実験・2008年

訳読中心の公立高校でも、7週間の多読で読む速さが約3割アップ

Iwahori, Y. (2008). Developing reading fluency: A study of extensive reading in EFL. Reading in a Foreign Language, 20(1), 70–91 doi:10.64152/10125/66626

読む速さ日本の研究Graded Readers教室での実践

ひとことで言うと:ふだん訳読の授業を受けている高校生も、7週間やさしい本を読んだら、英語を読む速さがはっきり上がった。

対象:日本の公立高校(共学・平均的な学力)の2年生33名(16〜17歳、英語力は初級)、7週間

なぜこの研究?

読む速さ(流暢さ)は、英語の読解指導で注目されるテーマになっていた。多読で大学生の読む速さが伸びることを示した研究はあったが、高校生を対象にした研究はほとんどなかった。日本の高校では訳読と暗記中心の授業が一般的で、生徒が英語を大量に読む機会は少ない。そこで著者は、日本の高校生に多読を取り入れると、読む速さと総合的な英語力が伸びるのかを確かめた。

どうやって調べた?

公立高校2年生33名が、2006年6月〜8月の7週間(学期中4週間+夏休み3週間)、宿題として多読を行った。教室の本棚に、基本語彙200〜1,000語のGR107冊と英語のマンガ(Archie、Casper など)30冊の計137冊を置き、生徒が興味に合わせて選んで借りた。目標は7週間で28冊とし、本ごとに書名と短い感想の記録を書かせ、期間の途中で全員と面談した。通常の英語の授業(訳読中心)はそのまま続いた。多読の前後に、①1分間でどれだけ読めるかを測る読む速さのテスト、②総合的な英語力を測るCテスト(単語の後半を補う穴埋め、100問)を行い、前後の平均を比べた。

何がわかった?

読む速さの平均は、事前の毎分84.18語から事後には112.82語へと上がった。平均で約28.6語の伸び(約30%の向上)で、統計的にもはっきり意味のある差だった。33名のうち多くの生徒の速さが上がり、毎分50〜70語も伸びた生徒もいた。総合的な英語力を測るCテストも47.58点から51.00点に上がり、統計的に意味のある伸びだったが、100点満点で4点未満と伸びはわずかだった。著者は、目標の28冊に対し、実際に読んだ冊数は1〜10冊(平均4冊)と多くなかったにもかかわらず速さが伸びたと述べ、高校生でも多読は読む速さを伸ばす有効な方法であり、授業のカリキュラムに取り入れるべきだと提言している。

  • 読む速さの平均が毎分84.18語→112.82語に向上(平均+28.64語、約30%アップ)
  • 毎分50〜70語も速くなった生徒がいた
  • 総合的な英語力(Cテスト)も47.58点→51.00点と有意に伸びたが、伸び幅は小さかった
  • 訳読中心の通常授業はそのままで、宿題としての多読を加えただけで変化が見られた

主な数字

  • 読む速さの平均:事前 84.18語/分 → 事後 112.82語/分(平均差28.64語/分、有意)
  • Cテスト(100点満点):47.58点 → 51.00点(有意だが伸びは小さい)
  • 用意した本:GR107冊+英語のマンガ30冊=137冊(33名用)
  • 期間:7週間、目標28冊(実際に読んだのは1〜10冊、平均4冊と報告)

読むときの注意(研究の限界)

多読をしない比較群(統制群)がないため、伸びがすべて多読のおかげとは言い切れない。事前と事後で同じテストを使ったので、慣れによる伸びも含まれうる。読む速さは1分間だけ読む方法で測っており、速く読めても内容を理解していたかは十分に確かめていない。著者自身もこれらを限界として挙げている。対象は1校の初級レベルの高校生33名に限られる。

多読をする人・教える人へ

訳読中心の授業を受けている高校生でも、やさしい本を読む時間を加えるだけで読む速さは伸びる可能性がある。短期間でも変化が見えるので、まず数週間試してみる価値がある。GRだけでなく英語のマンガのような気軽に読める本も選べるようにすると、本が苦手な生徒も手に取りやすい。ただし比較群がない研究なので、学校で取り入れる際は、同じ学年の別のクラスと比べるなどして効果を確かめるとよい。

今日からできること

  • 自習:夏休みなど数週間を「多読期間」にして、始める前と後に1分間で読める語数を測ってみる
  • 自習:GRに加えて、英語のマンガなど気軽に読める本も多読に入れてよい
  • 授業:教室に本棚と貸し出しノートを置き、簡単な読書記録と途中の面談で進み具合を確認する

確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(方法・結果の表・考察・限界)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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