実験・2014年

リスニングの流暢さは「聞きながら読む」グループが最も安定して伸びた

Chang, A. C.-S., & Millett, S. (2014). The effect of extensive listening on developing L2 listening fluency: some hard evidence. ELT Journal, 68(1), 31–40 doi:10.1093/elt/cct052

リスニング聞き読みGraded Readers教室での実践

ひとことで言うと:やさしい本10冊を「聞きながら読んだ」グループが、リスニングで一番安定して伸びた。

対象:英語学習者の3グループ(読むだけ/聞きながら読む/聞くだけ)、期間13週間

なぜこの研究?

リスニングの「流暢さ」とは、ふつうの速さの英語を1回聞いただけで、楽に意味をつかめる力のことである。多読と同じように「たくさん聞く(多聴)」ことがこの力を育てると考えられてきたが、それを数字ではっきり示した研究は少なかった。また、同じ本を使うなら「読むだけ」「聞きながら読む」「聞くだけ」のどれがリスニング力に効くのかも、よくわかっていなかった。題名の「some hard evidence(確かな証拠)」は、この点を実験で示そうとしたことを表している。

どうやって調べた?

レベル1のGR(音声付き)10冊をもとに、リスニングの流暢さを測る問題を2,064問作った。学習者を3つのグループに分け、13週間かけて同じ10冊を学ばせた。グループごとに方法が違い、「読むだけ」「音声を聞きながら読む」「聞くだけ」のいずれかで本に取り組んだ。学習の前に事前テスト(60問)、学習後に3つの文章からなる事後テスト(180問)を行った。テストの文章はすべて同じ話す速さで流され、聞けるのは1回だけだった。

何がわかった?

事後テストの結果、「聞きながら読む」グループが、「読むだけ」「聞くだけ」のグループと比べて、最も安定して統計的に意味のある伸びを示した。つまり、同じ本・同じ期間でも、文字と音声を同時に使う方法が、1回で聞き取る力を伸ばすのに最も効果的だった。「聞くだけ」は一見リスニング練習に最も近いように思えるが、初級レベルの学習者にとっては、文字の助けがあるほうが、音と単語・意味の結びつきを作りやすいと考えられる。テストに使った文章はどれも同じ速さで1回しか流されなかったため、「ゆっくり何度も聞けばわかる」ではなく「ふつうに1回聞いてわかる」力が伸びたことになる。著者らは、この結果が外国語のリスニングの流暢さを育てる方法に示唆を与えると述べている。

  • 3つの方法の中で「聞きながら読む」グループが最も安定して有意に伸びた
  • 「読むだけ」「聞くだけ」のグループは、聞き読みグループほど一貫した伸びを示さなかった
  • 1回だけ、同じ速さで聞かせるという厳しい条件のテストでも、聞き読みの効果が見られた
  • やさしいGRの音声を使った多聴が、リスニングの流暢さを育てる手段になりうることが示された

主な数字

  • 使用教材:レベル1のGR10冊、期間13週間
  • 作成した問題バンク:2,064問
  • 事前テスト60問、事後テスト180問(3つの文章、1回だけ聞く)

読むときの注意(研究の限界)

ここでの説明は抄録に基づいている。本文はオープンアクセスでないため、各グループの人数、学習者の国や年齢、伸びの具体的な数値は確認できず、載せていない。3つの方法の違いは「最も安定して有意」という形で示されており、どのくらいの差があったのかは本文で確かめる必要がある。使ったのはレベル1のやさしいGRだけで、上のレベルで同じ結果になるかはわからない。

多読をする人・教える人へ

リスニング力を伸ばしたいときは、いきなり「聞くだけ」にするより、音声付きのやさしい本で「文字を追いながら聞く」ほうが効果的である。聞き読みで音と文字の結びつきができると、文字なしでも聞き取れるようになっていく。多読用の本に音声が付いていれば、読む練習とリスニングの練習を同時にできる。授業でも、GRの音声をテキストと一緒に使うことで、リスニングの時間を無理なく増やせる。

今日からできること

  • 自習:音声付きのやさしい本を選び、文字を目で追いながら聞く。慣れたら同じ本を音声だけで聞いてみる
  • 自習:スピードは自然な速さのまま、1回で理解できるレベルの本を選ぶ
  • 授業:授業の最初の10分を「聞き読みタイム」にして、全員で音声付きGRを読み進める

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認(本文はオープンアクセスでないため未確認)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

関連する研究