調査・2004年

多読を続ける力は「役に立つ」より「読むのが心地よい」という気持ちから

Yamashita, J. (2004). Reading attitudes in L1 and L2, and their influence on L2 extensive reading. Reading in a Foreign Language, 16(1), 1–19 doi:10.64152/10125/66597

動機づけ日本の研究大学生Graded Readers

ひとことで言うと:英語の本をたくさん読んだ学生は「読むのは楽しい」と感じていた。「役に立つから」だけでは読み続けられない。

対象:多読の授業を受けた日本の大学生59名(19〜23歳、工学部・農学部など)、1学期(13〜14週)

なぜこの研究?

母語での読解力や読み方の工夫が外国語の読解にも引き継がれることは、多くの研究で調べられてきた。しかし、「読書が好き・苦手」といった気持ちや考え(読書態度)も母語から外国語に引き継がれるのか、そしてその態度が多読への取り組みにどう影響するのかは、ほとんど調べられていなかった。多読は自分から読み続けることが大切なので、気持ちの面を理解することは、指導を考えるうえで重要である。

どうやって調べた?

必修の英語の多読授業を受けた大学生59名を対象にした。最初の授業で、日本語での読書と英語での読書のそれぞれについて、同じ内容の質問(「読書は楽しい」など、5段階)に答える質問紙を実施し、次の授業でTOEIC形式の読解テスト(100問)を受けた。その後13〜14週間、約420冊のGRから自由に本を選んで週1冊以上読み、1冊ごとに短い感想文を書いた。多読への取り組みは「1週間あたりに読んだページ数」で表した。質問紙の答えを分析して読書態度の要素を取り出し、日本語と英語の態度の関係や、読書量との関係を調べた。

何がわかった?

質問紙からは、「心地よさ(読書は楽しい)」「不安」「価値(読書は大切だ)」「自己認識(自分は読むのが得意だ)」の4つの読書態度が見出された。日本語の読書態度は英語の読書態度にも引き継がれる傾向があり、その引き継がれ方は英語力の高さにはあまり左右されなかった。中でも「読書は大切だ」という考え(価値)は最も引き継がれやすく、日本語でも英語でも同じくらい高かった。一方、英語の読書では、日本語よりも不安が強く、心地よさや自信は低かった。そして、多読でたくさん読むことにつながっていたのは、日本語でも英語でも「読書が心地よい」という前向きな気持ちだった。「読書は自分のためになる」と考えるだけでは、たくさん読む動機としては十分ではなかった。

  • 読書態度として「心地よさ」「不安」「価値」「自己認識」の4つが見出された
  • 日本語の読書態度は英語にも引き継がれやすく、英語力の高さにはあまり左右されなかった
  • 「読書は大切だ」という考え(価値)は最も引き継がれやすかったが、英語では不安が強く心地よさは低かった
  • 多読でたくさん読んだ学生を支えていたのは「読書が心地よい」という気持ちだった
  • 「読書は役に立つ」と考えるだけでは、たくさん読む動機として不十分だった

主な数字

  • 参加者:日本の大学生59名、期間13〜14週
  • 用意した本:GR約420冊、目安は週1冊以上(1学期13〜14冊)
  • 読書態度の4因子:心地よさ・不安・価値・自己認識

読むときの注意(研究の限界)

著者自身が、小規模な研究であること、質問紙の項目数が少ないこと(特に不安の項目)、読書量を語数ではなくページ数で大まかに測ったことなどを限界として挙げている。授業は必修で成績がかかっていたため、自由参加の多読とは状況が違う。楽しみのための読書と勉強のための読書の区別もしていない。結果は「決定的ではなく示唆的」と著者は述べている。

多読をする人・教える人へ

「役に立つから読む」より「楽しいから読む」が多読を続ける原動力である。学習者には、ためになる本より、心から楽しめる本を選ぶよう勧めたい。英語の読書は日本語より不安が強く心地よさが低くなりやすいので、ごくやさしい本で「楽に読める」体験を重ねることが大切になる。先生は、学習者の英語だけでなく日本語での読書への気持ちも知り、読書が苦手な学習者には特に、楽しめる本との出会いを手助けしたい。

今日からできること

  • 自習:「勉強になりそう」より「続きが気になる」本を選ぶ
  • 自習:英語で読むのが不安なときは、レベルを下げて「楽に読める」感覚を取り戻す
  • 授業:最初に日本語・英語の読書についての簡単なアンケートをとり、読書が苦手な生徒には特に読みやすい本を勧める

確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(方法・考察・限界)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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