実験・2017年

精読の一部を多読に置き換えるだけで、読解・速さ・語彙がそろって伸びた

Suk, N. (2017). The Effects of Extensive Reading on Reading Comprehension, Reading Rate, and Vocabulary Acquisition. Reading Research Quarterly, 52(1), 73–89 doi:10.1002/rrq.152

読解読む速さ語彙大学生教室での実践

ひとことで言うと:授業時間はそのままで、精読の30分を多読にしたクラスは、読解も速さも単語も比較クラスより伸びた。

対象:韓国の大学生171名(比較クラス2つ88名・多読クラス2つ83名)、15週間の1学期

なぜこの研究?

多読が外国語学習に良い影響を与えるという研究やまとめは多くあったが、その中には研究の組み立てやカリキュラム上の問題を抱えたものも少なくなかった。例えば、比較する群がない、期間が短い、多読以外の条件も違う、などである。そのため「本当に多読の効果なのか」という疑問も残っていた。著者は、条件をきちんとそろえた数少ない研究の一つとして、通常の大学の授業の中で多読の効果を確かめようとした。

どうやって調べた?

韓国で英語を外国語として学ぶ大学生を対象に、既存の4クラスを使った準実験(学生を無作為に振り分けるのではなく、もともとのクラス単位で比べる方法)を行った。比較クラス2つ(88名)は週100分の精読(文章を細かく読み解く授業)を受け、多読クラス2つ(83名)は同じ100分のうち70分を精読、30分を多読にあてた。期間は15週間の1学期で、授業の前後に読解力・読む速さ・語彙の3つを測り、3つをまとめて比べる分析(多変量分散分析)と、それぞれを個別に比べる分析を行った。

何がわかった?

多読クラスは、読解力・読む速さ・語彙の3つを合わせた比較で、比較クラスを統計的に意味のある差で上回った。さらに、3つの力をそれぞれ個別に分析しても、どれについても多読の良い効果が確認された。多読クラスと比較クラスの授業時間の合計は同じなので、「授業時間が多かったから伸びた」という説明は当てはまらない。精読の時間を少し減らして多読にあてても、精読で伸ばすはずの読解力が落ちるどころか、むしろ伸びたことになる。著者は、第二言語のカリキュラムに多読を組み込むことの意義について、指導上の示唆を論じている。

  • 多読クラスは、読解・読む速さ・語彙を合わせた比較で比較クラスを有意に上回った
  • 3つの力を個別に分析しても、どれにも多読の良い効果が確認された
  • 授業時間の合計は同じで、精読100分のうち30分を多読に置き換えただけだった
  • 精読の時間を減らしても、読解力が下がることはなかった

主な数字

  • 比較クラス88名・多読クラス83名(計171名)、期間15週間
  • 多読クラス:週70分の精読+30分の多読(比較クラスは精読100分)

読むときの注意(研究の限界)

既存のクラスを使った準実験で、学生を無作為に振り分けたわけではないため、クラスごとの元の違いが結果に影響した可能性は残る。期間は1学期(15週間)で、効果がその後も続くかはわからない。本文はオープンアクセスでないため、ここでは抄録に基づいて説明しており、読んだ本の量や種類、伸びの具体的な数値(効果量など)は確認できず、載せていない。

多読をする人・教える人へ

授業時間を増やさなくても、精読の一部を多読に置き換えるだけで、読解・速さ・語彙がそろって伸びる。学校の授業に多読を取り入れる現実的なモデルになる。「多読をすると教科書が終わらない」「精読の時間が減ると読解力が落ちる」という心配に対して、むしろ全体として力が伸びたという結果は心強い。毎週決まった時間を多読にあてることが、効果を出すポイントと考えられる。

今日からできること

  • 自習:英語の勉強時間のうち、3割くらいを「楽に読める本を読む時間」にしてみる
  • 授業:週の授業のうち一定時間(例えば1コマの一部)を、毎週必ず多読の時間として確保する
  • 授業:精読教材と多読を並行させ、精読で学んだ表現に多読で再び出会えるようにする

確認方法:Crossref(書誌・抄録)で確認(本文はオープンアクセスでないため未確認)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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