ブタ4頭が鼻でジョイスティックを動かすゲームに挑戦。一番うまいブタは画面の的に76%当てた

鼻でジョイスティックを動かし、画面のカーソルを壁に当てるゲームをブタ4頭に教えた。4頭とも、的が1つの段階で、でたらめより高い割合で当てられた。

No.133 7分で読めるえっ度 論文 2023年
実験室で、ピンク色のブタ(ひづめのある4本の足、平たい鼻先)が台の上に立ち、鼻先で太いレバーの丸いつまみを押している。目の前の画面には、青い枠と白い丸が映っている。

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  1. ブタ4頭に、鼻でジョイスティックを動かすゲームを教えた
  2. 4頭とも、でたらめより高い割合で画面の的に当てられた
  3. ただし、サルやチンパンジーほどうまくはならなかった

人に話すなら

ブタに鼻でジョイスティックを動かすゲームを教えた実験があるんだって。画面の端の壁にカーソルを当てるんだけど、4頭ともでたらめより当てられて、一番うまいブタは4回に3回成功したらしいよ。

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実験のブタは、ごほうびのエサが出ないときはゲームをやめてしまった

ゲームのコントローラーを、手を使わずに動かすことを想像してみてください。ブタには、物をつかめる手がありません。それでも、鼻でジョイスティックを動かし、画面の中のカーソルを目当ての場所へ運べるでしょうか。

アメリカの研究者が、ブタ4頭にそんなゲームを教えました。画面の端に現れる青い壁に、白い丸のカーソルを当てるゲームです。壁は最初は4枚あり、うまくなると1枚に減ります。4頭とも、壁が1枚の一番難しい段階で、でたらめより高い割合で当てられるようになりました。一番うまいブタは、76%の割合で当てました。でたらめに動かしたら25%です。

このゲームは、もともとサルやチンパンジーのために作られたものです。成功するには、スティックを動かすと、離れた画面の中の丸が動くという関係を理解しなければなりません。研究者は、4頭ともこの関係をある程度つかんでいたと考えています。

01サルのために作られた画面のゲームに、ブタが挑んだ

コンピューターの画面を使ったゲームは、動物の頭の働きを調べる道具として使われてきました。アカゲザル、ヒヒ、ゴリラ、チンパンジー、ハトなどです。画面なら、見せる形や場所を自由に変えられ、反応も正確に記録できます。

ジョイスティックで画面のカーソルを動かすゲームには、2つの力が必要です。1つは、スティックを思いどおりに動かす体の器用さ。もう1つは、スティックの動きとカーソルの動きがつながっていて、カーソルが的に当たるとごほうびが出る、と理解する力です。

研究したのは、アメリカのキャンディス・クローニー(Candace Croney)さんと、サラ・ボイセン(Sarah Boysen)さんです。クローニーさんは、論文が出た2021年の時点で、パデュー大学の動物福祉の研究センターを率いていました。実験はクローニーさんがペンシルベニア州立大学にいたころに行われました。パデュー大学の記事によると、何年も前の実験のデータを分析し直し、2021年に論文として発表したものです。

ブタは4頭で、すべて去勢したオスでした。

  • ヨークシャー種のハムレットとオムレット:生後3か月、体重60キロと63キロ
  • パネピントという小型の品種のエボニーとアイボリー:生後24か月、体重43キロと50キロ

02まずは目の検査と、鼻でスティックを押す練習から

実験の前に、目の検査の専門家がブタの目を調べました。すると4頭とも遠視でした。近くの物にピントが合いにくいのです。そこで、画面はブタの目から約45センチ離して置くことにしました。

次は、ジョイスティックの練習です。最初は、ばねの上に車のシフトレバーのつまみをつけた、本物に似せた道具を使いました。世話係が「ジョイスティック」と声をかけ、ブタが鼻でつまみを動かすと、ドッグフードの粒を1つあげます。1日10分ほど、週5日、2週間続けると、ブタは声をかけられるとスティックを動かすようになりました。

その後、本物の装置に移りました。ブタは坂を上って台の上に立ちます。目の前の透明な窓の向こうに、33センチのカラー画面があります。鼻の下には、つまみをつけたジョイスティックがあります。「画面を見て」と声をかけ、画面の方を向いたらごほうび。これができるようになってから、「画面を見て」と「ジョイスティック」を続けて言うようにしました。

03壁を1枚ずつ減らしていく「サイド課題」で練習した

ゲームは「サイド課題」と呼ばれるものです。画面のふちに、青い帯で4枚の壁が表示されます。まん中には、直径2センチの白い丸のカーソルが出ます。ジョイスティックをどちらかに倒すと、カーソルは1秒に8センチの速さで動きます。

カーソルが壁に当たると「ブルップ」という音が鳴り、ドッグフードが1粒出てきます。外にいる実験者も、声をかけたり、体にふれたりしてほめました。

うまくいくと、ゲームは少しずつ難しくなります。壁は4枚から3枚、2枚、1枚へと減ります。1枚になった後は、壁の長さが16センチ、6センチ、2.5センチと短くなっていきます。失敗が続くと、壁の数は増えてやさしくなります。壁がどこに出るかは毎回ばらばらです。

壁が1枚のとき、最初にカーソルを動かした方向が正しいかを記録しました。上下左右の4方向のどれかなので、でたらめに動かしても4回に1回、つまり25%は当たります。

044頭とも、壁が1枚でもでたらめより高く当てた

成績は、最後の50回で比べました。壁が1枚のときに当てた割合は、ハムレットが48%、オムレットが42%、エボニーが34%、アイボリーが76%でした。4頭とも、でたらめの25%を上回りました。ただしエボニーは、統計でぎりぎり「偶然ではない」と言える差でした。

上下左右のどの壁が得意かは、ブタによって違いました。体の大きいヨークシャー種の2頭は、上と下の壁のほうが得意でした。左右の壁に向かうときは、体の向きを画面と平行に変えることがありました。カーソルをいったん上に動かしてから、左右の壁へ下ろす動かし方もよく見られました。

小型のエボニーとアイボリーは、左右の壁のほうが得意でした。エボニーは左が得意で、右の壁は最後の50回で一度も当てられませんでした。アイボリーだけは、上下左右のどの方向でも、でたらめよりはっきり高く当てました。

ヨークシャー種の2頭は、約3か月で実験を終えました。体が大きくなりすぎて、長い時間立っていられなくなり、台にも入りきらなくなったからです。小型の2頭は、15か月間続けることができました。

横から見た実験の場面。ブタが坂を上った台の上に立ち、透明な窓の向こうの画面を見上げている。鼻の下にはレバー、横にはエサが出てくる筒がある。

05エサが出なくても、ほめられるとゲームを続けた

実験中には、機械の故障で、正しく当ててもエサが出ないことがありました。それでもブタたちは、実験者にほめられ、なでられるだけで、正しい答えを続けました。この実験者は、ふだんの世話係でもありました。

ゲームが難しくなり、ブタがやる気をなくしたように見えるときもありました。そんなとき、練習を再開させられたのは、実験者の声かけだけでした。研究者は、練習の中でブタと実験者の間に強い結びつきができたためかもしれないと書いています。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

サルやチンパンジーには、まだかなわなかった

同じサイド課題は、アカゲザルとチンパンジーでも調べられています。その研究では、「動かし方を身につけた」「課題を理解した」と言えるための基準が決められていました。今回のブタは、4頭とも、その基準には届きませんでした。一番うまいブタでも、同じくらい練習したサルやチンパンジーの成績には及びませんでした。

研究者は、理由をいくつかあげています。ブタは遠視で、画面がどこまで見えていたか分かりません。ブタの目は顔の横についていて、鼻の先は画面から離れています。画面を見てからスティックを動かし、また画面を見直す必要がありました。鼻と首の動きだけでスティックを操るので、器用さにも限りがあります。

実験のやり方の問題もありました。ブタでこのゲームを試すのは初めてで、手探りでした。最初はスティックのまわりの囲いが高すぎて、スティックが動かしにくくなっていました。エサの出る筒の位置が悪く、正しく当ててもエサが出ないことも初めのころはありました。研究者は、ブタがゲームの考え方を十分に理解できていなかった可能性も、否定していません。そのうえで、ブタには画面にさわって答えるタッチパネルのほうが向いているだろうと書いています。

ブタの頭の働きは、100年以上前から調べられてきた

1915年に発表された研究では、ブタに2〜9個の並んだ箱から正しい箱を選ばせました。ブタは「右から1番目の箱」「左から2番目の箱」のような決まりを覚えて、正しい箱を選べました。その後の研究では、鏡に映った像を手がかりに、見えない所にかくしたエサを見つけられることも報告されています。人の言葉や身ぶりで出された、初めての組み合わせの指示に従えたという報告もあります。

パデュー大学の記事によると、クローニーさんたちはジョイスティックの実験の後、本物の物を使う実験に切りかえました。そして、小型のブタが「同じ」という考え方をどこまで理解できるかを調べています。

ブタの頭の働きを調べる意味

ブタやウシなどの家畜の頭の働きの研究は、この20年ほどで増えてきました。家畜をどう扱うべきか、どう飼うべきかを考える材料になるからです。2023年に発表された研究のまとめでは、ブタの暮らしやすさを頭の働きのテストで測ろうとした研究を36本集めました。飼い方などの条件を変えたとき、研究者の予想どおりにテストの成績がはっきり変わった研究は44%でした。テストの方法を確かめ、改良していく必要があると、まとめた研究者は書いています。

06まとめ

手のないブタ4頭が、鼻でジョイスティックを動かし、画面のカーソルを壁に当てるゲームに挑みました。4頭とも、壁が1枚だけの一番難しい段階で、でたらめより高い割合で当てられるようになり、一番うまいアイボリーは76%を当てました。サルやチンパンジーにはかないませんでしたが、遠視で手もないブタが、スティックと画面のつながりをある程度つかんでいたと、研究者は考えています。

RESEARCH FILE

研究カルテ

アメリカ ペンシルベニア州立大学

研究チーム
アメリカのパデュー大学のキャンディス・クローニーさんたち(実験はペンシルベニア州立大学で実施)
調べた場所
アメリカのペンシルベニア州立大学の飼育施設
調べた動物
ブタ4頭(ヨークシャー種2頭、パネピントという小型の品種2頭)
調べ方
鼻でジョイスティックを動かし、画面のカーソルを壁に当てるゲームを練習させた
分かったこと
4頭とも、的が1つの段階で、でたらめ(25%)より高い割合で当てられた
まだ分からないこと
ブタがゲームのしくみをどこまで理解していたのか。タッチパネルならもっとできるのか
論文
Frontiers in Psychology(2021年)
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英語で読んでみよう

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Pigs Play a Video Game

Pigs do not have hands. Can they still play a video game with a joystick? Scientists in the United States tried it with four pigs.

The pigs moved the joystick with their noses. When the joystick moved, a small circle moved on the screen. The pigs had to hit a blue wall with the circle. When they did it, they got some dog food.

At first, there were four walls, so the game was easy. Later, there was only one wall. All four pigs did better than random guessing. The best pig hit the wall 76 percent of the time.

The pigs were not as good as monkeys. One reason may be that they could not see near things well. Moving a stick with a nose is also hard. But the pigs kept playing when the scientist praised them.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How did the pigs move the joystick?ブタはどうやってジョイスティックを動かしましたか。

Q2. What did the pigs get when they hit the wall?壁に当てると、ブタは何をもらえましたか。

Q3. Which sentence is true?正しい文はどれですか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Croney, C. C. & Boysen, S. T. (2021) Acquisition of a Joystick-Operated Video Task by Pigs (Sus scrofa). Frontiers in Psychology 論文確認済みdoi:10.3389/fpsyg.2021.631755
  2. 2Purdue University College of Veterinary Medicine(2021)Do Pigs Fly? Well, A PVM Scholar Says They Do Gamevet.purdue.edu/news/do-pigs-fly-well-a-pvm-scholar-says-they
  3. 3Ede, T. & Parsons, T. D. (2023) Cognitive tasks as measures of pig welfare: a systematic review. Frontiers in Veterinary Science 論文確認済みdoi:10.3389/fvets.2023.1251070

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい