1か月の多読で、対象語の約3分の2の知識が深まった:特に綴りがよく伸びる
Pigada, M., & Schmitt, N. (2006). Vocabulary acquisition from extensive reading: A case study. Reading in a Foreign Language, 18(1), 1–28 doi:10.64152/10125/66611
ひとことで言うと:やさしい本を1か月読んだら、意味だけでなく綴りや使い方も含め、単語の知識が少しずつ育っていた。
対象:フランス語を学ぶ27歳の学習者1名(母語はギリシャ語、英国在住の大学院生、中級手前)、1か月
なぜこの研究?
読書から語彙が自然に身につくことは示されてきたが、その量は「12語に1語」程度と少ないとされていた。しかし、それまでの研究の多くは短い文章を1つ読ませただけで、測ったのも「意味がわかるか」だけ、少しでもわかるようになった部分的な学習は数えていなかった。著者らは、実際の多読に近い条件で、意味だけでなく綴りや文法的な使い方まで、語の知識がどう伸びるかを細かく調べた。
どうやって調べた?
フランス語学習者1名が、学習者向けの読みものシリーズ(レベル1、400〜700語レベル)17冊の中から興味のある4冊(計約3万語)を自分で選び、約1か月、週1冊のペースで読んだ。読む前と後に、本に出てくる133語(名詞と動詞)について、1対1の面接で、①聞いて正しく綴れるか、②意味を言えるか、③文法的な使い方(名詞なら男性・女性の冠詞、動詞ならつながる前置詞)を知っているかを詳しく測った。語は本の中に出てくる回数(1回、2〜3回…20回以上)ごとに分け、出会った回数と学習の関係も見た。
何がわかった?
1か月の多読で、対象語133語の65%(約3分の2)について、綴り・意味・文法のどれかの知識が伸びていた。「1.5語に1語」の割合で何かを学んだことになり、それまでの研究が示した学習量よりずっと多かった。最も伸びたのは綴りで、正答率は36.8%から59.8%に上がり、1回しか出会わなかった語でも伸びが見られた。意味は8.3%から23.7%、名詞の性(冠詞)は12.9%から42.9%、動詞と組む前置詞は4.0%から20.6%と、伸びはしたが綴りほどではなかった。意味は、1〜3回しか出会わなかった語ではほとんど学ばれず、20回以上出会っても意味がわからない語もあった。3つの知識すべてが伸びた語は6%にとどまった。著者らは、多読は語彙の知識を少しずつ育てるが、知識の種類によって伸び方が違うため、意図的な学習で補うとよいと述べている。
- 対象語133語の65%で、綴り・意味・文法のどれかの知識が伸びた(約1.5語に1語)
- 綴りが最も伸び(36.8%→59.8%)、1回しか出会わなかった語でも伸びた
- 意味(8.3%→23.7%)や文法的な使い方も伸びたが、綴りほどではなかった
- 1〜3回しか出会わない語の意味はほとんど学ばれず、20回以上出会っても意味がわからない語もあった
- 3つの知識がすべて伸びた語は6%で、多読の後に意図的な学習で補う意味がある
主な数字
- 対象語133語のうち65%で知識が向上(約1.5語に1語)
- 読んだ量:GR4冊・約3万語、期間約1か月
- 綴り:36.8% → 59.8%/意味:8.3% → 23.7%
- 名詞の性(冠詞):12.9% → 42.9%/動詞の前置詞:4.0% → 20.6%
読むときの注意(研究の限界)
参加者は1名だけの事例研究で、英語を流暢に話す大学院生という、言語学習に慣れた人だった。言語は英語ではなくフランス語である。面接による測定は詳しい反面、評価者が1人で、評価の一致度を確かめられていない。1か月後の遅延テストはなく、伸びた知識がどれだけ残るかはわからない。綴りのテストは聞いて書く形式で、フランス語の綴りの規則性も結果に影響した可能性がある。
多読をする人・教える人へ
「意味を言えるか」だけで測ると見えにくいが、多読では単語の綴りや使い方の知識が少しずつ育っている。すぐに覚えられなくても、出会うたびに知識が深まっていると考えてよい。ただし、意味を確実に覚えるには何度も出会う必要があり、何度出会っても覚えにくい語もある。気になった語は、読んだ後に辞書や単語カードで確認する「意図的な学習」を組み合わせると、多読の効果をさらに生かせる。
今日からできること
- 自習:単語テストで点が上がらなくても気にしない。多読では綴りや使い方の知識が少しずつ育っている
- 自習:何度も出てくるのに意味があいまいな語は、読み終えてから辞書で確認して単語カードにする
- 授業:多読の後に、本に出てきた語を使って短い文を書く活動を入れ、使い方の知識を固める
確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(方法・結果・考察・結論)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
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