書籍・1998年

多読を世界に広めた古典:「苦労せずに読む力を得る」ための教室づくり

Day, R. R., & Bamford, J. (1998). Extensive Reading in the Second Language Classroom. Cambridge University Press, 238頁 https://openlibrary.org/isbn/9780521568296

教室での実践動機づけGraded Readers

ひとことで言うと:「苦労なしに読む力をつける」を合言葉に、教室で多読を始める方法を体系的に示した多読の古典。

対象:実験研究ではなく、多読の理念・方法・研究をまとめた教員向けの本

なぜこの研究?

当時、外国語・第二言語の読解指導は、短く難しい文章を細かく読み解く精読が中心で、多読は「あまり歩まれていない道」だった。著者らは、楽しみながら大量に読むことこそが、流暢で自立した、自信のある読み手を育てると考えた。多読の考え方、成功している多読プログラムの特徴、学習者の動機づけ、教材の選び方、カリキュラムへの組み込み方などを、教師向けに体系的にまとめたのが本書である。

どうやって調べた?

新しいデータを集めた研究ではなく、多読の理念と方法、関連する研究をまとめた本である。ここでは、本書を引用している他の論文の記述から内容を確認した。それによると、本書は「多読(extensive reading)」という言葉を最初に使ったのは Harold Palmer だと紹介し、成功している多読プログラムに見られる特徴を示している(7〜8ページ)。また、多読をカリキュラムに組み込む方法として、独立したコース、既存の読解コースの一部、単位外の追加活動、課外活動の4つを挙げている(41ページ)。さらに、外国語で読むことへの動機づけや態度がどう形づくられるかのモデルも示している。

何がわかった?

本書は多読を「reading gain without reading pain(苦労せずに読む力を得る)」という言葉で表し、学習者が流暢で自立した、自信を持った読み手になることを目標に掲げた。成功している多読プログラムの特徴として示されたものは、のちに「多読指導の10原則」(Day & Bamford, 2002)として改訂・拡充され、多読とは何かを定義する基準として広く使われるようになった(Waring & McLean, 2015)。また本書は、外国語で読む動機づけには教材・読む力・態度・社会文化的な環境が関わるというモデルや、母語での読書態度が外国語の読書態度の形成に関わるという考えを示しており、Takase (2007)、Yamashita (2004)、Nishino (2007) などの日本の研究でも参照されている。読む本が学習者の動機づけを大きく左右するという主張も、多読の教材選びの基本になった。

  • 多読の合言葉は「reading gain without reading pain(苦労せずに読む力を得る)」
  • 成功する多読プログラムの特徴を示し、これが後の「多読指導の10原則」になった
  • 多読をカリキュラムに組み込む4つの形(独立コース・読解コースの一部・単位外の追加・課外活動)を整理した
  • 外国語で読む動機づけには、教材・読む力・態度・社会文化的環境が関わるというモデルを示した
  • 読む本が動機づけを大きく左右するとし、学習者に合った教材の重要性を強調した

主な数字

  • 全238頁(Cambridge University Press, 1998)
  • 多読プログラムの特徴の一覧:7〜8ページ(後の10原則の元)

読むときの注意(研究の限界)

研究データを示す本ではなく、理念と方法を示す本である。本書の本文は確認できていないため、ここでの内容の説明は、本書を引用した Day & Bamford (2002)、Iwahori (2008)、Jeon & Day (2016)、Waring & McLean (2015) などの論文の記述に基づいている。Waring & McLean は、本書の原則がもともと「成功しているプログラムの特徴の記述」だったにもかかわらず、多読の唯一の定義のように扱われがちだと指摘している。

多読をする人・教える人へ

多読の理念と方法を体系的に学ぶなら、まず押さえておきたい古典である。「やさしい本を楽しくたくさん」という多読の基本は、この本で明確に示された。学校で多読を始めるときは、独立した授業にするのか、既存の授業の一部にするのか、課外活動にするのかを最初に考えるとよい(Jeon & Day, 2016 は、カリキュラムの一部にした多読で効果が大きかったと報告している)。

今日からできること

  • 自習:「苦労せずに読む」を合言葉に、つらいと感じる本は迷わずレベルを下げる
  • 授業:多読を授業のどこに位置づけるか(独立・一部・課外)を決めてから計画を立てる
  • 授業:生徒が読みたいと思う本を知るために、日本語で何を読むのが好きかを聞いてみる

確認方法:Open Library(Cambridge University Press, 1998, 238頁)+SSLA掲載の書評(Crossref:vii+238頁)で書誌確認。内容は Day & Bamford (2002)・Iwahori (2008)・Jeon & Day (2016)・Waring & McLean (2015) 等の本文中の記述で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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