動物の「遊びの声」は65種で記録。イヌもウシもイルカも、人の笑いに通じる声を出していた

動物が遊ぶときに出す声の研究報告を集めると、サル、イヌ、ウシ、イルカ、鳥など少なくとも65種で見つかった。多くは小さく短い、息をはずませるような声だった。

No.134 7分で読めるえっ度 論文 2021年
芝生の上で、2頭の若いイヌが取っ組み合って遊んでいる。上のイヌは口を大きく開け、舌を出して、息をはずませている。下のイヌはあお向けで前足を上げている。

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  1. 遊びの最中に出す声は、少なくとも65種で記録されていた
  2. 多くは、小さく短く、くり返す、息のような声だった
  3. 人の笑いも、遊びのときの荒い息から生まれたのかもしれない

人に話すなら

動物が遊ぶときの声を調べた研究を集めたら、サルやイヌ、ウシ、イルカ、鳥など、少なくとも65種で見つかったんだって。ハッハッって息みたいな声が多くて、人の笑い声もそこから生まれたかもしれないらしいよ。

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読む前に予想しよう

遊びの声の多くは、遠くまで届く大きな声だった

子犬どうしが取っ組み合って遊ぶと、ハッハッと息をはずませます。かみつくふりをしたり、上になったり下になったり。あの息の音は、ただの息切れなのでしょうか。

アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校の2人の研究者が、これまでに発表された動物の研究報告を集めて調べました。すると、遊びの最中に出す声は、少なくとも65種の動物で記録されていました。サルのなかま、ネズミ、イヌ、ウシ、イルカ、そして鳥が3種です。

多くは小さく、短く、くり返す声でした。息をはずませるような音だと書かれたものもたくさんありました。2人は、人の笑い声も、遊びのときの荒い息から生まれたのではないかと考えています。

01遊びがけんかにならないよう、動物は合図を出し合っている

動物の遊びで一番よく見られるのは、取っ組み合いや追いかけっこです。かむ、押さえこむ、追いかける。動きだけを見ると、本物のけんかとよく似ています。

そこで動物は、「これは遊びだよ」という合図を出し合います。よく知られているのは目で見る合図です。サルのなかまの「プレイフェイス」と呼ばれる遊びの表情や、イヌが前足を伸ばしてお尻を上げる「プレイバウ」です。

声の合図は、あまり調べられてきませんでした。研究報告の中で、ひとこと触れられているだけのことがほとんどです。昔は「動物の遊びは静かなものだ」という考えも広く受け入れられていました。

それでも、遊びの声に気づいた人は昔からいました。進化論で知られるチャールズ・ダーウィンは、1872年の本に書いています。類人猿は、わきの下をくすぐられると、人の笑いにあたるくり返しの声を出す、と。

02研究報告を集めると、65種で遊びの声が見つかった

調べたのは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の2人です。人類学の大学院生サーシャ・ウィンクラー(Sasha Winkler)さんと、コミュニケーション学の教授グレッグ・ブライアント(Greg Bryant)さんです。2021年に論文を発表しました。

2人は、動物の遊びの声を書いた研究報告を、できるかぎり探し出しました。そして見つかった種ごとに、声の特徴を表にまとめました。

  • 大きい声か、小さい声か
  • ザーッという雑音のような声か、澄んだ音か
  • 高い声か、低い声か
  • 短い声か、長い声か
  • 1回だけか、リズムをつけてくり返すか

その声が遊びのときだけに出るのか、ほかの場面でも出るのか。これも、分かる範囲で書きこみました。

見つかったのは65種で、人も入っています。半分以上はサルのなかまでした。よく調べられているサルの多くで、遊びの声が報告されていました。ほかには、ネズミのなかま、イヌやキツネ、アナグマ、マングース、ネコのなかまが入っていました。海のアシカやアザラシ、イルカやシャチ、それにウシ、アフリカゾウ、カンガルーもいます。

鳥は3種だけでした。ミヤマオウム、セキセイインコ、カササギフエガラスです。

03遊びの声の多くは、小さく、短く、くり返す声だった

声の形は、種によってさまざまでした。ネコのなかまの静かな「シャーッ」という声。イヌやアシカのほえ声。高い「ピーッ」という声、低いうなり声、ガチャガチャした声。ネズミのなかまでは、人には聞こえない超音波の声もありました。

それでも、全体には共通点がありました。一番多かったのは、小さな声で、短い音をいくつか続けて出すものでした。

サルのなかまの中でも、グループによって違いがありました。同じアジアやアフリカのサルでも、ヒヒやマカクのなかまの遊びの声は、静かで雑音のようで、リズムがあります。一方、リーフモンキーのなかまでは、高く澄んだ「ピーピー」という声でした。中南米のサルも、高い声が多く報告されていました。類人猿の遊びの声は、ハアハアという息の音や、くっくっという含み笑いのように書かれていました。

遊びの声が小さいのはなぜか。肉食動物などに見つからないため、というのが一般的な考えです。遊ぶのは子どもが多く、遊びに夢中だとまわりへの注意もおろそかになります。目の前の相手にだけ聞こえれば十分なのです。

大きな声を出す種は少数です。リスザルの高い声、イヌやアザラシ、アシカのほえ声、ゾウの遊びのラッパのような声、ミヤマオウムのさえずり、そして人の笑い声です。こうした種の多くは体が大きく、ほかの動物に食べられる心配が少ないと、2人は書いています。

林の中の地面で、2頭の子どものチンパンジーが取っ組み合っている。片方がもう片方のわきの下に手を入れ、くすぐられた方は口を開けて顔をくしゃくしゃにしている。

04遊びの声は、遊びがけんかにならないよう役立っているらしい

遊びの声に役目があることを示す実験もあります。ラットで、声を出せないようにする実験が行われました。若いラットどうしでは、2匹とも声を出せるときのほうが、片方しか出せないときよりよく遊びました。大人のラットでは、2匹とも声を出せるときのほうが、遊びが本気のかみつきに変わりにくくなりました。

チンパンジーでは、遊びの最中に、相手の笑い声に笑い声で応えることが分かっています。こうした声が出るほど、遊びは長く続いていました。イヌのうなり声も、くわしく調べると、遊びのときのうなり声と、本当に怒ったときのうなり声で、音の特徴が違っていました。

05人の笑い声は、遊びのときの荒い息から生まれたのかもしれない

表の中の声の多くは、「ハアハア」「息をはずませる」といった言葉で書かれていました。特にサルのなかまと肉食動物で目立ちます。声が入る種も、入らない種もあります。

2人が支持するのは、次のような考えです。取っ組み合いは激しい運動なので、息が荒くなります。その荒い息の音が、「本気で遊んでいるよ」という手がかりになりました。それが長い時間の中で、相手を安心させ、遊びを長引かせる合図に変わっていった、という考えです。

人の笑いについては、2009年にイギリスのポーツマス大学などのチームが、くすぐられたときの声を比べました。オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボの子どもと、人の赤ちゃんの声です。声の特徴から作った系統の図は、遺伝子から分かっている系統の図と一致しました。くすぐられたときの笑いは、人と類人猿が共通の祖先から受けついだと考えられています。

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もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

「荒い息が合図になった」説では説明できない声もある

2人は、遊びの声がすべて荒い息から生まれたとは言い切っていません。たとえば中南米のサルの高い「ピーッ」という声は、子どもが母親に居場所を知らせる声から生まれたという説があります。イルカやシャチが遊びで出すクリック音や口笛のような音も、息とは結びつきにくい声です。ミヤマオウムの遊びのさえずりは、ほかの鳥とは別に生まれた可能性が高いとしています。

ラットの遊びの超音波の声も難しい例です。2人は、この声はサルの遊びの声とは別に生まれたものだと考えています。ただ、ラットは人にくすぐられても同じ声を出します。声の形は違っても、その元になる脳のしくみは、共通の祖先から受けついでいるのかもしれません。哺乳類の遊びの声が1つの祖先から来たのか、何度も別々に生まれたのかは、まだ決着していません。

この研究の方法と限界

この研究は、新しく声を録音したものではありません。すでにある研究報告の書き方を集めて比べたものです。多くの報告は、声のことを「おまけ」として短く書いているだけでした。書き方もばらばらです。

例として2人があげるのが、ネコのなかまのマーゲイです。荒っぽい遊びになると低いうなり声を出す、という記録があります。けれどもその声は、遊びの合図ではなく、痛みや怒りの声かもしれません。報告だけでは区別できないのです。

遊びの声の多くは小さいので、記録されていないだけの種もたくさんあるはずだと、2人は書いています。イルカやアザラシのように声をよく使う動物でも、報告は少なめでした。こうした動物の行動を「遊び」と呼ぶのをためらう研究者が多いことも、理由の1つだろうとしています。

人の笑いだけが持つ特徴

人の笑い声は、ほかの動物の遊びの声と比べて大きく、まわりに広く聞こえます。しかも、人の笑い声はうつります。人は、ふつうの会話の中でもよく笑います。話を聞く人より、話している本人のほうが多く笑うことも分かっています。

ブライアントさんたちは以前、いっしょに笑う声を約1秒ずつ聞かせる実験をしました。すると世界各地の人が、笑っているのが友だちどうしか初対面どうしかを聞き分けられました。生後5か月の赤ちゃんも、友だちどうしの笑い声を、仲のよさと結びつけていました。2人は、人の笑いは遊びの合図から始まり、仲間とのつながりを周りに示す合図にも広がったのではないかと考えています。

06まとめ

動物の遊びの声を書いた研究報告を集めると、サルのなかま、ネズミ、イヌ、ウシ、イルカ、鳥など、少なくとも65種で見つかりました。多くは、小さく、短く、くり返す、息をはずませるような声でした。人の笑い声も、取っ組み合いの遊びで荒くなった息から生まれたのかもしれません。今度イヌが遊んでいるのを見かけたら、ハッハッという息の音に耳をすませてみてください。

RESEARCH FILE

研究カルテ

アメリカ カリフォルニア大学ロサンゼルス校

研究チーム
アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校のサーシャ・ウィンクラーさんとグレッグ・ブライアントさん
調べた場所
これまでに発表された動物の行動の研究報告
調べた動物
遊びの声の報告があった65種(哺乳類62種と鳥3種)
調べ方
遊びの最中の声を書いた研究報告を集め、声の大きさ・高さ・長さなどの特徴を比べた
分かったこと
遊びの声は哺乳類に広く見られ、多くは小さく短い、息のような声だった
まだ分からないこと
動物どうしの遊びの声と人の笑いが、同じ祖先の声から来たのか、別々に生まれたのか
論文
Bioacoustics(2021年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Many Animals Make Sounds When They Play

When young dogs play, they often breathe hard. Is this sound only heavy breathing? Two scientists in the United States read many studies about animal play.

They found play sounds in at least 65 kinds of animals. The list has monkeys, rats, dogs, cows, dolphins, and three kinds of birds. Most of the sounds were quiet and short. Many sounded like fast breathing.

Play fighting can look like real fighting. These sounds may tell the other animal, "This is just play." In one study, young rats played more when both rats could make sounds. In another study, adult rats bit less when both could make sounds.

The scientists think human laughter may come from this kind of breathing. But human laughter is loud, and it spreads from person to person. Next time you see dogs playing, listen carefully.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. In how many kinds of animals did the scientists find play sounds?研究者は何種の動物で遊びの声を見つけましたか。

Q2. What were most of the play sounds like?遊びの声の多くは、どんな声でしたか。

Q3. What may play sounds tell the other animal?遊びの声は、相手に何を伝えているのかもしれませんか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Winkler, S. L. & Bryant, G. A. (2021) Play vocalisations and human laughter: a comparative review. Bioacoustics 論文確認済みdoi:10.1080/09524622.2021.1905065
  2. 2UCLA Newsroom(2021)Animals laugh too, UCLA analysis suggestsnewsroom.ucla.edu/releases/animals-laugh-too-ucla-analysis-s
  3. 3Davila Ross, M., Owren, M. J. & Zimmermann, E. (2009) Reconstructing the Evolution of Laughter in Great Apes and Humans. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2009.05.028

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

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