メタ分析・2016年

49研究のメタ分析:多読は大人・EFL環境・授業に組み込んだ形で特に効く

Jeon, E.-Y., & Day, R. R. (2016). The effectiveness of ER on reading proficiency: A meta-analysis. Reading in a Foreign Language, 28(2), 246–265 doi:10.64152/10125/66901

読解読む速さ語彙教室での実践

ひとことで言うと:「本当の多読」の研究だけを集めて計算すると、日本のような外国語環境の大人で特に効果が大きかった。

対象:1980〜2014年の49研究(71サンプル)、合計5,919名

なぜこの研究?

Nakanishi (2015) などのメタ分析で多読の効果は示されていたが、その中には「長い文章を課題として読ませただけ」の研究など、多読の原則に合わないものも混ざっていた。また、図書の数、紙かウェブか、授業への組み込み方など、実際に多読を始める先生が知りたい条件はほとんど調べられていなかった。そこで著者らは、多読らしい条件を満たす研究だけに絞り直し、どんな条件で効果が大きくなるのかを詳しく調べた。

どうやって調べた?

ERIC などのデータベース、主要な応用言語学の学術誌7誌、多読財団の約500件の文献リストを調べた。採用条件は、Day & Bamford (2002) の原則のうち「やさしい本」「学習者が自分で選ぶ」「できるだけたくさん読む」「一人で黙って読む」「教師が導く」を満たすこと。そのうえで、多読群と統制群(比べるための群)を比べた32研究51サンプルと、事前・事後を比べた17研究20サンプルを分析した。効果量(差の大きさを共通の物差しで表した数値)d を計算し、発表年代、ESL/EFL、年齢、図書の数、期間、紙かウェブか、授業での位置づけ、測った力(読解・読む速さ・語彙)ごとに比べた。

何がわかった?

多読群と統制群を比べた全体の効果量は d = 0.57(95%信頼区間 0.46〜0.68)で、平均すると多読群の学習者は統制群の72パーセンタイル(100人中下から72番目)の位置にあたった。事前・事後の比較では d = 0.79 だった。条件別では、大人(d = 0.70)が子ども(0.52)や中高生(0.35)より大きく、英語を外国語として学ぶEFL環境(0.65)が、英語が日常で使われるESL環境(0.38)より大きかった。ウェブ上の読み物(0.89)は紙の本(0.47)より大きく、カリキュラムの一部として行った多読(0.91)が最も効果が大きかった。一方、図書の数や期間の長さでは統計的に意味のある差はなかった。測った力別では読む速さ(0.83)が最も大きかったが、この差も有意ではなかった。

  • 多読群は統制群より読む力が伸びた(d = 0.57、小〜中程度)。事前→事後では d = 0.79
  • 大人 d = 0.70、子ども 0.52、中高生 0.35 と、年齢によって効果に差があった
  • EFL環境(0.65)のほうがESL環境(0.38)より効果が大きかった。日本のような環境でも多読は十分に効く
  • カリキュラムの一部として行った多読が最も効果が大きく(0.91)、ウェブの読み物(0.89)も紙の本(0.47)より大きかった
  • 図書の数(小・中・大)や期間(短・中・長)による差は統計的に有意ではなかった

主な数字

  • 多読群と統制群の比較:d = 0.57(95%信頼区間 0.46〜0.68)、事前→事後:d = 0.79
  • 年齢別:大人 d = 0.70/子ども d = 0.52/中高生 d = 0.35
  • EFL環境 d = 0.65、ESL環境 d = 0.38
  • ウェブの読み物 d = 0.89、紙の本 d = 0.47/カリキュラムの一部 d = 0.91、課外活動 d = 0.67
  • 測った力別:読む速さ d = 0.83、読解 d = 0.54、語彙 d = 0.47(この差は有意ではない)

読むときの注意(研究の限界)

著者ら自身が、分析した研究の多くがアジア太平洋地域(日本・台湾・韓国など)のもので、1年を超える長期研究や子どもを対象にした研究が少ないことを限界として挙げている。また、ウェブの読み物(10サンプル)や「課外活動」「独立した多読コース」(各1研究)など、研究数が少ない条件の数値は、偶然の影響を受けやすいので慎重に読む必要がある。中高生で効果が小さかった理由も、テスト中心の学校の事情などの推測にとどまっている。

多読をする人・教える人へ

日本のような「英語を外国語として学ぶ環境」でこそ多読の効果が出やすいことを示す結果である。図書の数で効果に差がなかったことから、大きな図書室がなくても小規模に始められるし、ウェブの読み物を使う方法も有望である。また、学校では「やりたい人だけの課外活動」にとどめず、正式なカリキュラムの一部として位置づけるほうが効果が大きい。中高生で効果が小さめなのは、成績に直結しないと読む気になりにくいためかもしれず、評価への組み込み方も工夫したい。

今日からできること

  • 自習:本がたくさん手元になくても大丈夫。無料のウェブの読み物やこのサイトの作品を活用して読む量を確保する
  • 自習:読む速さは最も伸びやすい力。ときどき1分間に読めた語数を測って、伸びを確かめる
  • 授業:多読を課外の「おまけ」ではなく、授業や評価の中に正式に位置づける
  • 授業:図書の数が少なくても始められる。まずは学級文庫やオンライン教材で小さく始める

確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(方法・結果の表・考察)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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