実験・2012年

日本の大学生97名を1年追跡:精読より多読のほうが読む速さが伸びた

Beglar, D., Hunt, A., & Kite, Y. (2012). The Effect of Pleasure Reading on Japanese University EFL Learners' Reading Rates. Language Learning, 62(3), 665–703 doi:10.1111/j.1467-9922.2011.00651.x

読む速さ大学生日本の研究長期Graded Readers

ひとことで言うと:1年間、楽しみながらたくさん読んだ大学生は、訳しながら読んだ学生より英語を読むのが速くなった。

対象:日本の大学1年生97名(精読グループ1つ・多読グループ3つ)、期間1年

なぜこの研究?

「英語を速く読めるようになるには、たくさん読むことが大切」と言われてきたが、大量に読むことと読む速さ(流暢さ)の関係を調べた外国語の研究は少なく、あっても研究の組み立てや分析に問題があるものが多かった。日本の学習者は英語を読むのが遅いと言われることが多く、精読(1文ずつ丁寧に訳しながら読む授業)が中心の環境で、多読が本当に速さを伸ばすのかを確かめる必要があった。

どうやって調べた?

日本の大学1年生97名を対象に、1年間の楽しみのための読書(pleasure reading=多読)のプログラムを行った。学生は、精読を中心に学ぶ「精読グループ」と、3つの「多読グループ」に分かれていた。多読グループどうしは、読んだ量などの条件が異なっていた。学年の始めと終わりに、読む速さ(1分間に読める語数)と、読んだ文章の内容理解を測り、グループ間で伸びを比べた。また、やさしく書き直された本(GRなど)と、書き直されていない原書のどちらを読んだかによる違いも分析した。

何がわかった?

1年後、3つの多読グループはいずれも精読グループより読む速さが大きく伸びた。多読グループの中でも、たくさん読んだ2つのグループは、読んだ量が最も少ないグループより伸びが大きかった。多くの学習者にとって「2週間に1冊以上」読むことが、速さを伸ばす最も効果的なペースだった。読解テストの正答率は事前・事後とも高いままで、速く読めるようになったことで理解が犠牲になったわけではなかった。さらに、書き直されていない原書より、やさしく書き直された本を読んだほうが速さの伸びは大きかった。この研究は Jeon & Day (2016) のメタ分析にも含まれており、そこでは効果量(差の大きさを表す数値)が d = 0.93 と計算されている。

  • 3つの多読グループはすべて、精読グループより読む速さが大きく伸びた
  • たくさん読んだ2グループは、読んだ量が最も少ないグループより速さの伸びが大きかった
  • 多くの学習者にとって「2週間に1冊以上」が、速さを伸ばす最も効果的なペースだった
  • 読解の正答率は事前・事後とも高く、速さと理解は両立していた
  • 原書よりも、やさしく書き直された本を読んだほうが速さの伸びが大きかった

主な数字

  • 参加者:日本の大学1年生97名、期間1年
  • 目安:2週間に1冊以上読むのが、多くの学習者にとって最も効果的
  • Jeon & Day (2016) による効果量の計算:d = 0.93

読むときの注意(研究の限界)

対象は1つの大学の1年生で、クラス単位で群が分かれていたため、学生を無作為に振り分けた実験ではない。ここでの説明は抄録と、他の論文(Jeon & Day, 2016)による紹介に基づいており、各グループの人数や伸びた語数などの詳しい数値は本文で確認できなかったため載せていない。読む速さは「やさしい文章」で測っているので、難しい文章でも同じように速くなるかは別の問題である。

多読をする人・教える人へ

日本人学習者の「英語を読むのが遅い」という悩みには、訳しながらの精読よりも、やさしい本の多読が効く。ペースの目安は「2週間に1冊以上」。速く読めるようになっても理解は落ちないので、「速く読む=雑に読む」と心配しなくてよい。また、背伸びして原書を読むより、GRなどやさしく書き直された本をたくさん読むほうが速さは伸びる。原書は、やさしい本で十分に速く読めるようになってからでも遅くない。

今日からできること

  • 自習:「2週間に1冊以上」を最低ラインにして、読み終えた日付を記録する
  • 自習:速さを伸ばしたい時期は、原書よりも楽に読めるGRやレベル別の本を中心にする
  • 授業:精読の授業でも、学期を通して「2週間に1冊」程度の多読課題を並行させる

確認方法:Crossref(書誌・抄録)で確認。効果量は Jeon & Day (2016) 本文の表による(本論文の本文はオープンアクセスでないため未確認)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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