「読む」「聞き読み」「聞くだけ」で単語の覚え方を比較:聞くだけでは残らない
Brown, R., Waring, R., & Donkaewbua, S. (2008). Incidental vocabulary acquisition from reading, reading-while-listening, and listening to stories. Reading in a Foreign Language, 20(2), 136–163 doi:10.64152/10125/66816
ひとことで言うと:物語を読む・聞きながら読むと少し単語を覚えられたが、聞くだけではほとんど覚えられなかった。
対象:九州の私立大学で英文学を学ぶ18〜21歳の学生35名(初中級〜中級、TOEFL平均450前後)
なぜこの研究?
多読で単語が自然に身につくことは知られていたが、「聞く」ことからどれだけ単語を学べるのか、また「音声を聞きながら読む」と読むだけより覚えやすいのかは、ほとんど調べられていなかった。音声付きのGRが増え、多聴(たくさん聞くこと)も注目されるなかで、3つの方法を同じ条件で比べる必要があった。この研究は、Waring & Takaki (2003) の方法を発展させたものである。
どうやって調べた?
Oxford Bookworms の400見出し語レベルの物語3冊(『The Elephant Man』など)を使い、各冊の28語(名詞・形容詞)を、英語らしい架空の綴りに置き換えた。参加者は3つのグループに分かれ、本を替えながら「読むだけ」「音声を聞きながら読む」「聞くだけ(挿絵つき、毎分約93語の朗読で約1時間)」の3つの方法をすべて体験した。辞書やメモは禁止で、物語を楽しみながら語の意味を推測するよう指示された。読後(聞いた後)すぐ、1週間後、3か月後(いずれも予告なし)に、意味を日本語で書くテストと4択テストを行った。
何がわかった?
直後のテストで意味を日本語で書けたのは、28語中、聞きながら読む方法で平均4.39語、読むだけで4.10語、聞くだけでは0.56語だった。4択テストではそれぞれ13.31語、12.54語、8.20語と多くなり、テストの形式によって「覚えた量」の見え方が大きく変わった。どの方法でも新しい語を自然に覚えることはできたが、大部分の語は覚えられなかった。また、文中に多く出てくる語ほど覚えやすく、忘れにくかった。3か月後に、ヒントなしで意味を思い出せたのは、読む系の2つの方法では平均1語ほど、聞くだけではほぼゼロだった。著者らは、選択式テストの結果からは部分的な知識がかなり得られていることがうかがえ、多読・多聴の本当の価値は、語のつながり(コロケーション)や理解の速さなど、単語テストでは測れない部分にある可能性が高いと述べている。
- 直後に意味を書けたのは、聞き読み4.39語・読むだけ4.10語・聞くだけ0.56語(28語中)
- 4択テストでは13.31語・12.54語・8.20語と多くなり、部分的な知識はかなり得られていた
- 文中に多く出てくる語ほど覚えやすく、忘れにくかった
- 3か月後、ヒントなしで意味を思い出せたのは、読む系の方法で平均約1語、聞くだけではほぼゼロ
- 聞くだけで新しい語を学ぶのは、初中級の学習者にはとても難しかった
主な数字
- 参加者35名、物語3冊×置き換えた語28語
- 直後の意味テスト:聞き読み 4.39語/読むだけ 4.10語/聞くだけ 0.56語(28語中)
- 直後の4択テスト:13.31語/12.54語/8.20語
- 3か月後(ヒントなしの再生):読む系 平均約1語、聞くだけ ほぼゼロ
読むときの注意(研究の限界)
最初68名で始めたが、全データがそろったのは35名で、人数が少ない。対象は日本人学習者だけで、各方法で触れた英語は平均5,567語とGR1冊分にすぎない。著者らも、もっと長い・多くの文章で調べるべきだと述べている。聞くだけの条件は、初めて長い朗読を約1時間聞くという負担の大きい設定で、慣れた学習者や音声に強い学習者では結果が違う可能性がある。
多読をする人・教える人へ
初級〜中級の段階で、音声だけから新しい単語を覚えるのは難しい。音声を使うなら、まずは「文字を見ながら聞く」聞き読みが基本になる。聞き読みは、読むだけと同じくらい単語を学べるうえ、音と文字を結びつける練習にもなる。どの方法でも、1冊だけでは定着する語は少ないので、同じ語に何度も出会えるだけの量を読む(聞く)ことが大切である。
今日からできること
- 自習:音声付きの本は、まず文字を目で追いながら聞く。聞くだけにするのは、聞き読みで内容がわかった本から
- 自習:1冊で単語が増えなくても気にせず、同じレベルの本を何冊も続けて読む・聞く
- 授業:リスニング教材としてGRの音声を使うときは、最初はテキストを見せて聞かせる
確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(方法・結果の表・限界・結論)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
関連する研究
GRを1冊読んで覚える新出語はわずか:3か月後に意味を言えたのは25語中1語ほど
Waring, R., & Takaki, M. (2003)
使用した本:400見出し語レベルのGR(全5,872語)、置き換えた語25語
実験2014リスニングの流暢さは「聞きながら読む」グループが最も安定して伸びた
Chang, A. C.-S., & Millett, S. (2014)
使用教材:レベル1のGR10冊、期間13週間
実験2015音声付きGRを10冊聞き読み:何冊も読むと単語は大きく伸びる
Webb, S., & Chang, A. C.-S. (2015)
多読クラス61名・比較クラス21名、GR10冊(計56,188語)を約13週間で
実験20061か月の多読で、対象語の約3分の2の知識が深まった:特に綴りがよく伸びる
Pigada, M., & Schmitt, N. (2006)
対象語133語のうち65%で知識が向上(約1.5語に1語)