長期の研究・2007年

中学生2人の多読を2年半追跡:やる気は読めるようになるにつれて変わっていく

Nishino, T. (2007). Beginning to read extensively: A case study with Mako and Fumi. Reading in a Foreign Language, 19(2), 76–105 doi:10.64152/10125/66807

動機づけ年少者日本の研究長期Graded Readers

ひとことで言うと:多読を始めた中学生2人は、読めるようになるにつれて読み方もやる気も変わり、ハリー・ポッターまで読んだ。

対象:東京の私立中学に通う2年生の女子2名(開始時14歳、英検3級合格)、2年半

なぜこの研究?

多読研究の多くは、クラスなどの集団の平均を調べるもので、一人ひとりの学習者が多読をどう経験しているかは見えにくかった。また、英語を学び始めて間もない学習者の多読の様子を調べた研究も少なかった。多読を始めたばかりの学習者は、知らない語に出会ったときどう読むのか、やる気はどう変わるのか。著者は、日本の中学生2人を長期間くわしく追うことで、その姿を描き出そうとした。

どうやって調べた?

東京の別々の私立中学に通う2年生の女子2名(いとこ同士)が、2001年2月から2年半、著者の家で週4回・1回約15分の多読を行った。著者は家庭教師として近くで自分も英語の本を読み、質問に答え、本選びを手伝った。「自分で本を選ぶ」「面白くなければやめる」「辞書は引かない(必要なら質問するか巻末の語彙表を見る)」「楽しんで読む」ことを勧めた。最初の2冊には日本語の注を付け、その後はOxford Bookworms などのGRを、各レベルで5〜10冊ずつ読んで段階的に進んだ。後半には注付きで『ハリー・ポッター』の原書なども読んだ。面接(4回)、定期的な読む速さのテスト、読書中の観察で、読み方の工夫(読解方略)とやる気の変化を調べた。

何がわかった?

2人はGRの各レベルを5〜10冊ずつ、1冊1〜2週間のペースで読み進め、順調に上のレベルへ進んだ。開始時の読む速さは毎分72語と58語だったが、2年半でほぼ2倍になった。2人はさまざまな読解方略を使っていたが、知らない語に出会ったときの対応など、方略の使い方には大きな個人差があった。やる気は一定ではなく、読めるようになるにつれて変化した。やる気を高めた要因は、達成感、物語に入り込む楽しさ(フロー体験)、英語で読む自信、自分で本を選んで読むようになったことだった。一方、GRへの興味が薄れて原書を好むようになったが、合う本が見つからず、さらに大学入試の圧力もあって、最終的には多読をやめることになった。著者は、学習者のやる気は時間とともに変わる「動的なもの」だと結論づけている。

  • 2人はGRを各レベル5〜10冊ずつ読んで順調にレベルを上げ、読む速さは2年半でほぼ2倍になった
  • さまざまな読解方略を使っていたが、使い方には大きな個人差があった
  • やる気は固定されたものではなく、読めるようになるにつれて変化した
  • 達成感・物語に入り込む楽しさ・英語で読む自信が、やる気を高めていた
  • GRへの興味の低下、合う原書が見つからないこと、入試の圧力が、やる気を下げる要因になった

主な数字

  • 期間:2年半、1回約15分×週4回、面接4回
  • GRの各レベルで5〜10冊ずつ(1冊あたり1〜2週間)読み進めた
  • 開始時の読む速さ:毎分72語と58語 → 2年半でほぼ2倍に

読むときの注意(研究の限界)

参加者は2人だけで、著者が家庭教師としてすぐそばで手厚く支えるという特別な環境だった。2人はもともと意欲が比較的高く、文法や語彙の知識もある程度持っていた。著者自身も、これらの理由から結果を一般化することはできないと述べている。読む速さの測定では、測るときに使った本のレベルが回によって違っていた。

多読をする人・教える人へ

多読のやる気は固定されたものではなく、読めるようになるにつれて変わっていく。人によって合う読み方も違うので、他人と比べず、自分のペースで続けることが大切である。上達するとGRに物足りなさを感じる時期が来るので、その段階で読みやすい原書や好きなシリーズにうまくつなげることが、多読を長く続けるカギになる。また、受験期などで読む時間が減ることも想定し、短い時間でも読み続けられる工夫をしておきたい。

今日からできること

  • 自習:1回15分でもよいので、週に何回か決まった時間に読む
  • 自習:各レベルで5〜10冊読んでから次のレベルへ。GRに飽きてきたら、好きな作品の原書や上のシリーズを探す
  • 授業:生徒のやる気の変化に気を配り、物足りなさを感じ始めた生徒には次のステップになる本を紹介する

確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(参加者・手順・教材・結論)で確認(ページ範囲はRFL本文の表記76–105による。Crossrefの記載76-195は誤り)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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