実験・2015年

音声付きGRを10冊聞き読み:何冊も読むと単語は大きく伸びる

Webb, S., & Chang, A. C.-S. (2015). Second language vocabulary learning through extensive reading with audio support: How do frequency and distribution of occurrence affect learning?. Language Teaching Research, 19(6), 667–686 doi:10.1177/1362168814559800

語彙聞き読みGraded Readers教室での実践

ひとことで言うと:音声を聞きながらやさしい本を10冊読んだクラスは、知っている単語がはっきり増え、3か月後も多くが残っていた。

対象:台湾の高校1年相当(15〜16歳)の82名:多読クラス61名・比較クラス21名、約13週間

なぜこの研究?

読書で単語を自然に覚える研究の多くは、1つの文章を読んだ後の学習量を測っていた。そうした研究では覚えられる語は少なく、「多読で語彙は増えにくい」という印象につながっていた。しかし、実際の多読では何冊も続けて読み、同じ語に別の本でも出会う。そこで著者らは、複数の本を続けて読む実際に近い多読で語彙がどれだけ伸びるか、また語の出現回数や「何冊に出てくるか」が学習とどう関係するかを調べた。

どうやって調べた?

台湾の中等学校の2クラスを、多読クラス(61名)と比較クラス(21名)に割り当てた。多読クラスは週4時間の英語の授業を使い、Oxford Bookworms レベル1のGR10冊(計56,188語)を、プロの朗読音声を聞きながら週1冊ずつ全員で読んだ。辞書の使用や読後の自由な話し合いも認められた。比較クラスは教科書中心の文法・形式重視の授業を受けた。10冊の中から無作為に選んだ100語について、中国語の意味を選ぶテストを、事前・10冊読了後・その3か月後に行った。伸びは、事前に知らなかった語のうち何%を新たに知ったかという「相対的な伸び」で計算した。

何がわかった?

多読クラスの得点は、事前の100語中49.66語から、10冊読了後には69.34語へと平均19.68語増え、統計的に意味のある伸びだった。事前に知らなかった語のうち新たにわかるようになった割合(相対的な伸び)は44.06%で、3か月後も36.66%を保っていた。比較クラスの伸びは5.19%で、統計的に意味のある差ではなかった。1冊だけを読む実験より、ずっと大きな学習量である。一方で、語の出現回数や出てくる本の数と、覚えやすさとの関係は統計的に意味のあるものではなかった。著者らは、音声の助け、辞書の使用、読後の話し合いなども学習に影響したと考えられ、出現回数は多くの要因の一つにすぎないと述べている。

  • 多読クラスは100語中49.66語→69.34語と、平均19.68語増えた
  • 相対的な伸びは10冊読了後44.06%、3か月後も36.66%と、多くが保たれていた
  • 教科書中心の比較クラスの伸びは5.19%で、有意な変化はなかった
  • 語の出現回数や出てくる本の数と、学習との関係は有意ではなかった

主な数字

  • 多読クラス61名・比較クラス21名、GR10冊(計56,188語)を約13週間で
  • 100語テスト:事前49.66語 → 読了後69.34語(平均+19.68語)
  • 相対的な伸び:読了後44.06%、3か月後36.66%
  • 比較クラスの相対的な伸び:5.19%

読むときの注意(研究の限界)

測ったのは単語を見て意味を選べるかという受容的な知識だけで、使える知識は測っていない。音声付きで読んでいるので、文字だけの多読にそのまま当てはまるとは限らない。全員が同じ本を読んだため、学習者が自分で本を選ぶ多読とは条件が違う。さらに、多読クラスはもともと語彙テストの得点が比較クラスより高かった。著者ら自身もこれらを限界として挙げている。

多読をする人・教える人へ

1冊だけでは単語はあまり残らないが、何冊も続けて読む(聞く)と語彙はしっかり伸びる。音声付きの本をシリーズで続けて読むのは、語彙を増やす現実的な方法である。また、読むだけでなく、辞書で確かめたり、読んだ話について話し合ったりすることも、単語を覚える助けになっていると考えられる。授業の時間を使って全員で同じ本を聞き読みする形でも、十分な効果が期待できる。

今日からできること

  • 自習:音声付きのGRを、同じシリーズ・同じレベルで10冊続けて読むことを目標にする
  • 自習:読み終えた後に、気になった語を辞書で確かめる・あらすじを誰かに話す
  • 授業:週1回、授業時間に全員で同じGRを音声に合わせて読み、読後に登場人物や結末について話し合う

確認方法:Crossref(書誌・抄録)+ウェスタン大学リポジトリ公開の著者原稿(方法・結果・限界)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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