読む速さが最も伸びた学生は年20万語、やさしいGR中心に読んでいた
Beglar, D., & Hunt, A. (2014). Pleasure reading and reading rate gains. Reading in a Foreign Language, 26(1), 29–48 doi:10.64152/10125/66684
ひとことで言うと:1年で一番速く読めるようになった学生は、やさしい本を20万語ほど読んでいた。難しい本より、やさしい本がカギ。
対象:西日本の私立大学1年生76名(19〜20歳)のうち、1年間で読む速さが最も伸びた14名を中心に分析
なぜこの研究?
多読で読む速さが伸びることは知られていたが、「1年にどれだけ読めば十分か」という具体的な目安はほとんど示されていなかった。また、読んだ「量」と、読んだ本の「種類」(やさしく書き直された本か原書か)、「レベル」(やさしいGRか難しいGRか)が、それぞれどれだけ速さに影響するのかも区別されていなかった。「やさしい本が流暢さに良い」という考えは広く信じられていたが、それを裏づける実証データもなかった。
どうやって調べた?
大学1年生76名(多読経験なし、最初の読む速さは平均約97語/分)が1年間、授業内外で多読をした。2クラスは「少なくとも2週間に1冊」読むよう指示され、1クラスは精読(訳読)と多読を組み合わせた。読んだ本ごとにレポートを出させ、読んだ量を「標準語数」(本によって違う1語の長さをそろえた単位)で数えた。5月と12月に、約400語の文章4つ(計1,400標準語)で読む速さと理解(32問)を測った。速さの伸びで学生を5グループに分け、最も伸びた14名(グループ1)の読書量・本の種類・レベルを他と比べた。さらに、読書量がほぼ同じでGRだけを読んだ人と原書も読んだ人の14組を比べた。
何がわかった?
最も伸びたグループ1(14名)は、1年間で平均208,607標準語を読み、読む速さが平均32.99語/分(97.27→130.26語/分)伸びた。全体として、たくさん読んだグループほど速さも伸びる傾向があった。ただし量だけでは説明できず、どんな本を読んだかも重要だった。グループ1が読んだ354冊の94.9%は300〜1,600見出し語レベルのやさしいGRで、読み始めの本も最もやさしいレベルを選んでいた。読書量をそろえた14組の比較では、12組でGRだけを読んだ人のほうが、原書も混ぜて読んだ人より速さが伸びた。著者らは、同程度の学習者が1年に読むべき最低量の目安として「20万標準語」を提案し、やさしい本ほど速く大量に読めて同じ語や表現に何度も出会えるため、流暢さが育つと考察している。
- 最も速さが伸びた14名は、1年間で平均208,607標準語を読み、速さが平均32.99語/分伸びた
- おおむね「たくさん読んだグループほど速さが伸びる」傾向があったが、量だけでは差を説明しきれなかった
- 最も伸びたグループが読んだ本の94.9%は、1,600見出し語レベルまでのやさしいGRだった
- 読書量が同じくらいのペアを比べると、14組中12組でGRだけを読んだ人のほうが速さが伸びた
- 1年の最低読書量の目安として「20万標準語」が提案された
主な数字
- 最も伸びた14名:年間平均208,607標準語、読む速さは97.27→130.26語/分(+32.99語/分)
- 年間の最低読書量の目安:20万標準語
- 最も伸びたグループの本の94.9%(354冊中336冊)が300〜1,600見出し語レベル
- 読書量をそろえた14組中12組で、GRだけを読んだ人のほうが速さが伸びた
- 毎分100語で1日20分・週5日読むと、週10,000語・1年(28週)で280,000語
読むときの注意(研究の限界)
1つの大学の76名、1年間だけのデータで、分析の中心は最も伸びた14名である。グループを「伸びた結果」で分けているため、多読以外の要因(もともとの適性や意欲など)の影響を完全には除けない。読む速さはやさしい物語文で測っている。著者ら自身も、3年以上の長期研究や、速読練習など他の方法との比較が必要だと述べている。20万語はこの研究の学習者レベルでの目安で、全員に当てはまる絶対値ではない。
多読をする人・教える人へ
「年20万語」は、毎分100語なら1日20分・週5日でも届く量である(著者らの表では年28週で28万語)。読むのが遅い段階ではもっと時間が必要になるが、決して非現実的な量ではない。大切なのは量だけでなく本の選び方で、自分の力より少し下のやさしい本を大量に読むほうが、背伸びして原書を読むより速さは確実に伸びる。原書に挑戦したくなっても、速さを伸ばしたい時期はやさしい本を中心にしておくとよい。
今日からできること
- 自習:1日20分・週5日を目標に読み、読んだ語数を記録して「年20万語」ペースか確かめる
- 自習:読み始めは「やさしすぎるかな」と思うレベルから。速さを伸ばしたい時期は原書よりGRを中心にする
- 授業:多読記録に語数欄をつけ、学期ごとに10万語を目安に進み具合を見える化する
確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(方法・結果の表・考察)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
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