子育て中のヒゲペンギンは、4秒ほどの居眠りを1日1万回以上くり返していた

南極で卵を温めるヒゲペンギンは、平均4秒ほどの居眠りを1日1万回以上くり返していた。合計すると、脳の左右それぞれが11時間以上眠っていた。

No.196 7分で読めるえっ度 論文 2023年
南極の小石を積んだ巣の上で、ヒゲペンギンが卵を抱いてふせている。頭の上は黒く顔は白く、あごの下に耳から耳へ細い黒い線が通っている。片方の目だけを閉じ、もう片方の目は開いている。

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  1. ヒゲペンギンは、平均4秒ほどの短い眠りを1日1万回以上くり返した
  2. 合計すると、脳の左右それぞれが1日11時間以上眠っていた
  3. 細切れの眠りでも、ペンギンは子育てを続けられていた

人に話すなら

子育て中のペンギンって、4秒くらいの居眠りを1日に1万回以上もしてるんだって。細切れでも、脳の左右それぞれが合計11時間以上眠っていて、ちゃんと子育てもできていたらしいよ。

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子育て中のヒゲペンギンは、1回に数時間まとめて眠る

車を運転している人が、ほんの数秒だけ、こくりと眠ってしまう。目が閉じ、脳も眠ったときの状態になる。これを「マイクロスリープ(瞬間的な居眠り)」と呼びます。人の場合、運転中のマイクロスリープは事故につながる危ないものです。そもそも数秒だけの眠りで、体や脳が休まるのかどうかも分かっていませんでした。

2023年、フランス、韓国、ドイツの研究チームが、この「数秒の眠り」で1日の睡眠のほとんどをまかなう動物を見つけました。南極で子育てをしているヒゲペンギンです。ペンギンたちは、1回平均4秒ほどの居眠りを、1日に1万回以上くり返していました。合計すると、脳の左右それぞれが1日11時間以上眠っていたのです。

ペンギンは、なぜこんな眠り方をするのでしょうか。チームは、子育て中の親にはゆっくり眠れない事情があるからだと考えています。巣のまわりには卵をねらう鳥が来ます。となりの巣のペンギンともめごとも起きます。チームは、そんな中で親がどのように眠っているのかを、野生のペンギンの脳波を測って調べました。

01卵を温める親は、いつも見張っていなければならない

ヒゲペンギンは、たくさん集まって巣を作るペンギンです。研究の舞台は、南極のキングジョージ島にある繁殖地です。

ヒゲペンギンの親は、2羽で交代しながら卵を温めます。1羽が海へえさを取りに行っているあいだ、もう1羽は巣を離れられません。巣のまわりには、卵をねらう大きな鳥がいます。トウゾクカモメのなかまの「ブラウンスクア」です。スクアは、繁殖地のはしにある巣の卵をねらいます。

親を困らせるのは、スクアだけではありません。巣をねらって入りこんでくるほかのペンギンとも、争わなければなりません。巣を守りながら、どうやって眠るのか。研究チームが知りたかったのは、そこでした。

鳥の中には、危ないときに脳を半分ずつ眠らせるものがいます。たとえばマガモは、仲間にはさまれた安全な場所では、両目を閉じて脳全体で眠ります。ところが群れのはしにいると、片目を開けたまま、脳の半分だけで眠ります。そのため研究チームは、ペンギンもはしの巣ほど眠りが少なくなり、脳の半分だけで眠ることが増えるだろうと予想していました。

02脳波を測る装置を野生のペンギンに付けて、11日間記録した

研究を進めたのは、フランスのリヨン神経科学研究センターのポール=アントワーヌ・リブレル(Paul-Antoine Libourel)さんと、韓国極地研究所のイ・ウォニョン(Won Young Lee)さんたちです。ドイツのマックス・プランク生物知能研究所で鳥の眠りを研究するニールス・ラッテンボルク(Niels Rattenborg)さんも加わりました。

チームは、脳波(脳の電気の信号)を記録する特別な装置を作りました。この装置を、卵を温めているヒゲペンギンの背中に付けました。著者が公開している投稿時の原稿によると、記録したのは2019年12月の初めで、調べたのは13羽です。

装置は、左右の脳の脳波を別々に記録しました。首の筋肉の動き、体の傾きや動き、GPSによる位置、もぐった深さも記録しました。記録は陸の上と海の両方で、11日間続きました。一部の巣では、ビデオでペンギンの様子も撮影しました。

鳥の眠りの中心は、脳波がゆっくり大きく波打つ眠りです。この眠りは、脳の左右で同時に起きることも、片方だけで起きることもあります。チームは脳波の形から、ペンギンが脳の両方で眠っているのか、片方だけで眠っているのかを見分けました。

031回の眠りは平均4秒ほど、それを1日1万回以上くり返していた

記録を見ると、ペンギンの眠りはとても短く切れていました。脳の両方で眠るときも、片方だけで眠るときも、続くのはほんの数秒でした。1回の眠りは平均4秒ほどです。脳の両方の眠りと片方だけの眠りが続けて起きたとき、それをまとめて1回と数えても、ほとんどは5秒未満でした。1時間に500回以上も眠りに落ちていました。こくりと眠っては目を覚ます。それを、昼も夜もくり返していたのです。

ビデオを見ると、ペンギンは目を開けたり閉じたりしていました。片方の脳が眠ると、反対側の目が閉じました。マックス・プランク協会の発表は、細切れの眠りが、片目や両目の開け閉めのくり返しとして外から見えると説明しています。

それでも、合計すると眠りの量は大きくなりました。1日に1万回以上の居眠りを足し合わせると、脳の左右それぞれが1日11時間以上眠っていたのです。マックス・プランク協会の発表では、11.5〜12時間とされています。眠りは、昼も夜も、1日24時間にほぼ同じように散らばっていました。

たくさんのヒゲペンギンが並んで巣を作っている集団のはしで、1羽が卵を抱いている。集団の外側の空を、大きな茶色の海鳥が低く飛んでいる。

04予想とは逆に、スクアに近いはしの巣のほうがよく眠れていた

チームは、繁殖地のはしにある巣と、まん中にある巣の親の眠りを比べました。はしの巣は、スクアにねらわれやすい場所です。マガモと同じなら、はしのペンギンは眠りが少なく、脳の半分だけで眠ることが多いはずです。

結果は、予想と逆でした。はしの巣の親のほうが、眠りの量が10%多かったのです。1回の眠りの長さも、40%(1秒)長くなっていました。脳の半分だけで眠る割合も、はしとまん中で違いませんでした。

チームは、まん中の巣では、ほかのペンギンのじゃまや争い、さわがしさの影響が大きいと考えています。つまり、ペンギンの眠りをいちばん乱していたのは、敵の鳥ではなく、仲間のペンギンだったようです。

05海の上でも眠り、陸に戻ると眠りを取り戻した

チームは、海でえさを取っているときのペンギンも調べました。ペンギンは、深さ200mまでもぐっていました。そして、波にゆられて海に浮かびながら眠ることもありました。海での眠りは陸より少なかったものの、続く時間は長めでした。また、ほとんどが脳の両方で眠る眠りでした。

陸に戻ると、ペンギンは海で足りなかった眠りを一部取り戻しました。ただし、その眠りもやはり、4秒ほどの細切れの眠りでした。

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なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

細切れの眠りでも、脳は休めるのかもしれない

眠りには、脳を休ませて回復させる役目があると考えられています。人では、運転中の居眠りは危険です。数秒の眠りでは短すぎて、眠りの役目は果たせないかもしれないと言われてきました。

ところがヒゲペンギンは、数秒の眠りをくり返しながら、子育てを続けていました。チームはここから、眠りの効果は少しずつ積み重ねられるのかもしれないと考えています。ゆっくりした脳波が1つ出るたびに、脳の神経細胞は一瞬静かになります。この一瞬一瞬が、神経細胞が休む時間になっているのかもしれません。そうであれば、1回の眠りの長さに関係なく、休んだ分が足し合わされていく可能性があります。

ほかのペンギンや鳥との比較

これほど短い眠りを何千回もくり返して眠りをまかなう例は、ペンギンでも初めてです。飼育されているコウテイペンギンにも、起きている状態と眠りが細かく入れかわる時間がありました。ただし、それは全体の14%だけでした。コウテイペンギンは、4分以上続くまとまった眠りもとっていました。小さな部屋で調べたコガタペンギンでも、1回の眠りは平均42秒でした。チームは、こうした違いは調べた場所や状況によると考えています。飼育されて1羽でいるのか、野生の集団で子育てをしているのか、という違いです。

鳥の眠り方は、ほかにもさまざまです。2016年、ラッテンボルクさんたちは、海の上を何日も飛び続けるオオグンカンドリの脳波を記録しました。オオグンカンドリは飛びながら眠っていましたが、その量は1日0.69時間だけでした。陸の上で眠る量の7.4%です。鳥の眠り方は、まわりにどれだけ注意を向ける必要があるかによって、大きく変わるようです。

この研究の弱いところ

ペンギンが子育てを続けられたことは、細切れの眠りでも役に立っている証拠の1つです。けれど、眠りの役目が本当に果たせているかを、直接確かめたわけではありません。たとえば、細切れに眠ったペンギンの体や脳の状態を、まとめて眠ったペンギンと比べたわけではないのです。

また、鳥にはもう1つの眠り「レム睡眠」もあります。ペンギンでもビデオではレム睡眠らしい様子が見られました。しかし、この装置の記録だけでは、レム睡眠と起きている状態を見分けられませんでした。そのため、チームはゆっくりした脳波の眠りに注目して調べています。

06まとめ

南極で卵を温めるヒゲペンギンは、平均4秒ほどの居眠りを、1日に1万回以上くり返していました。細切れでも、合計すると脳の左右それぞれが11時間以上眠っていました。そして予想とは逆に、ペンギンの眠りを乱していたのは、敵の鳥よりも仲間のペンギンだったようです。

数秒の眠りでも、何千回も積み重ねれば役に立つのかもしれません。ペンギンの動画を見る機会があったら、目の開け閉めに注目してください。そのまばたきの中に、何千回もの眠りがかくれているかもしれません。

RESEARCH FILE

研究カルテ

南極・キングジョージ島

研究チーム
フランスのリヨン神経科学研究センター、韓国極地研究所、ドイツのマックス・プランク生物知能研究所などのチーム(第一著者ポール=アントワーヌ・リブレル)
調べた場所
南極・キングジョージ島のヒゲペンギンの集団繁殖地と、そのまわりの海
調べた動物
卵を温めている野生のヒゲペンギン(学名 Pygoscelis antarcticus)
調べ方
脳波などを記録する小さな装置を背中に付け、陸の上と海で11日間記録した
分かったこと
平均4秒ほどの眠りを1日1万回以上くり返し、脳の左右それぞれが1日11時間以上眠った
まだ分からないこと
4秒ほどの細切れの眠りで、眠りの役目が本当に果たせているのか
論文
Science(2023年)
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Penguins Sleep Four Seconds at a Time

Sometimes tired drivers fall asleep for just a few seconds. This is called a microsleep, and it is very dangerous on the road.

Scientists studied chinstrap penguins in Antarctica. The penguins were keeping their eggs warm in their nests. The scientists put small machines on their backs to record their brain waves. They recorded for eleven days, on land and at sea.

Each sleep lasted about four seconds on average. But the penguins fell asleep more than 10,000 times a day. In total, each side of the brain slept for more than 11 hours.

The parents had to watch for birds that steal eggs. Other penguins also came near their nests. Penguins at the edge of the group slept more than penguins in the middle. Even with this short sleep, the parents took care of their eggs. Maybe many tiny sleeps can add up to enough rest.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. Where did the scientists study the penguins?研究者は、どこでペンギンを調べましたか。

Q2. How long did each sleep last?1回の眠りは、どれくらい続きましたか。

Q3. How long did each side of the brain sleep in a day?脳の左右それぞれは、1日にどれくらい眠りましたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Libourel, P.-A. et al. (2023) Nesting chinstrap penguins accrue large quantities of sleep through seconds-long microsleeps. Science 論文確認済みdoi:10.1126/science.adh0771
  2. 2著者による投稿時の原稿(HAL)hal.science/hal-04688042v1/document
  3. 3Max Planck Society(2023)Penguins obtain large quantities of sleep via seconds-long microsleepsmpg.de/21169426/penguins-nesting-in-a-dangerous-environment-
  4. 4Rattenborg, N. C. et al. (2016) Evidence that birds sleep in mid-flight. Nature Communications 論文確認済みdoi:10.1038/ncomms12468

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい