実験・1989年

GRで3か月の多読:読む力に加えて、特に書く力がはっきり伸びた

Hafiz, F. M., & Tudor, I. (1989). Extensive reading and the development of language skills. ELT Journal, 43(1), 4–13 doi:10.1093/elt/43.1.4

ライティングGraded Readers読解

ひとことで言うと:やさしい英語の本を3か月たくさん読んだら、読む力だけでなく、書く力も目に見えて伸びた。

対象:英国で英語を第二言語(ESL)として学ぶ学習者(実験群1・比較群2)、3か月

なぜこの研究?

クラッシェンの「インプット仮説」は、理解できる英語をたくさん受け取ること(インプット)が言語習得の中心だと考える。もしそうなら、楽しみのためにたくさん読むことは、読む力だけでなく、書く力など他の言語技能も伸ばすはずである。著者らは、この考えを実際の多読プログラムで確かめようとした。読むことが書くことにどうつながるのかは、多読を教育に取り入れるうえでも重要な問いだった。

どうやって調べた?

英国で英語を第二言語として学ぶ学習者を対象に、GR(語彙を制限して書かれたレベル別の本)を使った3か月間の多読プログラムを行った。プログラムに参加する実験群1つと、参加しない比較群(統制群)2つを設けた。プログラムは、楽しみのための読書(読むこと自体を目的にした読書)が言語技能、特に読む力と書く力の向上につながるかを調べるように組み立てられた。プログラムの前後に言語技能を測り、群の間で伸びを比べた。

何がわかった?

3か月の多読プログラムの結果、実験群の成績ははっきりと向上し、特に書く力の伸びが顕著だった。比較群との差は、読む力より書く力でよりはっきり表れた。つまり、作文の指導を特別に受けなくても、英語をたくさん読むことで、文を書く力が育ったことになる。著者らは、この結果をもとに、多読プログラムを立ち上げる際の具体的な提言もまとめている。一方、Robb & Susser (1989) は、この研究の比較群は追加の読書を何もしておらず、「読書量が多ければ成績が上がる」ことは示せても、多読が他のどの指導法より優れているとまでは言えないと指摘している。

  • 3か月のGRによる多読で、実験群の言語技能がはっきり向上した
  • 特に書く力の伸びが顕著だった
  • 楽しみのための読書が、読む力以外の技能にも良い影響を与えうることが示された
  • 著者らは、多読プログラムの立ち上げ方について提言している

主な数字

  • 期間:3か月
  • 実験群1つ・比較群2つ

読むときの注意(研究の限界)

ここでの説明は抄録と、他の論文(Robb & Susser, 1989)による紹介に基づいており、参加者の人数・年齢、使ったテスト、伸びの具体的な数値は確認できなかったため載せていない。Robb & Susser (1989) は、比較群が追加の読書をまったくしていなかった点を挙げ、多読そのものの効果と「学習量が多かったこと」の効果を区別できないと批判している。英国在住のESL学習者が対象で、日本の環境とは英語に触れる量が大きく異なる。

多読をする人・教える人へ

読むことは書くことの土台になる。英文をたくさん読むことで、使える表現や文の組み立て方が自然に身につき、ライティングにも良い影響が出ることが期待できる。英作文の練習だけを重ねるより、良い英文をたくさん読んでおくことが、書くときの「引き出し」を増やす。ただし、この研究は古く小規模なので、Mermelstein (2015) など、より新しい研究とあわせて考えるとよい。

今日からできること

  • 自習:英作文の前に、同じテーマのやさしい英文を読んで表現のストックを増やす
  • 自習:多読で気に入った表現をノートに書き写し、自分の文で使ってみる
  • 授業:ライティングの授業にも多読の時間を組み込み、読む量を確保する

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認(共著者は Semantic Scholar と Robb & Susser 1989 本文で確認。Crossrefには第1著者のみ登録)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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