メタ分析・2015年

多読の効果を34研究まとめたメタ分析:中程度の効果がはっきり出た

Nakanishi, T. (2015). A Meta-Analysis of Extensive Reading Research. TESOL Quarterly, 49(1), 6–37 doi:10.1002/tesq.157

読解教室での実践長期

ひとことで言うと:多読の研究34本をまとめて計算し直すと、多読をした人のほうがはっきり読む力が伸びていた。

対象:34研究(博士論文2本+論文32本)、合計3,942名

なぜこの研究?

多読の効果を調べた研究は世界中にあるが、1本1本は人数が少なかったり、期間や対象がばらばらだったりして、「結局、多読はどのくらい効くのか」がわかりにくかった。そこで著者は、複数の研究の結果を1つの物差しにそろえて合計する「メタ分析」という方法で、多読の全体的な効果を確かめようとした。あわせて、学習者の年齢や、多読を続けた期間の長さによって効果が変わるのかも調べ、今後の研究の方向も示そうとした。

どうやって調べた?

複数の検索エンジンや関連する学術誌を手作業・電子検索の両方で調べ、条件に合う研究を集めた。対象にしたのは2種類の研究である。1つは、多読をした群と多読をしなかった群(統制群=比べるための群)を比べる「群間比較」、もう1つは多読をした群だけを対象に、始める前(事前)と後(事後)の成績を比べる「事前・事後比較」である。最終的に博士論文2本と論文32本の計34研究から、43個の効果量を取り出した。効果量とは「どのくらい差があったか」を、テストの種類に関係なく比べられるようにした数値で、ここではd(0.2で小、0.5で中、0.8で大がおおよその目安)が使われている。

何がわかった?

34研究・計3,942名のデータをまとめた結果、多読をした学習者は、しなかった学習者よりも読む力が伸びていた。群間比較の効果量はd = 0.46で「中程度」、事前・事後比較ではd = 0.71とさらに大きかった。群間比較の数値は「同じ期間に別の方法で学んだ人と比べても、多読のほうが伸びた」ことを示しており、多読の効果を考えるうえでより重要な数字である。著者は、これまでの研究全体から見て多読は学習者の読む力を高めるとし、語学のカリキュラムの一部として取り入れるべきだと結論づけている。また、Jeon & Day (2016) の紹介によると、この分析では年齢が高い学習者や期間の長いプログラムで効果が大きい傾向も報告されている。多読研究の「まとめ役」として、その後の研究で何度も引用されている。

  • 多読をした群は、多読をしなかった群より読む力が伸びた(群間比較 d = 0.46、中程度の効果)
  • 多読群の事前→事後の伸びはさらに大きかった(d = 0.71)
  • 集めた研究全体として、多読は読む力を高めると言える結果だった
  • 著者は、多読を語学カリキュラムの一部にすべきだと提言している
  • Jeon & Day (2016) の紹介では、年齢の高い学習者や長期のプログラムで効果が大きい傾向も示された

主な数字

  • 対象:34研究・43効果量・合計3,942名
  • 群間比較の効果量 d = 0.46(中程度)
  • 事前→事後の効果量 d = 0.71

読むときの注意(研究の限界)

メタ分析は元の研究の質に左右される。後の Jeon & Day (2016) は、この分析には「読む本を学習者が自分で選ぶ」という多読の原則を満たさない研究(長い文章を課題として読ませたもの)や、外国語・第二言語としての英語以外を対象にした研究(英語の母語話者やスペイン語学習者の研究)も含まれていたと指摘している。また事前・事後比較の数値には、多読以外の授業や成長による伸びも混ざるため、群間比較の値より大きめに出やすい点に注意が必要である。

多読をする人・教える人へ

「多読は本当に効くの?」という疑問への、もっとも基本的な答えの一つ。1本の研究だけでは偶然の可能性もあるが、34本をまとめても多読をした人のほうが伸びていた。効果は「魔法のように大きい」わけではなく「中くらい」なので、短期間で劇的な変化を期待するより、続けることで差がついていくと考えるのが現実的である。授業や自習に多読を取り入れる根拠として、まず押さえておきたい研究である。

今日からできること

  • 自習:効果は「中くらい」。1〜2か月で判断せず、まずは1学期・半年と期間を決めて続けてみる
  • 自習:やさしい本を選び、読んだ語数や冊数を記録して、続けた量を目に見えるようにする
  • 授業:多読を「余った時間の活動」ではなく、カリキュラムの一部として位置づけ、学期を通して時間を確保する

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認(年齢・期間の傾向は Jeon & Day 2016 の本文中の紹介による)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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