実験・1989年

日本の大学生で多読と技能練習を1年比較:多読は同等以上で、読む速さは上回った

Robb, T. N., & Susser, B. (1989). Extensive reading vs skills building in an EFL context. Reading in a Foreign Language, 5(2), 239–251 doi:10.64152/10125/67018

日本の研究大学生読む速さ読解教室での実践

ひとことで言うと:読解のコツを教わるクラスより、たくさん読むクラスのほうが、読解力は同じかそれ以上で、読むのも速くなった。

対象:京都産業大学の英語専攻の1年生125名(4クラス)、1年間

なぜこの研究?

当時の日本の英語の読解指導は訳読が中心で、英語を専攻する学生でさえ英語の本を楽しんで読めるほどには育っていなかった。一方で、「要点をつかむ」「文脈から語を推測する」などの読解スキルを練習する技能練習型(skills building)の教材や授業も広がりつつあった。しかし、多読と技能練習を正面から比べた研究はほとんどなく、先行研究も読んだ量や方法がはっきりしないものが多かった。著者らは、「多読だけで読解力は伸びるのか」「スキルは直接教えたほうが身につくのか」を確かめた。

どうやって調べた?

京都産業大学の英語専攻1年生125名の4クラスを、多読と技能練習の2つの方法に分け、著者2人がそれぞれ1クラスずつ担当した。開始時のテストで群に差はなかった。多読クラスは、授業ではSRAの読みもの教材を自分のペースで読み、家庭ではアメリカの10代向けの読みものなど(日本語訳のない本)を1年間で最低500ページ読み、ノートに短い要約を書いた。技能練習クラスは、読解スキルの教科書(269ページ)で要点把握や推測などの練習を行った。事前・事後に読解スキルのテスト(要点、事実の理解、推測、文脈からの語彙推測)と読む速さのテストを行い、最後にアンケートも実施した。

何がわかった?

多読クラスの学生は、1年間で平均641ページを読み、3分の1は700ページ以上を読んだ。事後テストでは、「要点をつかむ」「推測する」では両クラスに差がなく、「重要な事実の理解」と「文脈から語彙を推測する」では、そのスキルを直接練習していない多読クラスのほうが有意に高かった。読む速さも多読クラスが有意に速く、最初の1分間に読めた語数は86.55語対76.75語、文章全体を読む時間は336秒対412秒だった。アンケートでは、多読クラスは家で読む時間が週約99分(技能クラスは約35分)と多かったにもかかわらず、宿題を「面白い」と感じていた。著者らは、多読は技能練習と少なくとも同等に効果的で、しかも学習者にとってより面白いという大きな利点があると結論づけた。

  • スキルを直接教えなくても、多読クラスは読解スキルのテストで技能練習クラスと同等以上だった
  • 「重要な事実の理解」「文脈からの語彙推測」では多読クラスが有意に上回った
  • 読む速さは多読クラスが有意に速かった
  • 多読クラスは家での学習時間が長かったが、宿題をより面白いと感じていた
  • 多読は技能練習と同等以上に効果的で、学習者にとって面白いという利点がある

主な数字

  • 参加者:英語専攻1年生125名(4クラス)、期間1年
  • 多読クラスの読書量:最低500ページの課題に対し平均641ページ
  • 最初の1分間に読めた語数:多読86.55語/技能76.75語
  • 家で読む時間(週):多読 約99分/技能 約35分

読むときの注意(研究の限界)

学生を個別に無作為に振り分けたのではなく、既存のクラス単位で比べている。多読クラスは家で読む時間が技能クラスの約3倍あり、著者ら自身も、結果は方法の違いではなく学習時間の違いによる可能性があると認めている。技能クラスの教科書や進め方が最適ではなかったこと、学生が他の英語授業も並行して受けていたことも限界として挙げられている。

多読をする人・教える人へ

日本における多読研究の先駆けである。読解スキルを一つずつ教えなくても、たくさん読むことで、事実を正確につかむ力や文脈から語を推測する力、読む速さが育つ。読解力の伸びが同程度以上なら、学習者が楽しく続けられ、自然と読む時間も増える多読を選ぶ価値は大きい。「多読は時間がかかる」というより、「楽しいから時間をかけられる」と考えるとよい。

今日からできること

  • 自習:読解問題集だけでなく、楽しく読める本を毎週数十ページずつ読む
  • 自習:わからない語は止まらずに文脈から推測しながら読み進める
  • 授業:読解スキルの演習の一部を、自分のペースで読める多読教材の時間に置き換える

確認方法:Crossref(書誌)+RFL掲載の本文PDF(スキャン画像で方法・結果の表・アンケート・考察を確認)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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