オマキザルは3000年前から石の道具を使い、時代ごとに石の大きさが変わっていた

ブラジルでサルの石の道具を掘り出すと、約3000年前から使われていた。一番古い石は小さく、約300〜100年前の石は今より大きかった。

No.141 7分で読めるえっ度 論文 2019年
乾いた林の中で、茶色い毛で頭に黒い毛のふさがあるヒゲオマキザルが、後ろ足で立って両手で丸い石を持ち上げ、木の根の上に置いたカシューナッツに打ち下ろそうとしている。

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  1. サルが使った石の道具が、約3000年前の地層から見つかった
  2. 一番古い時代の石は小さく、今の石より軽かった
  3. 人間以外の動物で、道具の使い方の変化が長くたどれた初めての例

人に話すなら

ブラジルのオマキザルって、石で木の実を割るんだけど、その場所を遺跡と同じやり方で掘ったら、3000年前の石が出てきたんだって。しかも時代によって石の大きさが違って、割っていた物も変わったらしいよ。

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読む前に予想しよう

サルの石の道具の使い方は、何千年もずっと同じだった

人間の歴史は、石の道具の変化でたどることができます。古い時代の地層から出てくる石器と、新しい時代の石器を比べると、人の暮らしがどう変わったかが見えてきます。では、人間以外の動物の道具にも、そんな「歴史」はあるのでしょうか。

ブラジルのサルで、その答えが見つかりました。研究チームは、野生のヒゲオマキザルが石で食べ物を割る場所を、遺跡と同じ方法で掘りました。すると、少なくとも約3000年前の地層から、サルの使った石が出てきました。しかも、時代によって石の大きさや傷のつき方が違っていました。

道具を使う動物は、ほかにもいます。けれども、その使い方が何千年もの間にどう変わったかを示す記録は、人間以外では見つかっていませんでした。この研究は、人間以外の動物で道具の使い方の長い変化をとらえた、初めての例です。

01ヒゲオマキザルは、石をハンマーにして食べ物を割る

ヒゲオマキザルは、ブラジルなどにすむオマキザルのなかまです。ブラジルのセーラ・ダ・カピバラ国立公園のサルたちは、石の道具をとてもよく使います。論文によると、使い道の多さは、今生きている動物の中で人間に次ぐほどです。

使い道は、木の実割り、種の処理、地面掘り、石と石を打ち合わせること、メスが求愛のときに石を投げることなどです。木の実を割るときは、近くにある丸い石英岩の石をハンマーにします。台には、木の根や枝、転がった石、大きな岩などを使います。

研究の舞台は、公園の中の「カジュBPF2」という場所です。今もサルたちがここに石を運んできて、カシューナッツを割っています。地面には、カシューの汁がしみた石や、割れた殻が残っています。カシューの木の根や枝には、たたいた傷がはっきりついています。

02研究チームは、サルの「遺跡」を人の遺跡と同じ方法で掘った

調べたのは、ブラジルのサンパウロ大学のチアゴ・ファロチコ(Tiago Falótico)さんと、イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのトモス・プロフィット(Tomos Proffitt)さんたちです。論文は、この2人が中心になって書きました。

チームは、この場所の2か所を、合わせて67平方メートル掘りました。一番深いところは77センチメートルです。土は5センチメートルずつ、16の層に分けて掘り進めました。出てきた2センチメートルより大きい石は、すべて集めました。その数は1699個です。

地面を四角く掘った穴の断面に、土の層が重なり、それぞれの層に丸い石が埋まっている。穴のふちに小さなはけと物差しが置かれている。

次に、どの石がサルの道具かを見分けました。たたいた跡、小さなひびの始まり、こびりついたかす、表面のつぶれなどを探します。ここでチームは、とても慎重な決まりを作りました。6人の研究者が1つずつ石を見て、1人でも「違う」と言ったら道具に数えない、という決まりです。こうして、サルの道具と認めた石は122個、重さは合わせて46.7キログラムでした。

道具の年代は、石のすぐそばから取ったものの放射性炭素年代測定で調べました。生き物の体に含まれる炭素が、時間とともに少しずつ減ることを使って、年代を測る方法です。測った年代は16個です。その結果、サルがこの場所を使った時代は、4つに分かれていました。

なお、地面の上にある今のハンマー石は持ち帰りませんでした。サルたちが今も使っているからです。チームは、場所と大きさ、重さだけを記録して、そのまま残しました。

03一番古い道具は約3000年前のもので、今より小さく軽かった

一番古い時代は、約3000〜2400年前です。この時代のハンマー石は、たたいた跡がとても多く、いくつもの面が傷ついていました。そして、新しい2つの時代の石より、はっきり小さく軽かったのです。

論文は、この傷の多さを次のように考えています。小さな食べ物をたたくと、石が食べ物だけでなく、下の台にもぶつかります。そのため傷が増えたのだろう、というのです。今のサルの観察でも、硬い食べ物ほど重い石を使うことが知られています。軽い石は、カシューナッツより小さくて柔らかい食べ物を割っていた証拠だと、チームは考えました。

次の時代は、西暦1310〜1385年ごろです。この時代の石は、前後の時代と大きさに大きな差がなく、中間的な特徴を持っていました。

その次の時代は、西暦1700年ごろ〜1920年ごろです。ここでは逆に、ハンマー石が今のカシューナッツ用の石より、はっきり大きくなっていました。大きな台の石もたくさん見つかりました。この時代のサルは、カシューナッツより硬い物を割っていたと考えられます。

そして一番新しい時代の石には、すべてカシューの汁のかすがついていました。カシューの木の根や枝も、台として使われていました。

04昔の人の石ではない。でも、道具が変わった理由はまだ分からない

セーラ・ダ・カピバラ国立公園には、人間の古い遺跡もたくさんあります。では、この石は昔の人が使ったものではないのでしょうか。

論文は、人の石器ではない理由を挙げています。まず、人が石を打ち割って作った刃物や、その残りの石がありません。たたいた跡も、人が石器を作るときのハンマー石とは違います。平らな面に何度も重なった跡は、オマキザルの石によく見られるものです。さらに、この地域の人の遺跡によくある土器や、火をたいた跡もありませんでした。

時代によって道具が変わった理由は、まだ分かっていません。論文は、3つの説明を挙げています。1つ目は、別々の群れがこの場所を使い、群れごとに割る食べ物が違ったという説明です。サルは木の実割りを仲間から学ぶと報告されています。だから群れごとの「文化」の違いかもしれません。2つ目は、1つの群れが長い時間をかけて使い方を変えたという説明です。3つ目は、昔はこの場所にカシューの木がなかったという説明です。

古い石には、汁のかすが残っていません。そのため、昔のサルが何を割っていたのかを直接は確かめられないのです。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

「霊長類考古学」の始まり

動物の道具を地面から掘り出して調べる研究は、まだ新しい分野です。2007年、アフリカのコートジボワールで、チンパンジーが木の実割りに使った石が掘り出されました。年代は約4300年前でした。2016年には、同じチームの一部がこの国立公園で掘り、サルの道具が600〜700年前までさかのぼると報告しました。アフリカの外で見つかった、人間以外の道具として最も古いものでした。今回の研究は、その年代を約3000年前まで延ばし、およそ4倍にしました。

「変化」が見つかったことの意味

チンパンジーの古い道具の研究では、道具の使い方が時代によって変わった証拠は見つかっていませんでした。論文によると、今回が人間以外の動物で、道具の使い方の長い変化を示した初めての例です。人の考古学では、石器の形の違いから、暮らしや食べ物の変化を読み取ってきました。論文は、同じような読み取りを、サルの道具にもできるようになったと書いています。

ほかのサルの道具とのくらべ

タイのカニクイザルも、石で貝や木の実を割ります。2019年の研究では、となり合う島にすむカニクイザルの群れどうしで、石の選び方や使い回し方が違っていました。その違いは、すむ場所の環境だけでは説明しきれませんでした。オマキザルとカニクイザルは、遠く離れた大陸にすむ別々のサルです。どちらも、群れによって道具の使い方が違う可能性が見えてきています。

この研究方法の限界

サルの道具と認める決まりを厳しくしたため、本当の道具の数はもっと多いはずだと論文は書いています。少しだけ使われて跡が残らなかった石は、数に入っていません。また、測った年代と年代の間には、空きがあります。論文は、土がゆっくりしかたまらない時期があったためだろうと考えています。サルがずっとこの場所を使い続けていたのかどうかは、はっきりしません。論文は、約450世代分の「くり返し使われた、ただし続いていたとは限らない」記録だとしています。

05まとめ

ブラジルのセーラ・ダ・カピバラ国立公園で、ヒゲオマキザルが使った石の道具が掘り出されました。一番古い道具は約3000年前のもので、今の石より小さく軽いものでした。西暦1700年ごろから1920年ごろには、逆に今より大きな石が使われていました。

人間以外の動物で、道具の使い方が何千年の間に変わったことを示したのは、この研究が初めてです。変化の理由が文化なのか、環境なのかは、まだ分かっていません。

この場所では、今もサルたちが石を運んできて、カシューナッツを割っています。今日サルが置いていった石も、いつか未来の研究者に掘り出されるかもしれません。

RESEARCH FILE

研究カルテ

ブラジル・セーラ・ダ・カピバラ国立公園

研究チーム
ブラジルのサンパウロ大学とイギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンなどのチーム(チアゴ・ファロチコ、トモス・プロフィット)
調べた場所
ブラジルのセーラ・ダ・カピバラ国立公園の「カジュBPF2」という場所
調べた動物
野生のヒゲオマキザル(学名 Sapajus libidinosus)
調べ方
サルが今もカシューナッツを割りに来る場所を67平方メートル掘り、出てきた石を年代ごとに比べた
分かったこと
約3000年前から石の道具が使われ、時代によって石の大きさや傷のつき方が変わっていた
まだ分からないこと
変化の理由が、群れごとの文化の違いなのか、カシューの木が昔なかったからなのか
論文
Nature Ecology & Evolution(2019年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Monkeys Have Used Stone Tools for 3,000 Years

Some monkeys in Brazil use stones as hammers. They hit nuts with the stones and open them. Scientists wanted to know how long they have done this.

The team dug the ground at a place where monkeys still open cashew nuts. They found 122 stones used by monkeys. The oldest stones were about 3,000 years old.

The tools also changed over time. The oldest stones were small and light. The monkeys probably opened small, soft food with them. Stones from a few hundred years ago were bigger than the stones used now.

It is the first long-term change in tool use found in an animal other than humans. But nobody knows why the tools changed. Different monkey groups may have had different habits. Or maybe there were no cashew trees there long ago.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. What do the monkeys open with stones today at this place?この場所でサルが今、石で割っているものは何ですか。

Q2. How old were the oldest stones?一番古い石は何年前のものでしたか。

Q3. What were the oldest stones like?一番古い石はどんな石でしたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Falótico, T. et al. (2019) Three thousand years of wild capuchin stone tool use. Nature Ecology & Evolution 論文確認済みdoi:10.1038/s41559-019-0904-4
  2. 2同論文の著者版全文(グラスゴー大学の論文公開サイト)eprints.gla.ac.uk/189047/
  3. 3Haslam, M. et al. (2016) Pre-Columbian monkey tools. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2016.05.046
  4. 4Mercader, J. et al. (2007) 4,300-year-old chimpanzee sites and the origins of percussive stone technology. PNAS 論文確認済みdoi:10.1073/pnas.0607909104
  5. 5Proffitt, T. et al. (2016) Wild monkeys flake stone tools. Nature 論文確認済みdoi:10.1038/nature20112
  6. 6Luncz, L. V. et al. (2019) Group-specific archaeological signatures of stone tool use in wild macaques. eLife 論文確認済みdoi:10.7554/eLife.46961

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい