多読を続ける高校生の原動力は「読む楽しさ」:日本語の読書好きとは別物
Takase, A. (2007). Japanese high school students' motivation for extensive L2 reading. Reading in a Foreign Language, 19(1), 1–18 doi:10.64152/10125/66622
ひとことで言うと:英語の本をたくさん読んだ高校生を動かしていたのは「読むのが好き」という気持ち。受験のためという理由は効いていなかった。
対象:私立女子高校の2年生219名(3年間にわたる5クラス)、各1年間の多読プログラム
なぜこの研究?
多読はたくさん読み続けることが大切だが、何が学習者を「読み続けたい」と思わせるのかは、日本の高校生についてはほとんど調べられていなかった。大学生を対象にした先行研究はあったが、高校生は1年後に大学入試を控えており、動機の中身が違うかもしれない。また、日本語で本をよく読む生徒は英語でもよく読むのか、という母語と英語の読書の関係も明らかではなかった。
どうやって調べた?
私立女子高校の2年生219名が、3年間にわたって各1年間(約11か月)の多読プログラムに参加した。読む本は300〜1,800見出し語レベルのGRなどで、最終的に約700冊を用意し、各教室に約100冊を置いて学期ごとに入れ替えた。生徒は主に授業外で読み、1冊ごとに要約(最初は日本語、夏休み後は英語を推奨)と読書記録を書いた(成績の10%)。開始約1か月後に、英語の読書と日本語の読書についての動機の質問紙(5段階)に答えた。英語で読んだ語数を「読む意欲」の指標とし、質問紙から取り出した動機の要素のうち、どれが読書量を予測するかを統計的に分析した。参加者の約3分の1には後から面接も行った。
何がわかった?
生徒が1年間に英語で読んだ量は600語から311,142語までと幅があり、平均は約7万2千語だった。質問紙からは、日本語の読書への内発的動機(読むこと自体が楽しい)、英語の読書への内発的動機、親や家族の読書への関わり、入試に関係した外発的動機など、複数の要素が見つかった。英語の読書量を予測していたのは、英語の読書への内発的動機と日本語の読書への内発的動機の2つで、入試のためという動機や家族の関わりは有意な予測要因ではなかった。一方、日本語で読んだ本の数と英語の読書量にはほとんど関係がなかった(相関 r = .08)。面接では、日本語の本が大好きな生徒の中に、日本語と英語の読解力の差のために英語では楽しめず、最低限しか読まない例があった。逆に、日本語の読書習慣がなかった生徒が、英語の本を1冊読み切った喜びや達成感をきっかけに、1年間読み続けた例もあった。
- 英語の読書量を予測したのは、英語の読書と日本語の読書への「内発的動機(読むこと自体の楽しさ)」だった
- 入試のための外発的動機や、親・家族の関わりは、英語の読書量の有意な予測要因ではなかった
- 日本語の読書量と英語の読書量にはほとんど関係がなかった(r = .08)
- 日本語の読書好きの中には、英語との力の差で英語の読書を楽しめない生徒がいた
- 日本語の本を読まない生徒が、英語の本を読み切る達成感から読み続けた例もあった
主な数字
- 対象:女子高校2年生219名、各1年間(約11か月)
- 英語で読んだ量:600〜311,142語(平均71,653語)
- 用意した本:最終的に約700冊(300〜1,800見出し語レベルのGRなど)
- 日本語の読書量と英語の読書量の相関:r = .08(ほぼ無関係)
- 面接:参加者の約3分の1
読むときの注意(研究の限界)
対象は1つの私立女子高校の英語の特別コースの生徒で、通常の生徒より意欲が高かった可能性がある。3年間にわたって集めたデータなので、年ごとに本の数やレベルの幅が異なっていた。著者自身もこれらを限界として挙げている。また、動機が読書量を説明する割合(決定係数)は小さく、読書量には動機以外の多くの要因も関わっていると考えられる。
多読をする人・教える人へ
日本語の読書好きが、そのまま英語の多読好きになるとは限らない。日本語で読む本と英語で読める本のレベル差が大きいとやる気が出にくいので、内容的にも楽しめる、ごくやさしい本から始めることが大切である。逆に、日本語の本をあまり読まない人でも、英語の本を1冊読み切る達成感が多読を続ける力になる。「受験に役立つから」より「読むのが楽しいから」が長続きの原動力なので、自分で本を選べる自由と、読み切れる短い本をそろえることがポイントになる。
今日からできること
- 自習:最初は短くてやさしい本を選び、「1冊読み切った」という達成感を積み重ねる
- 自習:日本語の読書と比べて物足りなくても気にしない。英語は英語で楽しめるレベルから
- 授業:本を自分で選ぶ自由を与え、教室に本を置いて学期ごとに入れ替える
- 授業:要約は最初は日本語でもよいことにして、書く負担で読む楽しさを奪わない
確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(方法・結果・考察・限界)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
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