GRを1冊読んで覚える新出語はわずか:3か月後に意味を言えたのは25語中1語ほど
Waring, R., & Takaki, M. (2003). At what rate do learners learn and retain new vocabulary from reading a graded reader?. Reading in a Foreign Language, 15(2), 130–163 doi:10.64152/10125/66776
ひとことで言うと:やさしい本を1冊読んでも、新しい単語はほとんど残らない。何度も出会うためにたくさん読むことが必要。
対象:西日本の大学の19〜21歳の女子学生15名(中級手前以上、英語クラブ所属が中心)
なぜこの研究?
「多読をすれば単語が自然に身につく」とよく言われるが、実際に1冊読むとどれだけの新しい語を覚え、どれだけ忘れるのかは、はっきりしていなかった。それまでの研究の多くは、選択式テストで直後だけを測っていたため、学習量を多めに見積もっている可能性があった。そこで著者らは、文章中に出てくる回数を変えた語を使い、直後から3か月後までの記憶の変化を、難しさの異なる3種類のテストで追った。
どうやって調べた?
Oxford Bookworms レベル1(400見出し語)の『A Little Princess』(全5,872語)を使った。本文中の25語(名詞・形容詞)を、house→windle のような英語らしい架空の綴りに置き換え、確実に「初めて見る語」にした。25語は出現回数で5グループ(15〜18回、13〜14回、8〜10回、4〜5回、1回)に分けた。参加者は辞書なしで「いつもどおり楽しんで読む」よう指示され、読後すぐ、約1週間後、約3か月後(予告なし)に、①見た語かどうかを答える綴りのテスト、②意味を日本語で書くテスト、③4択の意味テストを受けた。
何がわかった?
参加者は平均56.3分(毎分約105語)で本を読み終え、難しくはなかったと答えた。読後すぐの段階で、意味を日本語で書けたのは25語中平均4.6語、4択なら10.6語だった。しかし3か月後には、意味を書けたのは平均0.9語、4択でも6.1語まで減った。出会う回数が多い語ほど覚えやすく、忘れにくかったが、8回未満しか出会わなかった語は、意味を書くテストではほぼゼロだった。著者らは、1冊のGRから新しく身につく語はごくわずかで、覚えた語の半分ほどはすぐ失われると結論づけた。また、選択式テストだけで直後に測った研究は学習量を過大に見積もっていた可能性が高いと指摘した。一方で、GRを読む価値は新出語の獲得だけではなく、すでに知っている語や表現の知識を深め、確かなものにする点にあるとも述べている。
- 読後すぐに意味を書けたのは25語中平均4.6語。3か月後には平均0.9語に減った
- 4択テストでは直後10.6語→3か月後6.1語と、テストの形式で「覚えた量」が大きく変わった
- 出会う回数が多い語ほど覚えやすく、忘れにくかった
- 8回未満しか出会わなかった語は、3か月後に意味を書けた例がほぼなかった
- GRの価値は、新出語よりも、すでに知っている語や表現を深め定着させる点にあると著者らは考えた
主な数字
- 使用した本:400見出し語レベルのGR(全5,872語)、置き換えた語25語
- 読書時間:平均56.3分(毎分104.8語)
- 意味を書くテスト:直後 平均4.6語 → 1週間後 1.9語 → 3か月後 0.9語(25語中)
- 4択テスト:直後 10.6語 → 3か月後 6.1語
- 8回未満しか出会わなかった語は、意味を書くテストでほぼゼロ
読むときの注意(研究の限界)
参加者は15名(3か月後は14名)と少なく、ほとんどが英語クラブに所属する女子学生だった。読んだのはGR1冊だけで、ふだんの多読のように多くの本で同じ語に何度も出会う状況ではない。置き換えた語は意味自体はよく知っている基本語(家、顔など)で、本当に新しい概念を学ぶ場合とは条件が違う。テストは文脈なしの単語テストで、読むときに「わかる」程度の知識は測れていない可能性がある。
多読をする人・教える人へ
1冊読んだだけで単語がどんどん増えると期待するのは禁物である。同じ語に何度も(少なくとも8回以上)出会うためには、何冊も続けて読む「大量の」多読が必要になる。逆に言えば、多読はすぐに目に見える単語数の増加より、知っている語を速く確実に理解できるようにする効果が大きい。新しい語を確実に覚えたいときは、多読に加えて単語学習を並行させるのが現実的である。
今日からできること
- 自習:1冊ごとの「覚えた単語数」を気にしない。何冊も読み続けて、同じ語に何度も出会うことを目標にする
- 自習:同じシリーズ・同じレベルの本を続けて読むと、同じ語に繰り返し出会いやすい
- 授業:GRを「たまに読ませる補助教材」にせず、継続的に大量に読む仕組みを作る
確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(方法・結果の表・結論)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
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