1学期の多読で、英語を読むことへの「心地よさ」が増え「不安」が減った
Yamashita, J. (2013). Effects of extensive reading on reading attitudes in a foreign language. Reading in a Foreign Language, 25(2), 248–263 doi:10.64152/10125/66872
ひとことで言うと:15週間の多読授業のあと、学生は英語を読むのが前より心地よく感じ、不安も減っていた。
対象:日本の大学2年生61名、15週間の多読授業
なぜこの研究?
多読が読解力や語彙を伸ばすかについては多くの研究があるが、学習者の気持ちの面、つまり英語を読むことへの態度にどう影響するかを詳しく調べた研究は少なかった。読むことへの態度は、読み続けるかどうかを左右する大切な要素である。そこで、多読の授業の前後で、英語の読書への態度がどう変わるかを調べた。とくに、日本の大学生を対象に確かめた研究は少なかった。
どうやって調べた?
日本の大学で必修英語を受ける2年生61名が、週1回90分・15週間の多読授業を受けた。教室には約500冊のGraded Readersがあり、学生は好きな本を選んで授業内外で読み、1冊ごとに読書記録を提出した。授業の後半は自由な黙読の時間だった。初回と最終回に、22項目のアンケートで「心地よさ」「不安」「知的な価値」「実用的な価値」「言語的な価値」の5つの態度を測った(「言語的な価値」はもともと点数が高すぎたため分析から除いた)。
何がわかった?
多読の授業のあと、英語を読むことへの「心地よさ」と「知的な価値」(読むことで視野が広がる、など)の感じ方が高まり、「不安」は下がった。一方、「実用的な価値」(仕事や試験に役立つ、など)には変化がなかった。効果量(変化の大きさを表す指標)は、心地よさが大きく、不安が中くらい、知的な価値は小さめ、実用的な価値はほとんどなかった。つまり、多読はとくに読むことへの気持ちの面(心地よさや不安)に良い影響を与えたと言える。多読によって英語の読書が「苦手でこわいもの」から「落ち着いて取り組めるもの」へと変わりうることを示した点で、多読を授業に取り入れる大きな理由の一つになる研究である。
- 英語を読むことへの「心地よさ」がはっきり高まった
- 英語を読むことへの「不安」が下がった
- 「読むと視野が広がる」といった知的な価値の感じ方も少し高まった
- 「役に立つ」という実用的な価値の感じ方は変わらなかった
主な数字
- 参加者:61名、週1回90分×15週間、教室の本 約500冊
- 効果量 r:心地よさ .54(大)、不安 .34(中)、知的な価値 .26(小〜中)、実用的な価値 .09(ほぼなし)
読むときの注意(研究の限界)
比較のための多読をしないクラスがないため、態度の変化がすべて多読によるものとは言い切れない。教えた教員が研究者本人で、1つの大学の61名に限られる。態度の変化が読書量や英語力の伸びとどう結びつくかは、この研究では調べていない。
多読をする人・教える人へ
多読は、英語力だけでなく「英語を読むのはこわくない」「読むのは心地よい」という気持ちを育てる。英語に苦手意識がある人ほど、易しい本を自分で選んで読む体験が助けになる。一方、「役に立つ」と感じさせるには、多読だけでなく、目標や成果を見える形で示す工夫も必要かもしれない。気持ちの変化は読書を続ける力の土台になるので、教える側も点数の伸びと同じくらい大切にしたい。
今日からできること
- 英語に苦手意識があるなら、まずは辞書なしで楽に読める本を数冊読み切ってみる
- 授業では、自由に選べる本を多めにそろえ、授業時間の一部を静かな黙読の時間にする
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録+本文(オープンアクセス)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
関連する研究
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