自分で選んだ本を読む多読でも、語彙は予想以上に伸びた:新しい測り方の提案
Horst, M. (2005). Learning L2 Vocabulary through Extensive Reading: A Measurement Study. The Canadian Modern Language Review, 61(3), 355–382 doi:10.3138/cmlr.61.3.355
ひとことで言うと:一人ひとりが好きな本を読む多読でも、読んだ本に出てきた単語をしっかり覚えていたことがわかった。
対象:第二言語として英語を学ぶ(ESL)学習者21名(読む本は各自が自由に選択)
なぜこの研究?
多くの語学コースでは、レベル別のやさしい本(GRなど)をたくさん読む多読が取り入れられ、語彙が大きく伸びることが期待されている。しかし、多読の効果を調べた研究の多くは全体的な英語力の伸びを測っており、語彙の伸びを調べたものは少なかった。特に、学習者が自由に本を選ぶ本来の多読では、各自が違う本を読むため、「どの語に出会い、どれを覚えたか」を測る方法がなかった。そこで著者は、それを測る新しい方法を考え、試した。
どうやって調べた?
学習者が自由に選んだ本を読む多読プログラムで、ESL学習者21名を対象に方法を試した。まず、学習者が読んだ本を電子的にスキャンしてテキストデータにし、語彙の頻度を分析するソフト(語彙プロファイラー)で、それぞれの本にどんな頻度レベルの語が出てくるかを調べた。そのうえで、一人ひとりが実際に読んだ本に出てきた語から、学習者ごとに異なるチェックリスト形式の語彙テストを作り、多読の前後で語の知識がどれだけ伸びたかを測った。
何がわかった?
スキャンと語彙分析、個人ごとのチェックリストテストを組み合わせたこの方法は、実際に実施でき、語彙の伸びを効果的に測れることが確かめられた。そして、学習者が読んだ本に出てきた語の知識の伸びは、それまでの研究で報告されていたものより大きかった。Webb & Chang (2015) の紹介によると、この研究では、語を知っているという自信を問うテストで69%、語の知識の深さを問う尺度で51%の伸びが報告されている。著者は、この柔軟なコーパス(文章データ)に基づく方法が、他の研究にも応用できると述べている。1冊の課題本ではなく、学習者が好きな本を選ぶ「本来の多読」の語彙学習を測った点で、その後の研究にも影響を与えた。
- 本のスキャン・語彙分析・個人ごとのチェックリストを組み合わせた測定法は、実施しやすく有効だった
- 自由に本を選ぶ多読でも、読んだ本に出てきた語の知識は大きく伸びた
- 語彙の伸びは、それまでの研究で報告された量より大きかった
- Webb & Chang (2015) の紹介では、知識への自信を問うテストで69%、知識の深さの尺度で51%の伸び
主な数字
- 参加者:ESL学習者21名(本は各自が自由に選択)
- Webb & Chang (2015) の紹介による伸び:自信を問うテスト69%、知識の深さの尺度51%
読むときの注意(研究の限界)
参加者は21名と少なく、方法の有効性を試す「パイロット(試行)」的な研究である。英語を日常的に使う環境(ESL)の学習者なので、教室外でも同じ語に出会っていた可能性があり、日本のような環境とは条件が違う。本文はオープンアクセスでないため、ここでは抄録と他の論文による紹介に基づいて説明しており、読んだ量や期間などの詳細は載せていない。
多読をする人・教える人へ
自分で選んだ本を読む「本来の多読」でも、語彙はしっかり伸びる。興味のある本を自分で選ぶことは、楽しさだけでなく語彙学習にもプラスになりうる。先生が全員に同じ本を割り当てなくても、学習者がそれぞれ好きな本を読む形で十分に効果が期待できる。また、読んだ本の語彙を分析して個別に確認するというアイデアは、今ならデジタルの本や読書記録アプリを使って、自習でも応用できる。
今日からできること
- 自習:課題図書にこだわらず、興味のある本を自分で選んで読む
- 自習:読み終えた本から気になった語を5つ書き出し、意味を言えるか自分でチェックする
- 授業:全員同じ本ではなく、各自が選んだ本を読む時間を設け、読書記録から語彙の確認テストを作る
確認方法:Crossref(書誌・抄録)で確認。伸びの数値は Webb & Chang (2015) 著者原稿の紹介による(本論文の本文はオープンアクセスでないため未確認)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
関連する研究
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実験2003GRを1冊読んで覚える新出語はわずか:3か月後に意味を言えたのは25語中1語ほど
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実験2015音声付きGRを10冊聞き読み:何冊も読むと単語は大きく伸びる
Webb, S., & Chang, A. C.-S. (2015)
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メタ分析2018多読と語彙の21研究をメタ分析:効果は大きいが、研究ごとのばらつきも大きい
Liu, J., & Zhang, J. (2018)
対象:21研究(2007〜2016年)・合計1,268名