ボノボはよその群れとも助け合い、相手には協力的なボノボを選んでいた。野生31頭を2年観察

コンゴの野生のボノボ31頭を2年見続けると、よその群れの相手とも毛づくろいや食べ物の分け合いをしていた。相手はだれでもよいわけではなかった。

No.151 8分で読めるえっ度 論文 2025年
熱帯の森の木の上で、黒い顔のボノボ2頭が向かい合い、片方がもう片方の肩の毛を指でかき分けて毛づくろいしている。少し離れた枝から、別のボノボたちがその様子を見ている。

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  1. ボノボは、よその群れの相手とも毛づくろいや食べ物の分け合いをする
  2. 協力的なボノボは、よその群れの協力的なボノボと組んでいた
  3. 一方で、群れをこえて組んで、オスを攻撃することもある

人に話すなら

ボノボって、よその群れのボノボとも毛づくろいしたり、食べ物を分けたりするんだって。しかも、自分の群れでよく協力するボノボほど、よその群れの協力的なボノボと組んでたらしいよ。

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読む前に予想しよう

野生のボノボは、よその群れのボノボとは毛づくろいをしない

チンパンジーの群れは、となりの群れとよく争います。出会えばけんかになり、ときには相手を殺してしまうこともあります。チンパンジーは、人間にもっとも近い動物の1つです。

ところが、同じくらい人間に近いボノボは、ようすが違います。アメリカのハーバード大学などのチームは、アフリカのコンゴ民主共和国で野生のボノボを調べました。2つの群れの大人31頭を、2年間見続けたのです。すると、ボノボはよその群れの相手とも、毛づくろいをしたり、食べ物を分けたりしていました。

しかも、相手はだれでもよいわけではありませんでした。自分の群れでよく協力するボノボは、よその群れの中でも協力的なボノボと組んでいたのです。家族や自分の群れをこえて協力することは、人間の社会を支える大きな特徴です。その協力がどう進化してきたのかは、よく分かっていませんでした。

01チンパンジーとボノボでは、よその群れへの態度が大きく違う

チンパンジーは、自分たちのなわばりを強く守る動物です。違う群れの個体どうしが出会うと、ほとんどの場合は争いになり、殺し合いに発展することもあります。そのため、群れをこえた協力は生まれにくいと考えられています。

ボノボは、チンパンジーとよく似た姿の類人猿で、アフリカのコンゴ民主共和国だけにすんでいます。長く調査が続いているどの地域でも、ボノボが仲間と組んでほかのボノボを殺したという記録はありません。群れどうしが出会っても、けがをするほどの争いになることはまれです。

これまでにも、違う群れのボノボが毛づくろいをしたり、食べ物を分けたりする姿は報告されていました。2018年には、別の地域で、2つの群れのボノボが肉を分け合った例も初めて報告されています。けれども、そうした協力に決まりがあるのかどうかは、よく分かっていませんでした。

02まず「本当に別の群れなのか」を確かめた

ボノボの群れどうしは、出会うと何時間も一緒に過ごします。長いときには2週間にもなります。そのため、ある疑いがありました。別の群れに見えても、本当は1つの大きな群れの中の小さなグループではないか、というものです。もし同じ群れなら、助け合うのは当たり前です。

研究したのは、ハーバード大学のリラン・サムニ(Liran Samuni)さんたちです。チームの中心は、マーティン・スルベック(Martin Surbeck)さんです。チームはまずこの点を調べ、2022年に発表しました。調べたのは、コンゴ民主共和国のココロポリ・ボノボ保護区にすむ、10歳をこえるボノボ59頭です。2017年から2019年まで、30分ごとに、だれとだれが一緒にいるかを記録しました。

その結果、ボノボは4つの群れにはっきり分かれていて、その分かれ方は3年間ほとんど変わりませんでした。そのうちエカラカラとココアロンゴという2つの群れは、調査した日の約35%を一緒に過ごしていました。それでも、それぞれの群れは自分の群れの仲間とより強く結びつき、自分たちの行動範囲を持っていました。

チームは、ウガンダにある、とても大きなチンパンジーの群れとも比べました。チンパンジーの群れの中の小さなグループは、ボノボの群れほどはっきり分かれていませんでした。ボノボの群れは、やはり別々の群れだと分かったのです。

032つの群れの31頭を、2年間毎日追いかけた

この2つの群れで、チームは2023年に次の研究を発表しました。スルベックさんは2016年にこの調査地を作り、地元の村の人たちと一緒にデータを集めてきました。ボノボが人の存在に慣れていることが、調査を成り立たせるカギだったとスルベックさんは話しています。

チームと地元の追跡係は、エカラカラとココアロンゴの大人のボノボ31頭を、毎日追いかけました。そして、群れの中と群れどうしのやりとりを記録しました。注目したのは、3つの協力です。毛づくろい、食べ物の分け合い、そして、2頭以上が一緒になって相手に向かっていく行動です。

一緒に相手に向かう行動は、研究の言葉で「連合」と呼ばれます。だれかとけんかになったとき、ほかの個体が加勢して、一緒に相手を追いはらうような行動です。

森の中の小さな広場で、2つの群れのボノボたちが入りまじって座り、果物を手から手へ渡している。毛づくろいをしている2頭もいる。

04協力的なボノボは、よその群れの協力的なボノボと組んでいた

記録を分析すると、3つの協力はどれも、群れの境をこえて起きていました。ただし、よその群れのだれとでも協力していたわけではありません。群れの間をつなぐ役になっていたのは、一部の決まったボノボでした。

自分の群れの中で協力的なボノボほど、よその群れの相手とも協力の関係を結んでいました。そして、その相手は、よその群れの中でも協力的なボノボでした。毛づくろいなら毛づくろいで、食べ物なら食べ物で、それぞれよく協力する者どうしが組んでいたのです。

「誰にでも同じように親切なわけではない」と、サムニさんは大学の発表で話しています。大学の発表は、ボノボがお返しをしてくれそうな相手と組んでいたと説明しています。人間でも、協力的な人どうしが集まることで、群れをこえた協力が支えられていると考えられています。

チームは、血のつながらない、よその群れの相手と、すぐに見返りがなくても協力するのは、人間だけではないと結論しました。 さらに、そうした協力は、人間のような社会のルールや文化がなくても生まれうる、と書いています。

05見知らぬボノボのためにも、えさを落としてやった

ボノボのよそ者への態度は、実験でも調べられています。2017年、アメリカのデューク大学のジンジー・タン(Jingzhi Tan)さんたちが実験をしました。場所は、コンゴ民主共和国の首都キンシャサにあるボノボの保護施設です。施設のボノボの多くは、親を失ったみなしごです。

天井からロープでリンゴをつるし、木のピンで止めておきます。ピンを抜くとリンゴが落ちて、下の通路にいるボノボが食べられます。ピンを抜けるのは、となりの部屋にいるボノボだけです。そのボノボは、リンゴを食べられません。通路にいるのは、同じ囲いで暮らしたことのない、別の群れのボノボでした。

ピンを抜くには、部屋の反対側でおもちゃで遊ぶのをやめて、2mの高さまでのぼり、片腕でぶら下がる必要がありました。それでも16頭のボノボは、相手がリンゴの下に行ける場面で、行けない場面より多くピンを抜きました。ピンを抜いた割合は、行ける場面で約28%、行けない場面で約6%でした。相手が手をのばしてねだれないようにしても、結果は変わりませんでした。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

なぜ、よそ者に親切にするのか

タンさんたちは、「第一印象仮説」という考えを紹介しています。新しい相手と仲よくなる得が、争う損より大きければ、よそ者への親切が進化しうる、という考えです。

ボノボでは、メスどうしの強い結びつきや、乱暴なオスが好まれないことで、群れどうしの命がけの争いがなくなったのかもしれません。そうなると、よそ者は危険な敵ではなく、将来の仲間候補になります。ボノボのメスは、大人になる前に生まれた群れを出て、別の群れに移ります。移ってきたメスが、新しい群れで仲間と組み、高い地位を得ることもあります。

「平和なボノボ」だけではない

群れをこえた協力が、いつも穏やかなものとは限りません。2025年、同じ研究グループは、2016〜2021年に記録した、2つの群れのボノボが組んだ連合63回を報告しました。そのうち51回はメスどうしの連合でした。そして、連合が向かった相手の約8割はオスでした。群れをこえたメスどうしの協力には、オスに対抗する面もあるのです。

2024年には、ボノボのオスどうしの攻撃が、チンパンジーのオスどうしより多いという研究も出ました。ココロポリのボノボ3群れと、タンザニアのチンパンジー2群れを比べた結果です。ただし、ボノボのオスが相手を殺した記録はありません。論文は、攻撃の回数の多さと激しさは別のものだとしています。

この研究の弱点

2023年の研究は、1つの保護区の2つの群れ、31頭を調べたものです。2022年の論文によると、群れどうしが長く穏やかに一緒に過ごすのは、ボノボのすべての地域で見られるわけではありません。ほかの2つの調査地では、そうした出会いはまれだとされています。ボノボ全体に同じことが言えるかは、まだ分かりません。

また、2025年の研究では、仲間との結びつきに関わるとされるホルモン「オキシトシン」も調べました。ところが、よその群れと一緒にいるときに、尿の中のオキシトシンが増えることはありませんでした。ボノボがよその群れと協力するしくみは、まだよく分かっていません。

06まとめ

コンゴ民主共和国の野生のボノボ31頭を2年見続けると、よその群れの相手とも、毛づくろいや食べ物の分け合い、一緒に相手に向かう協力をしていました。協力的なボノボは、よその群れの協力的なボノボと組んでいました。

ただし、群れをこえた協力には、メスどうしが組んでオスに向かうものも多くありました。調べたのは1つの地域の2つの群れだけで、ほかの地域でも同じかはまだ分かりません。

保護施設の実験では、ボノボは一緒に暮らしたことのない別の群れのボノボのために、2mの高さまでのぼってピンを抜き、リンゴを落としてやりました。

RESEARCH FILE

研究カルテ

コンゴ民主共和国・ココロポリ

研究チーム
アメリカのハーバード大学などのチーム(第一著者リラン・サムニ、責任著者マーティン・スルベック)
調べた場所
コンゴ民主共和国のココロポリ・ボノボ保護区
調べた動物
野生のボノボ(学名 Pan paniscus)、2つの群れの大人31頭
調べ方
2年間、毎日ボノボを追い、毛づくろい・食べ物の分け合い・一緒に相手に向かう行動を記録した
分かったこと
群れの中でよく協力するボノボは、よその群れの協力的なボノボと協力の関係を結んでいた
まだ分からないこと
ほかの地域のボノボでも同じか。群れどうしが長く一緒に過ごすのは一部の地域だけ
論文
Science(2023年)
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英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Bonobos Make Friends Across Groups

Chimpanzees often fight with chimpanzees from other groups. Bonobos are close to chimpanzees, but they act in a different way.

Scientists watched 31 adult bonobos from two groups in Congo for two years. The bonobos cleaned the fur of bonobos from the other group. They also shared food with them.

But they did not help everyone in the same way. Bonobos that helped their own group a lot made friends with helpful bonobos in the other group. The scientists say this kind of help is not only a human thing.

Bonobos are not always peaceful. Females from the two groups sometimes worked together against males. Still, at long-term study sites, no one has seen a group of bonobos kill another bonobo. In another test, bonobos dropped apples for bonobos from another group.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How long did the scientists watch the bonobos?研究者たちは、どれくらいの期間ボノボを観察しましたか。

Q2. Who did helpful bonobos make friends with in the other group?協力的なボノボは、もう一つの群れのだれと仲よくなりましたか。

Q3. What did females from the two groups sometimes do together?2つの群れのメスは、ときどき一緒に何をしましたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Samuni, L. & Surbeck, M. (2023) Cooperation across social borders in bonobos. Science 論文確認済みdoi:10.1126/science.adg0844
  2. 2Harvard Gazette(2023)ハーバード大学の発表news.harvard.edu/gazette/story/2023/11/bonobos-offer-insight
  3. 3Samuni, L., Langergraber, K. E. & Surbeck, M. H. (2022) Characterization of Pan social systems reveals in-group/out-group distinction and out-group tolerance in bonobos. PNAS 論文確認済みdoi:10.1073/pnas.2201122119
  4. 4Tan, J., Ariely, D. & Hare, B. (2017) Bonobos respond prosocially toward members of other groups. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-017-15320-w
  5. 5Cheng, L. et al. (2025) Oxytocin activity is not linked to out-group prosociality in wild bonobos. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-025-00209-w
  6. 6Mouginot, M. et al. (2024) Differences in expression of male aggression between wild bonobos and chimpanzees. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2024.02.071

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい