書籍・2004年

自分で選んで楽しむ「自由読書」の力:研究から読書の効果を論じた本

Krashen, S. D. (2004). The Power of Reading: Insights from the Research (2nd ed.). Libraries Unlimited / Heinemann https://openlibrary.org/isbn/9781591581697

動機づけ年少者読解

ひとことで言うと:自分で選んだ本を楽しく読むことが、読む力・言葉の力を育てる。マンガなど軽い読み物も入口になる、という本。

対象:実験研究ではなく、自由読書に関する研究を総合的に論じた本(第2版、199頁)

なぜこの研究?

インプット仮説(理解できる言葉をたくさん受け取ることが言語習得の中心だという考え)で知られるクラッシェンは、自分で選んだ本を楽しみのために読む「自由読書(free voluntary reading)」の効果を主張してきた。1993年の初版で示したこの主張を、その後約10年間の新しい研究や、初版で扱った研究の見直しを踏まえて改訂したのが、この第2版である。多読の理論的な支えとしてよく引用される本である。

どうやって調べた?

新しい実験を行った本ではなく、自由読書に関する多くの研究を集めて検討し、その効果を論じた本である。出版社の紹介によれば、第2版では、初版以降の約10年間の研究に加え、初版で取り上げた研究も改めて検討している。さらに、学校図書館や公共図書館の役割、本が豊富にある環境(印刷物に恵まれた環境)の必要性、読書を促すためのご褒美・インセンティブ型のプログラム(Accelerated Reader などの電子的な読書管理の仕組みを含む)についての研究も取り上げている。

何がわかった?

本書の中心にあるのは、自分で選んだ本を楽しみのために読む自由読書が、子どもが理解して読めるようになるためにも、第二言語の習得のためにも大きな役割を果たすという主張である。出版社の紹介によれば、本書は、すぐれた文学作品だけでなく、マンガ、ティーン向けの恋愛小説、雑誌といった「軽い読み物」も含めて、読み物が豊富にある環境が必要だという研究を検討している。また、学校図書館や公共図書館が果たす役割を論じ、読書量に応じてご褒美を与えるようなプログラムについての研究にも目を向けている。この考え方は、本の乏しい学校に絵本を大量に届けて英語力が伸びたフィジーの「ブック・フラッド」研究(Elley & Mangubhai, 1983)などとも重なり、多読の理論的な背景としてよく引用されている。

  • 自分で選んで楽しむ自由読書が、読む力と第二言語の習得を支えると主張している
  • マンガや雑誌などの軽い読み物も含め、読み物が豊富にある環境が必要だとする研究を検討している
  • 学校図書館・公共図書館の役割を重視している
  • 読書へのご褒美・インセンティブ型のプログラムについての研究も取り上げている

主な数字

  • 初版1993年、第2版2004年(199頁)
  • 第2版では初版以降の約10年間の研究を追加

読むときの注意(研究の限界)

多くの研究をまとめて論じた本だが、主に自由読書の効果を支持する立場から書かれている。取り上げられた研究には、比較群のないものや小規模なものも含まれうるため、個々の研究の質は別に確かめる必要がある。本書の本文は確認できていないため、ここでの内容の説明は出版社の内容紹介(Open Library 掲載)に基づいており、本文中の具体的な数値は載せていない。

多読をする人・教える人へ

多読の理論的な背景を知るのに役立つ一冊である。読む本は「ためになる本」でなくてよく、マンガや雑誌などの軽い読み物も読書習慣への入口になるという考え方は、多読を楽しく続けるヒントになる。家庭や学校では、手の届くところに読みたくなる本をたくさん置くことが大切である。ご褒美で読ませるより、本そのものの面白さで読みたくなる環境を作ることを考えたい。

今日からできること

  • 自習:英語のマンガや雑誌、好きなテーマの軽い読み物も、立派な多読の素材として読んでみる
  • 自習:図書館の英語の本のコーナーを探し、借りられる本を手元に置く
  • 授業:教室に雑誌やマンガも含めた多様な英語の読み物を置き、自由に手に取れる時間を作る

確認方法:Open Library(2004年、Libraries Unlimited / Heinemann、第2版、199頁、ISBN 9781591581697、出版社による内容紹介)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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