021) New scale analyses reveal centenarian African coelacanths. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2021.05.054
  2. 2Ifremer Archimer(同論文の著者版)archimer.ifremer.fr/doc/00700/81175/
  3. 3Fricke, H. et al. (2011) The population biology of the living coelacanth studied over 21 years. Marine Biology 論文確認済みdoi:10.1007/s00227-011-1667-x

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい