アジアゾウが死んだ子を水路に埋めたらしい。インドの茶畑で見つかった5例
インド北部の茶畑の水路で、足を上に向けて埋まった子ゾウが5頭見つかった。研究者は、群れが運んで埋めたと考えている。

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- インドの茶畑の水路で、土に埋まった子ゾウが5頭見つかった
- 5頭とも、足を上に向け、頭と背中が土に埋まっていた
- ただし、ゾウが埋める場面を直接見た人はいない
人に話すなら
インドの茶畑の水路で、死んだ子ゾウが足を上に向けて土に埋まってるのが5回見つかったんだって。まわりには大人のゾウの足あとがあって、群れが運んで埋めたと研究者は考えてるらしいよ。
読む前に予想しよう
インドで、土に埋まった子ゾウが見つかった例は、どれも足を上に向けていた
5例とも足が上を向き、頭や背中が土に埋まっていた。
インド北部の茶畑には、雨の季節に余った水を流すための細いみぞがあります。2022年の夏から、そのみぞの中で、土に埋まった子ゾウが次々に見つかりました。どの子ゾウも、頭と背中が土に埋まり、4本の足だけが上に突き出していました。
見つかったのは、2023年までに5頭です。インドの森林局の職員と、インドの大学の研究者が、5例をくわしく調べて2024年に報告しました。まわりには大人のゾウの足あとが残っていました。2人は、群れが死んだ子を運んできて、みぞに埋めたと考えています。
アフリカのゾウでは、死んだ仲間に草や枝をかぶせた例が昔から知られていました。でもアジアゾウでは、子どもを埋めた記録はありませんでした。この報告は、アジアゾウが死んだ子を埋めたとする、初めての写真つきの記録です。
01ゾウと人がすむ場所が重なる、インドの茶畑
報告したのは、西ベンガル州森林局のパルビーン・カスワン(Parveen Kaswan)さんと、インド科学教育研究大学プネー校のアカシュディープ・ロイ(Akashdeep Roy)さんです。カスワンさんは、ブクサ・トラ保護区の副所長として野生動物を守る仕事をしています。
舞台は、ヒマラヤ山脈のふもとに広がる、西ベンガル州の北部です。この地域には500頭をこえるアジアゾウがすんでいます。森は細かく分かれ、そのすき間を茶畑や畑、軍の施設がうめています。その間を鉄道や大きな道路が通っています。茶畑はおよそ1350平方キロメートルあります。
ゾウは、森から森へ移るとき、茶畑の中を通ります。茶の木の間は人が少なく、ゾウが通る道になっているのです。茶畑には、余った水を流すための深さ1メートルもないみぞが、何本も走っています。
5頭の子ゾウは、どれもこの茶畑の中で見つかりました。見つけたのは、茶畑で働く人や、夜の見回りをする警備員です。知らせを受けた森林局が現場を調べ、獣医師が解剖して死因を確かめました。
025頭とも、足を上にして頭から埋まっていた
5例には、はっきりした共通点がありました。どの子ゾウも、足を上に向けていたのです。頭や鼻、背中は土に埋まっていました。みぞの深さは平均0.65メートルしかないので、足は地面から出ていました。
みぞの両側と、子ゾウにかぶせた土の上には、ゾウの足あとがたくさん残っていました。足あとやふんの大きさはいろいろでした。研究者は、大人と若いゾウが一緒になって土をかぶせたと考えています。
5頭とも、首から背中にかけて、あざや皮ふの下の出血がありました。研究者は、群れが鼻や足で子ゾウをつかみ、ある程度の距離を運んできたためだと考えています。ある例では、解剖で調べると、子ゾウは60〜72時間前に死んでいました。研究者は、群れが埋める場所を探して長い時間歩き回ったのではないかと考えています。
茶畑の夜の警備員によると、群れはその場で30〜40分ほど鳴いていました。ある例では、トランペットと呼ばれる高い声とうなり声が長く続いたと報告されています。鳴き声が報告されなかった例もあります。どの例でも、群れは40分ほどでその場を離れました。

03埋めたあと、群れはその道を通らなくなった
研究者は、埋めた後のゾウの動きも記録しました。茶畑の管理人に話を聞き、ゾウのふんや足あとを見回ったのです。
すると、多くの例で、群れはそれまで使っていた道をさけるようになりました。すぐ横の別の道を通って、森へ向かうようになったのです。最初の例では、その道をゾウが通る回数が、最大で7割へったと報告されています。アフリカのゾウは、死んだ仲間の骨に何度も戻ってきて調べることが知られています。研究者は、茶畑のアジアゾウはそれとは反対の行動をとったと書いています。
死因も解剖で調べられました。2頭は、細菌などによる重い感染症で死んでいました。残りの3頭の死因は、心臓や肺の働きが止まったことでした。研究者は、この3頭は、みぞに落ちた、ふまれた、などいろいろな原因がありうると書いています。どの例でも、人が直接手を加えたあとはありませんでした。
04埋める場面を、直接見た人はいない
この報告には、大事な限界があります。ゾウが子どもを運んで埋める場面を、実際に見た人はいないのです。埋めたのはおもに夜だったと考えられ、茶畑の人も、どの群れだったのかを見分けられませんでした。
「群れが埋めた」という考えは、見つかったときの姿勢、足あと、体のあざ、警備員が聞いた声などを組み合わせたものです。子ゾウがみぞに落ちて死に、雨で土がかぶさった、という見方はないのでしょうか。研究者は、みぞは浅く、子ゾウが落ちて死ぬとは考えにくいと書いています。それでも、3頭の死因については、みぞに落ちた可能性を外していません。
また、5例はどれも、たまたま見つかったものです。研究者自身も、この結果を地域全体やほかの場所に当てはめてはいけないと書いています。埋めた子ゾウは森林局が運び出したので、群れが後から戻ってくるかどうかも確かめられませんでした。
研究者が森林官から聞いた話もあります。近くのジャルダパラ国立公園の森では、群れが子を埋めた場所に4時間以上とどまりました。その後も、同じ群れが何度もその場所を訪れたそうです。人の少ない森の中では、ゾウのふるまいが茶畑とは違うのかもしれません。森の中のゾウがどうしているのかは、まだ確かめられていません。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
なぜ足を上に向けていたのか
足を上に向けた姿勢について、研究者は2つの考えを出しています。1つは、ゾウが子の足を鼻でつかんで運び、そのままみぞに下ろしたという考えです。足をつかむほうが持ちやすいからです。もう1つは、みぞがせまく浅いので、頭のほうから先に埋めたという考えです。どちらも、まだ確かめられたわけではありません。
研究者は、茶畑のみぞが使われた理由も考えています。保護された森の中には、こうした水路がありません。肉を食べる動物も森のほうに多くいます。一方、茶畑はゾウが通り慣れた道で、浅いみぞがたくさんあります。研究者は、ゾウが人の作った場所を自分たちのやり方で使い始めたのかもしれないと考えています。
ほかのアジアゾウでも、死んだ子を運ぶ姿が記録されていた
アジアゾウが死んだ子を運ぶことは、別の研究でも記録されています。2022年、インド理科大学院のサンジータ・ポカレル(Sanjeeta Pokharel)さんたちは、YouTubeの動画を使ってアジアゾウの行動を調べました。死にかけた仲間や死んだ仲間に、ゾウがどう反応するかを集めたのです。
集まったのは、2010〜2021年の25の例です。そのうち死んだ子ゾウが出てくる12の例を見ると、5つの例で大人のメスが死んだ子を運んでいました。メスは、鼻と口で子の足や鼻をつかんでいました。運ぶメスのまわりには、たいてい群れのほかのゾウがいました。茶畑の報告でも、西ベンガル州の南部で、群れのゾウが子ゾウを運ぶ姿が写真に撮られています。
アフリカのゾウは、死んだ仲間を何度も訪ねる
アフリカのゾウでは、死んだ仲間への行動がもっと多く調べられています。2020年にアメリカのスミソニアン保全生物学研究所などの研究者が、それまでの記録をまとめました。ゾウは死んだ仲間に近づき、鼻でさわり、くわしく調べます。死んだばかりのときだけでなく、骨だけになった後にも、何度も訪れていました。
この行動は、死んだゾウと特に親しくなかったゾウにも見られました。まとめた研究者たちは、ゾウが仲間の生き死にの情報を確かめているのかもしれないと考えています。茶畑のアジアゾウが埋めた場所をさけたことは、これとは逆に見えます。ただ、茶畑では森林局がすぐに子ゾウを運び出したので、同じ条件で比べることはできません。
「死」への反応を調べる学問
動物が仲間の死にどう反応するかを調べる分野を、「比較死生学」と呼びます。サルや類人猿の仲間では、母親が死んだ赤ちゃんを運ぶ行動がよく記録されています。イルカやクジラでも、死んだ子を運ぶ姿が見られています。こうした行動が何のためなのかは、どの動物でもまだよく分かっていません。ゾウの記録は、まだ数が少ないのです。
05まとめ
インド北部の茶畑のみぞで、2022〜2023年に、土に埋まった子ゾウが5頭見つかりました。5頭とも足を上に向け、頭と背中が埋まっていました。まわりには大小のゾウの足あとがあり、研究者は群れが運んで埋めたと考えています。埋めた後、群れはその道をさけるようになりました。
ただし、埋める場面を見た人はいません。5例は、どれもたまたま見つかったものです。それでも、茶畑のみぞに残ったたくさんの足あとと、5頭すべてに共通した姿勢は、写真で記録されています。
研究カルテ
インド・西ベンガル州
- 研究チーム
- インドの西ベンガル州森林局とインド科学教育研究大学プネー校(パルビーン・カスワン、アカシュディープ・ロイ)
- 調べた場所
- インド西ベンガル州北部の茶畑(2022〜2023年)
- 調べた動物
- 野生のアジアゾウ(学名 Elephas maximus)の、生後3〜12か月の子ども5頭
- 調べ方
- 見つかった5例を写真・現場の記録・解剖の報告書・茶畑の人たちの話から調べた
- 分かったこと
- 5頭とも足を上に向けて水路に埋まり、まわりに群れの足あとがあった。死因は病気などだった
- まだ分からないこと
- 埋める場面は誰も見ていない。森の中でも同じことをしているのかは分からない
- 論文
- Journal of Threatened Taxa(2024年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
In northern India, many tea farms have narrow ditches for water. In 2022 and 2023, people found five dead baby elephants in these ditches. The babies were covered with soil, and only their legs stood up. The babies were between three and twelve months old.
There were many elephant footprints around the ditches. The babies also had marks on their backs. Two scientists think the group carried the babies and buried them.
After that, in most cases, the elephants stopped using their old paths. They walked on other paths near them. In one place, elephants used the old path up to 70 percent less. Animal doctors also checked the babies. They found no sign that people had hurt them.
But nobody saw the elephants bury the babies. The burials probably happened at night. Also, there are only five cases. Scientists need more studies to know what really happened.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. Where were the baby elephants found?子ゾウはどこで見つかりましたか。
子ゾウはインド北部の茶畑の、水のためのみぞで見つかりました。
Q2. What was around the ditches?みぞのまわりには何がありましたか。
みぞのまわりや土の上に、ゾウの足あとがたくさん残っていました。
Q3. Why did nobody see the burial?なぜ誰も埋める場面を見なかったのですか。
埋めたのはおもに夜だったと考えられ、その場面を直接見た人はいませんでした。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Kaswan, P. & Roy, A. (2024) Unearthing calf burials among Asian Elephants Elephas maximus Linnaeus, 1758 (Mammalia: Proboscidea: Elephantidae) in northern Bengal, India. Journal of Threatened Taxa 論文確認済みdoi:10.11609/jott.8826.16.2.24615-24629
- 2Pokharel, S. S. & Sharma, N. (2022) Viewing the rare through public lenses: insights into dead calf carrying and other thanatological responses in Asian elephants using YouTube videos. Royal Society Open Science 論文確認済みdoi:10.1098/rsos.211740
- 3Goldenberg, S. Z. & Wittemyer, G. (2020) Elephant behavior toward the dead: A review and insights from field observations. Primates 論文確認済みdoi:10.1007/s10329-019-00766-5
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





