多読指導の10原則:やさしい本を、自分で選んで、できるだけたくさん
Day, R. R., & Bamford, J. (2002). Top Ten Principles for Teaching Extensive Reading. Reading in a Foreign Language, 14(2), 136–141 doi:10.64152/10125/66761
ひとことで言うと:多読で大切なのは、やさしい本を、自分で選んで、楽しみながらたくさん読むこと。先生も読書の手本になる。
対象:実験ではなく、多読指導の考え方を10の原則として示した論文
なぜこの研究?
1986年に Williams が、精読を中心とした外国語の読解指導の「10原則」を示し、先生たちが自分の考えを見直すきっかけを作った。著者らは、同じ形で多読についての10原則を示そうとした。多読は語学力や読解力を伸ばすだけでなく、外国語で読むことを好きになる「鍵」になりうる。読むことが嫌いな学生に読解の技術だけを教えるのは、水が嫌いな人に泳ぎ方を教えるようなものだと著者らは述べている。
どうやって調べた?
新しいデータを集めた研究ではなく、多読の本質と、成功に必要な条件・方法を10の原則にまとめた論文である。この原則は、著者らの本(Day & Bamford, 1998)で最初に示されたものを、改訂・拡充したものである。それぞれの原則について、先行研究や第一言語の読書研究、実践者の言葉を引きながら、なぜそれが大切なのかを説明している。著者らは、先生がこの原則を使って、読むことや多読についての自分の考えと、自分の教え方を見直すよう勧めている。
何がわかった?
10の原則は次のとおりである。①読む本はやさしい(初級者なら1ページに知らない語が1〜2語まで、中級者なら5語まで)。②多様なテーマ・種類の本を用意する。③学習者が読みたい本を自分で選ぶ(合わなければやめてよい)。④できるだけたくさん読む(最低でも週1冊が目安)。⑤読む目的は楽しみ・情報・大まかな理解で、100%の理解は目指さない。⑥読むこと自体が報酬で、読後に理解度テストは基本的に行わない。⑦読む速さはゆっくりより速め(辞書はなるべく使わず、知らない語は推測するか飛ばす)。⑧一人で黙って、自分のペースで読む。⑨先生は多読の目的や方法を説明し、読書の記録を見ながら導く。⑩先生自身が読書の手本になる。著者らは、易しい教材は「本物の英文に慣れさせる」という目的と矛盾しないとし、やさしい本こそが本物の英文へ進むための階段だと述べている。
- やさしい本:初級者なら1ページに知らない語1〜2語まで、中級者なら5語まで
- 学習者が自分で選び、合わない本はやめてよい
- できるだけたくさん読む:最低でも週1冊が目安
- 目的は楽しみ・情報・大まかな理解で、読後の理解度テストは基本的に行わない
- 先生は導き手であり、自身が読書の手本となる
主な数字
- 原則は全10項目
- 知らない語の目安:初級者は1ページ1〜2語まで、中級者は5語まで
- 読書量の目安:最低でも週1冊
読むときの注意(研究の限界)
実験やデータに基づく研究ではなく、著者らの経験と先行研究から導いた指針である。そのため、例えば「読後に理解度の質問をしない」「辞書を使わない」といった原則は、Nation (2015) が辞書の使用を勧めているように、他の研究者とは考え方が異なる部分もある。実際の授業では、成績評価や時間の制約などに合わせて、原則を柔軟に当てはめる必要がある。
多読をする人・教える人へ
多読がうまくいかないときは、この10原則に照らして見直すとよい。特に「本がやさしいか」「自分で選んでいるか」「楽しんでいるか」は、自習でも最も大切なチェックポイントである。先生にとっては、テストや課題で管理しすぎず、学習者が自分の読書体験を持てるようにすることが大切で、先生自身が英語の本を読み、生徒と本の話をすることも、多読を広める力になる。多読の研究でもこの原則が「多読らしさ」の基準として使われている(Jeon & Day, 2016 など)。
今日からできること
- 自習:1ページに知らない語が5つを超える本は、迷わずレベルを下げる
- 自習:つまらない本は途中でやめて、別の本に替える
- 授業:多読の時間は理解度テストを行わず、感想を一言共有する程度にとどめる
- 授業:先生も生徒と同じ時間に英語の本を読み、おすすめの本を紹介する
確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(10原則の本文と注)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
関連する研究
多読を世界に広めた古典:「苦労せずに読む力を得る」ための教室づくり
Day, R. R., & Bamford, J. (1998)
全238頁(Cambridge University Press, 1998)
メタ分析201649研究のメタ分析:多読は大人・EFL環境・授業に組み込んだ形で特に効く
Jeon, E.-Y., & Day, R. R. (2016)
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