書籍・2020年

多読の研究と実践をまるごと解説:ネーションとウェアリングによる教科書

Nation, I. S. P., & Waring, R. (2020). Teaching Extensive Reading in Another Language. Routledge doi:10.4324/9780367809256

教室での実践Graded Readers語彙読む速さ動機づけ

ひとことで言うと:多読の研究と、授業での始め方・続け方を1冊にまとめた、多読を教えたい先生向けの本。

対象:実験研究ではなく、多読の研究と実践を総合的にまとめた教員・研究者向けの本(全13章)

なぜこの研究?

多読の研究はこの数十年で大きく増え、語彙の学習、読む速さ(流暢さ)、動機づけなど、さまざまな面で知見が積み重なってきた。しかし、それらを整理し、実際に授業で多読を始めたい先生にもわかる形でまとめた本は多くなかった。語彙研究の第一人者であるネーションと、GRや多読研究で知られるウェアリングが、最新の研究成果と、多読プログラムの立ち上げ方・運営方法を1冊にまとめた。

どうやって調べた?

新しいデータを集めた研究ではなく、多読についての研究と実践を総合的に解説した本である。全13章で構成され、多読をシンプルに考えることから始まり、GRとは何か、多読プログラムの事例、プログラムの立ち上げ方と運営、多読から語彙が身につく仕組み、外国語の多読についての重要な研究、研究の知見、語彙学習の研究、読む流暢さの育て方、多読研究のデザインの仕方、良いGRシリーズの条件、そして今後の展望を扱っている。教員を目指す学生や現職の英語教師、研究者を主な読者としている。

何がわかった?

出版社の紹介によれば、本書は第二言語・外国語の文脈での多読のあらゆる側面を扱い、動機づけ、読む流暢さ、語彙学習などに関する最新の研究成果を紹介する、この分野の大きなアップデートとなる本である。事例研究、多読を教室で効果的に行い評価するための方法や手順、教師のための資料や道具も含まれている。章立てを見ると、前半は「多読をシンプルに保つ」「GRとは何か」「プログラムの事例」「どうやって立ち上げ、運営するか」と実践的な内容が中心で、中盤は語彙学習と主要な研究、後半は流暢さの育成、研究のデザイン、良いGRシリーズの条件と、研究と教材づくりにまで広がっている。この研究ライブラリーで紹介した研究の多くが、この本の中で実践の文脈に位置づけられている。なお、日本語訳『言語教育における多読』(くろしお出版、2023年)も出ている。

  • 多読を「シンプルに保つ」ことから始め、GRの役割と選び方を解説している
  • 多読プログラムの事例と、立ち上げ・運営の具体的な方法を示している
  • 多読から語彙が身につく仕組みと、関連する主要な研究を整理している
  • 読む流暢さの育て方、研究のデザイン、良いGRシリーズの条件まで扱っている

主な数字

  • 全13章
  • 日本語訳:『言語教育における多読』くろしお出版、2023年

読むときの注意(研究の限界)

研究書であると同時に著者らの立場を示す解説書でもあり、例えば辞書の使い方などでは、他の多読推進者と考え方が異なる部分もある。本文はオープンアクセスでないため、ここでの説明は出版社の内容紹介と、Crossrefに登録された各章のタイトルに基づいており、各章の具体的な主張や数値は載せていない。Crossrefでは電子版の発行日(2019年11月20日)で登録されているが、図書館の書誌(CiNii Books)では2020年刊行とされている。

多読をする人・教える人へ

多読を本格的に指導したい先生、研究の全体像を知りたい人に最適な一冊である。この研究ライブラリーで紹介した研究の多くが、実践の文脈の中で整理されている。英語で読むのが大変なら、日本語訳から読むこともできる。多読プログラムを立ち上げるときの手順や、良いGRの見分け方を知りたいときに、手元に置いて参照したい。

今日からできること

  • 授業:多読を始める前に、プログラムの立ち上げ方と運営の章を読んで計画を立てる
  • 授業:本をそろえるときは、良いGRシリーズの条件を参考に選ぶ
  • 自習:多読の研究を深く知りたくなったら、日本語訳『言語教育における多読』から読んでみる

確認方法:Crossref(書誌・各章タイトル)+OpenAlexの内容紹介+CiNii Books(Routledge, 2020/日本語訳 くろしお出版, 2023)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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