授業の15〜20分の黙読を1年続けたら、英作文の力がより大きく伸びた
Mermelstein, A. D. (2015). Improving EFL learners' writing through enhanced extensive reading. Reading in a Foreign Language, 27(2), 182–198 doi:10.64152/10125/66890
ひとことで言うと:毎週の授業で15〜20分、自分のレベルの本を静かに読み続けたクラスは、英作文の力がより大きく伸びた。
対象:台湾・台北の私立大学3年生211名(多読群107名・比較群104名、4クラス)、1年間
なぜこの研究?
多読が読む力を伸ばすことは多くの研究で示されていたが、書く力への効果を調べた研究は少なく、その結果もまちまちだった。著者は、先行研究で効果が限られた理由として、本のレベルが合っていない、本の数が少ない、期間が短い、読書レポートなどの負担が重い、といった点を考えた。そこで、これらを改善した「強化版」の多読を1年間行い、英語を外国語として学ぶ大学生の作文力が伸びるかを確かめた。
どうやって調べた?
台湾の私立大学の3年生4クラス(211名)を、多読群2クラス(107名)と比較群2クラス(104名)に割り当て、同じ教員が同じカリキュラムで1年間教えた。多読群は、レベル判定テストで「語彙の95%がわかる」レベルに分けられ、約600冊のGR(Oxford Bookworms と Penguin Readers)から自分で本を選び、毎週の授業で15〜20分の黙読を行った。家でも1日3ページ以上読み、読書記録をつけたが、読書レポートなどの課題は課さなかった。比較群は同じ時間を教室活動にあて、週1時間ほどの穴埋めや精読の宿題をした。年度の初めと終わりに段落の英作文を書かせ、内容・構成・語彙・言語使用・表記に、語数による「流暢さ」を加えた6項目で評価した。
何がわかった?
授業中の黙読では、多読群の学生は平均94%の時間、集中して読んでいた。読書記録からは、平均で週4.41日、授業外でも読んでいたことがわかった。作文の評価では、両群とも6項目すべてで伸びたが、多読群の伸びはすべての項目で比較群より大きかった。年度末の作文を比べると、語彙(14.79点対13.24点)、言語使用(17.16点対14.75点)、表記、流暢さ(書いた語数 63.5語対54.7語)で多読群が有意に上回った。抄録では、6項目すべてで多読群に有意な伸びの差があり、効果量(差の大きさ)は小〜大だったとまとめられている。著者は、本のレベルをそろえ、本を十分に用意し、課題の負担を軽くして長く続けるという工夫が、作文力の向上につながったと考えている。
- 多読群は授業中の黙読で平均94%の時間、集中して読んでいた
- 両群とも作文力は伸びたが、多読群の伸びは6項目すべてで比較群より大きかった
- 年度末の作文で、語彙・言語使用・表記・流暢さ(書いた語数)は多読群が有意に上回った
- 効果量は項目によって小〜大だった
- 課題の負担を軽くし、レベルに合った本を長期間読むことが、書く力の向上につながると考えられた
主な数字
- 参加者:211名(多読群107名・比較群104名)、期間1年
- 授業内の黙読:1回15〜20分、用意したGR約600冊
- 授業外の読書:平均週4.41日(読書記録より)
- 年度末の作文の流暢さ(語数):多読群 63.5語/比較群 54.7語
読むときの注意(研究の限界)
比較群が宿題にかけた時間は記録されておらず、両群の英語に触れた時間を完全にはそろえられていない(著者も限界として挙げている)。作文は年度の初めと終わりに別々に採点され、採点者がどちらの時期の作文かを知らない形(ブラインド評価)ではなかった。また、本文中では「構成」の伸びについて群の差が有意でなかったという記述もあり、抄録の「全項目で有意」という要約とは細部が一致しない。クラスは学部ごとに割り当てられた。
多読をする人・教える人へ
多読の時間は長くなくてもよい。1回15〜20分でも、レベルに合った本を選び、課題の負担を軽くして1年間続ければ、書く力まで伸びる。読書レポートを課さなくても、学生は授業中にほとんどの時間集中して読んでいた。作文指導そのものに加えて、読む量を増やすことが、語彙や文法の正確さ、たくさん書ける力につながる。英作文が苦手な人ほど、まず読む量を増やすことが近道になりうる。
今日からできること
- 自習:1日3ページからでよいので、自分のレベルの本を毎日読む習慣をつける
- 自習:レポートや要約は無理に書かず、読む時間そのものを確保する
- 授業:毎回の授業の最初の15〜20分を黙読タイムにして、1年間続ける
確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(方法・結果の表・限界)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
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多読群と統制群の比較:d = 0.57(95%信頼区間 0.46〜0.68)、事前→事後:d = 0.79