メタ分析・2018年

多読と語彙の21研究をメタ分析:効果は大きいが、研究ごとのばらつきも大きい

Liu, J., & Zhang, J. (2018). The Effects of Extensive Reading on English Vocabulary Learning: A Meta-analysis. English Language Teaching, 11(6), 1 doi:10.5539/elt.v11n6p1

語彙Graded Readers教室での実践

ひとことで言うと:多読で英単語の力が伸びることを、21の研究をまとめて確かめた。GRを使った多読で特に効果が大きかった。

対象:2007〜2016年の21研究(群間比較17・事前事後比較4)、合計1,268名(大学生が中心)

なぜこの研究?

多読の効果をまとめたメタ分析(Nakanishi, 2015 など)は、読解・速さ・語彙などを合わせて扱っていた。語彙だけに焦点をしぼり、「どのくらいの期間が効果的か」「どんな教材や指導方法と組み合わせると語彙が伸びるか」を調べたメタ分析はほとんどなかった。個々の研究は期間が短く人数も少ないものが多いため、著者らはそれらをまとめて、多読と語彙学習の関係を確かめようとした。

どうやって調べた?

Google Scholar、ERIC などのデータベースで、2007〜2016年に発表された多読と語彙の実証研究を集め、平均点や標準偏差が報告されている21研究(博士論文2本を含む、計1,268名)を選んだ。多読群と比較群(統制群)を比べた17研究と、多読群の事前・事後を比べた4研究に分け、効果量(差の大きさを表す数値、d)を計算した。さらに、学習者の年齢層、指導期間(3か月未満/3〜6か月/6か月〜1年)、教材(GR・物語の本など)、組み合わせた活動(読書レポート、内容理解の質問、辞書の使用、語彙練習、語彙指導など)ごとに効果を比べた。

何がわかった?

多読群と比較群を比べた全体の効果量は d = 1.32(95%信頼区間 0.62〜2.02)、事前・事後の比較では d = 3.26 で、多読は英語の語彙学習に統計的に意味のある効果を持つと結論づけられた。指導期間別では、1学期(3か月未満)の研究で d = 2.10 と最も大きく、3〜6か月や1年の研究では信頼区間に0が含まれ、はっきりした効果が確認できなかった。教材では、GRを使った研究(14研究)で d = 1.48 と、物語の本(0.62)より大きかった。組み合わせた活動では、内容理解の質問、辞書の使用、語彙練習で大きな効果が見られた。ただし、研究間のばらつきは非常に大きく(異質性 I² = 96.1%)、発表された研究だけが集まる「出版バイアス」の可能性も著者ら自身が指摘している。

  • 多読は英語の語彙学習に統計的に意味のある効果があった(群間比較 d = 1.32)
  • 指導期間別では、3か月未満の研究で効果が最も大きかった(d = 2.10)
  • GRを使った研究で効果が大きかった(d = 1.48、物語の本は d = 0.62)
  • 内容理解の質問・辞書の使用・語彙練習を組み合わせた研究で効果が大きかった
  • 研究間のばらつきが非常に大きく(I² = 96.1%)、出版バイアスの可能性もある

主な数字

  • 対象:21研究(2007〜2016年)・合計1,268名
  • 群間比較の効果量 d = 1.32(95%信頼区間 0.62〜2.02)、事前→事後 d = 3.26
  • 期間別:3か月未満 d = 2.10(9研究)、3〜6か月 d = 0.56(7研究、信頼区間に0を含む)
  • 教材別:GR d = 1.48(14研究)、物語の本 d = 0.62
  • 研究間の異質性:I² = 96.1%

読むときの注意(研究の限界)

効果量が5を超える研究が含まれるなど、研究ごとの結果のばらつきが極端に大きく、全体の数値はそのまま受け取りにくい。著者らも、ファネルプロット(研究の偏りを見る図)が非対称で、出版バイアスの可能性があると述べている。「内容理解の質問」の大きな効果(d = 4.77)は1研究だけの数値である。また「短い期間ほど効果が大きい」という結果は、長期の研究が少なく(1年は1研究)、短期研究に効果の大きいものが集まった可能性もあり、「長く続けると効果が下がる」という意味ではない。

多読をする人・教える人へ

多読が語彙を増やす手段として効果があることは、このメタ分析でも支持された。特に、GRを使い、読みっぱなしにせず簡単な内容確認や辞書での確認、語彙の振り返りを組み合わせると、語彙学習の効果を高められる可能性がある。一方で、数字のばらつきが大きいので、「1学期だけやれば十分」と受け取るのは誤りである。他のメタ分析(Nakanishi, 2015; Jeon & Day, 2016)とあわせて読むと、多読の効果をより正確に理解できる。

今日からできること

  • 自習:GRを中心に読み、読み終えたら内容を自分に問いかけて確認する
  • 自習:気になった語は読後に辞書で確かめ、簡単な例文を作ってみる
  • 授業:多読に、短い内容理解の質問や語彙の振り返りワークを組み合わせる

確認方法:Crossref(書誌・抄録)+出版社サイトの本文PDF(オープンアクセス:方法・結果の表・考察)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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