チンパンジーなど類人猿4種すべてが、相手をつついて顔をのぞきこむ「からかい」をしていた
動物園の類人猿4種の動画を調べると、どの種も相手をつついたり行く手をふさいだりして、顔をのぞきこみ反応を待つ「からかい」をしていた。

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- 類人猿4種すべてで、ふざけて相手をからかう行動が見つかった
- からかう側は相手の顔を見て反応を待ち、無視されるとくり返した
- からかいの元になる心の働きは、1300万年以上前からあったらしい
人に話すなら
チンパンジーとかゴリラの子どもって、休んでる大人をつついて、顔をのぞきこんで反応を待つんだって。無視されると、もう一回やるらしい。人の赤ちゃんのからかいとよく似てるよね。
読む前に予想しよう
類人猿のからかいは、たいてい相手からも同じように返された
9割以上が一方的に始まり、相手の最初の反応で一番多いのは無視だった。
人の赤ちゃんは、言葉を話す前から人をからかいます。おもちゃを差し出して、受け取ろうとするとさっと引っこめる。だめと言われたことを、親の顔を見ながらわざとやってみせる。こうした「ふざけたからかい」は、早ければ生後8か月で始まることが知られています。
アメリカとドイツの研究チームが、動物園の類人猿の動画を75時間分調べました。すると、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータンの4種すべてに、からかいがありました。休んでいる相手をつつき、顔をのぞきこんで反応を待つ。相手が無視すると、もう一度やる。人の赤ちゃんのからかいとよく似た行動です。
からかいは、冗談のもとになる心の働きと重なると考えられています。相手が何を期待しているかを読み、その期待をわざと外して楽しむ働きです。からかいが4種すべてにあるなら、その心の働きは、人と類人猿の共通の祖先にまでさかのぼるかもしれません。
01動物園の動画75時間から、ふざけたちょっかいを選び出した
研究の中心は、イザベル・ラウマー(Isabelle Laumer)さんです。アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校と、ドイツのマックス・プランク動物行動研究所に所属しています。同じ大学のエリカ・カートミル(Erica Cartmill)さんたちも加わりました。
使ったのは、2016年から2019年に撮影された動画です。アメリカのサンディエゴ動物園では、ボノボ9頭、オランウータン4頭、ゴリラ4頭の群れを撮りました。ドイツのライプツィヒ動物園では、チンパンジー17頭の群れを撮りました。動画は、それぞれの群れにいる3〜5歳の子どもを追いかけて撮ったものでした。
チームは、どの種も同じくらいの時間の動画を見て、遊びやいやがらせ、ちょっかいに見えるやりとりを504個取り出しました。そこから、エサを取るためのもの、取っ組み合いの遊び、3頭以上がからむものなどを外しました。残った284個を、5つの基準で1つずつ調べました。
5つの基準は、からかいらしさの目印です。
- やりとりが一方的である。
- 後ろから近づくなど、不意をつく。
- 相手の顔を見て、反応を確かめる。
- 目の前で手や物を振るなど、無視しにくいことをする。
- 無視されると、くり返したり強めたりする。
このうち3つ以上を満たしたものなど142個を、「はっきりしたからかい」として分析しました。
02一番多かったのは、つつく・たたく・行く手をふさぐ
からかいの方法は、18種類も見つかりました。一番多かったのは、つつくことでした。記録した行動全体の21%です。次が、たたく(15%)、行く手をふさぐ(11%)、体ごとぶつかる(9%)、体の一部を引っぱる(8%)です。ほかには、物を目の前で振る、物を取ってすぐ興味をなくす、顔のすぐ近くまで顔を寄せる、などがありました。
142個の内訳は、チンパンジー84、オランウータン31、ボノボ20、ゴリラ7でした。ただし、どの種がよくからかうかは、この数では比べられません。チンパンジーの群れは一番大きく、相手の数が多かったからです。オランウータンとゴリラのからかいは、それぞれ1頭の子どもがしたものでした。
種による違いも少し見えました。毛の長いオランウータンでは、毛を引っぱるからかいが目立ちました。ほかの種では、毛を引っぱることはあまりありませんでした。
03からかう側は、相手の顔を見て反応を待っていた
からかいの92%は、一方的に始まりました。からかう側は、87%の場面で、からかった直後に相手の顔を見ていました。相手がほとんど反応しないと、84%で同じことをくり返し、62%で動きを変えたり強めたりしました。22%は、相手が背中を向けているときに近づくなど、不意をつく始まり方でした。
からかいが起きたのは、たいてい落ち着いた時間でした。からかわれた側は、73%の場面で、休んだり、のんびり歩いたりといった落ち着いた行動をしていました。からかいの58%は、相手の休けいをじゃまするものでした。道具を使っているときなど、相手が何かに集中している場面をじゃますることは、あまりありませんでした。

04遊びのさそいとは違い、相手の最初の反応で一番多いのは無視だった
類人猿には、遊びにさそうときの決まった合図があります。「プレイフェイス」と呼ばれる遊びの表情などです。ところが、からかいの場面でこうした合図を出したのは、からかう側では37%だけでした。からかいの始めに合図を出したのは、10%にすぎません。
からかわれた側の最初の反応も、遊びとは違いました。一番多かったのは無視で、41%です。遊びや親しみのこもった反応は26%、軽くいやがる反応は24%、その場を離れるのは5%でした。けんかのような強い反応は、4%しかありませんでした。
からかいの94%は、子どもと大人の組み合わせで起きていました。そのうち、からかいを始めたのは子どもが96回、大人が38回で、子どものほうがずっと多かったのです。大人のチンパンジーが子どもをからかうときは、たたくより、つつくことが多くなりました。子どもが大人をからかうときは、つつくのとたたくのが同じくらいでした。チームは、大人のほうが子どもよりやさしいやり方でからかっていたようだと書いています。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
人の赤ちゃんのからかいと、どこが同じでどこが違うか
人の赤ちゃんのからかいを調べたのは、心理学者のヴァス・レディ(Vasu Reddy)さんたちです。生後12か月までに、赤ちゃんは3種類のからかいをするようになります。物を差し出して引っこめる、だめと言われたことをわざとする、人のしていることをじゃまする、の3つです。赤ちゃんは親の顔を見て、笑いながら反応を待ち、何度もくり返します。
類人猿のからかいも、一方的に始まり、相手の顔を見て、くり返す点が同じでした。違いもあります。人の赤ちゃんは、相手がいやな顔をしたからかいは、あまりくり返しません。類人猿は、相手が軽くいやがっても、くり返したり強めたりすることが多くありました。ただしチームは、類人猿の「軽くいやがる」反応が、人の「いやな顔」と同じ意味かは分からないとも書いています。
笑いと同じく、共通の祖先にさかのぼる?
2009年、イギリスのポーツマス大学などのマリーナ・ダビラ・ロス(Marina Davila Ross)さんたちは、類人猿4種と人の赤ちゃんの、くすぐられたときの声を比べました。声の特徴から作った系統の図は、遺伝子から分かっている類人猿の系統の図と一致しました。くすぐられたときの笑いは、人と類人猿が共通の祖先から受けついだものだと考えられています。
今回のチームも、同じ考え方をしています。からかいが類人猿4種すべてにあり、人の赤ちゃんのからかいとも似ているなら、その元になる心の働きは共通の祖先にもあったのだろう、とチームは考えています。人と類人猿4種の共通の祖先は、少なくとも1300万年前に生きていました。
研究の歴史と、この研究の限界
マックス・プランク研究所の発表によると、ジェーン・グドール(Jane Goodall)さんなど野外の研究者は、チンパンジーの似た行動を以前から記録していました。ただ、これまでの研究は、いじわるに近い攻撃的なからかいが中心でした。遊びの合図をともなうからかいは、研究の対象から外されることが多かったのです。ふざけたからかいを、決めた基準で体系的に調べたのは、この研究が初めてです。
一方で、限界もはっきりしています。調べたのは、それぞれの種で動物園の1つの群れだけです。からかいの回数を種どうしで比べることはできません。群れの大きさや、年齢・性別の組み合わせの影響も考えられます。チームも、野生の群れを含めて、各種の複数の群れを調べる必要があると書いています。また、からかいが仲を深める役に立っているのかは、この研究では分かりません。
05まとめ
動物園の類人猿の動画75時間から、ふざけたからかいが142個見つかりました。チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータンの4種すべてが、相手をつついたり行く手をふさいだりして、顔をのぞきこみ反応を待っていました。からかいを始めるのは、多くが子どもでした。休んでいる大人を子どもがつつき、無視されてもう一度つつく。動物園の類人猿の前で少し待つと、そんな場面に出会えるかもしれません。
研究カルテ
アメリカ サンディエゴ動物園
- 研究チーム
- アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校などのチーム(第一著者イザベル・ラウマー)
- 調べた場所
- アメリカのサンディエゴ動物園と、ドイツのライプツィヒ動物園
- 調べた動物
- 動物園の類人猿4種(チンパンジー・ボノボ・ゴリラ・オランウータン)
- 調べ方
- 動画75時間から、からかいらしいやりとりを選び、決めた基準で1つずつ記録した
- 分かったこと
- 4種すべてにからかいがあり、18種類の方法が見つかった
- まだ分からないこと
- 野生の群れでもからかうのか。からかいが仲を深める役に立つのか
- 論文
- Proceedings of the Royal Society B(2024年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Human babies start to tease their parents before they can talk. Do our closest animal relatives tease, too? For example, a baby holds out a toy and then quickly pulls it back.
Scientists watched 75 hours of video of apes in two zoos. They studied chimpanzees, bonobos, gorillas, and orangutans. They found teasing in all four kinds of apes.
The most common way to tease was poking. They often teased others while the others were resting. Apes also hit others, pulled their hair, or stood in their way. After teasing, the teaser often looked at the other ape's face. If there was no answer, it tried again.
The most common first answer from the other ape was to ignore the teaser. Young apes started teasing much more often than adults. The scientists think the roots of joking may be at least 13 million years old.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How many hours of video did the scientists watch?研究者たちは動画を何時間分見ましたか。
動物園の類人猿の動画を75時間分調べました。
Q2. What was the most common way to tease?一番多いからかい方は何でしたか。
つつくことが最も多く、記録した行動全体の21%でした。
Q3. What did the other ape do first most often?からかわれた側の最初の反応で一番多かったのは何ですか。
最初の反応は無視が41%で一番多く、けんかのような反応は4%だけでした。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Laumer, I. B. et al. (2024) Spontaneous playful teasing in four great ape species. Proceedings of the Royal Society B 論文確認済みdoi:10.1098/rspb.2023.2345
- 2Max Planck Society(2024)Do apes have humor?mpg.de/21524011/do-apes-have-humor
- 3Davila Ross, M. et al. (2009) Reconstructing the Evolution of Laughter in Great Apes and Humans. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2009.05.028
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





