長期の研究・2015年

多読で覚えられる単語の量は、もともとの語彙力で大きく変わる

Webb, S., & Chang, A. C.-S. (2015). How does prior word knowledge affect vocabulary learning progress in an extensive reading program?. Studies in Second Language Acquisition, 37(4), 651–675 doi:10.1017/S0272263114000606

語彙Graded Readers長期

ひとことで言うと:同じ本を同じように読んでも、もともと知っている単語が多い人ほど、新しい単語をたくさん覚えた。

対象:英語を外国語として学ぶ学習者60名(語彙力で上位・中位・下位の3群)、2学期・37週間

なぜこの研究?

多読で語彙が伸びることは示されてきたが、すべての学習者が同じように伸びるとは限らない。もともとの語彙が少ない学習者は、本の中に知らない語が多すぎて、文脈から意味を推測しにくい可能性がある。一方、語彙が多い学習者は、文章の理解に余裕があり、新しい語に注意を向けやすいかもしれない。この研究は、1年近い長期の多読プログラムで、事前の語彙知識が学習の進み方にどう影響するかを調べた。

どうやって調べた?

英語を外国語として学ぶ60名を、対象語の事前テストと語彙レベルテスト(どの頻度レベルの語まで知っているかを測るテスト)の得点で、上位・中位・下位の3群に分けた。参加者は2学期・37週間にわたり、1学期目にレベル1のGRを10冊、2学期目にレベル2のGRを10冊読んだ。それぞれの10冊から100語ずつ、計2セットの目標語を選び、各セットを事前・直後・遅延の3回テストした。伸びは、事前に知らなかった語のうち新たにわかるようになった割合(相対的な伸び)で比べた。

何がわかった?

1学期目の事前から直後への相対的な伸びは、上位群63.18%、中位群44.64%、下位群28.12%で、どの群も語彙は伸びたが、その大きさは事前の語彙力によって大きく違った。上位群の伸びは下位群の2倍以上だった。1学期目の3か月後の遅延テストでも知識の減少は小さく、相対的な伸びは下位群21.05%から上位群59.01%の範囲だった。2学期目(レベル2のGR)の結果も1学期目と同じ傾向を示した。著者らは、事前の語彙知識が、多読から得られる語彙学習の量に大きな影響を与えている可能性があると結論づけている。つまり、多読は語彙の多い人ほどさらに伸びるという「豊かな者がより豊かになる」傾向を持ちうる。

  • 3群とも語彙は伸びたが、伸びの大きさは事前の語彙力で大きく異なった
  • 1学期目の相対的な伸び:上位群63.18%、中位群44.64%、下位群28.12%
  • 3か月後の遅延テストでも知識の減少は小さかった(下位群21.05%〜上位群59.01%)
  • 2学期目(レベル2のGR10冊)の結果も1学期目と同じ傾向だった

主な数字

  • 参加者60名、期間37週間(2学期)、GR計20冊(レベル1・2を10冊ずつ)
  • 目標語:各セット100語×2セット
  • 事前→直後の相対的な伸び:上位群63.18%、中位群44.64%、下位群28.12%
  • 3か月後の遅延テスト:下位群21.05%〜上位群59.01%

読むときの注意(研究の限界)

ここでの説明は抄録に基づいており、学習者の国・年齢や、読み方(音声の有無、授業内か家庭か)などの詳しい条件は本文で確認できなかったため載せていない。群は事前のテスト得点で分けたもので、語彙力以外の違い(意欲や読む速さなど)も伸びに関係している可能性がある。全員が同じレベルのGRを読んでいるため、下位群にとっては本が難しめだった可能性もある。

多読をする人・教える人へ

語彙が少ない段階では、多読だけで覚えられる語は限られる。初級者は、基本語を意図的に学ぶ学習(単語帳など)を並行して進めると、本の中の未知語が減り、多読から得られるものが大きくなると考えられる。また、全員に同じレベルの本を読ませるより、語彙力に合わせて本のレベルを選べるようにすることが大切である。下位の学習者でも伸びはあり、忘れにくかったので、やめずに続けることには意味がある。

今日からできること

  • 自習:語彙が少ないうちは、多読と並行して基本の1,000〜2,000語を単語帳などで固める
  • 自習:今の自分にやさしいと感じるレベルから始め、未知語が少ない状態で読む
  • 授業:全員一律の課題本ではなく、語彙テストの結果に合わせて開始レベルを変える

確認方法:Crossref(書誌・抄録)で確認(本文はオープンアクセスでないため未確認)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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