実験・1983年

フィジーの「ブック・フラッド」:絵本を大量に置いた小学校で英語力が2倍の速さで伸びた

Elley, W. B., & Mangubhai, F. (1983). The Impact of Reading on Second Language Learning. Reading Research Quarterly, 19(1), 53–67 doi:10.2307/747337

年少者読解リスニング教室での実践長期

ひとことで言うと:本がほとんどない学校に面白い英語の絵本を大量に届けたら、子どもの英語力がふつうの2倍の速さで伸びた。

対象:フィジーの農村部の小学校8校の4・5年生380名(比較群234名)、8か月〜20か月

なぜこの研究?

母語を身につける子どもは、毎日大量の言葉に触れているが、外国語として英語を学ぶ子どもは、教室で決められた文型を少しずつ習うだけで、触れる量がとても少ない。著者らは、母語の習得と第二言語の学習の間にある5つの大きな違いを整理し、面白い挿絵入りの物語の本をたくさん与えて読ませれば、その差をほとんど埋められるのではないかと考えた。のちに「ブック・フラッド(本の洪水)」研究と呼ばれる、多読研究の古典である。

どうやって調べた?

本がほとんどないフィジーの農村部の小学校8校から、4年生と5年生の計380名を選んだ。各クラスに、子どもが興味を持ちそうな挿絵入りの英語の物語の本を250冊ずつ配った。参加した16名の教師には、子どもに本を読ませるための2通りの指導方法が伝えられた。比較のために、条件をそろえた別の子ども234名(比較群)は、読書をあまり重視しない通常の構造化された英語の授業(文型を順に教える授業)を受けた。全員に事前・事後テストを行い、8か月後と20か月後に伸びを比べた。

何がわかった?

8か月後の事後テストで、たくさんの物語に触れた子どもたちは、読解と聴解(聞いて理解する力)がふつうの2倍の速さで伸びていた。これは、興味を引く物語を読むことが第二言語の学習に重要な役割を果たすという仮説を支持する結果だった。さらに20か月後には、伸びはいっそう大きくなり、読む・聞く以外の関連する言語の技能にも効果が広がっていた。文型を一つずつ教える授業より、楽しい本を大量に与えるほうが、子どもの英語力を大きく伸ばしたのである。この研究は、その後の多読研究やメタ分析で繰り返し引用され、「本がたくさんある環境」の大切さを示す代表例となった。

  • 8か月後、本をたくさん読んだ子どもは読解と聴解が通常の2倍の速さで伸びた
  • 読書を重視しない通常の英語の授業を受けた比較群を上回った
  • 20か月後には伸びがさらに大きくなり、関連する他の言語技能にも効果が広がった
  • 面白い物語を大量に読むことが、第二言語の学習に重要な役割を果たすという仮説が支持された

主な数字

  • 参加:農村部の小学校8校の4・5年生380名、比較群234名
  • 各クラスに挿絵入りの物語の本を250冊配布、参加教師16名
  • 8か月後:読解・聴解が通常の2倍のペースで伸びた
  • 20か月後:伸びがさらに拡大

読むときの注意(研究の限界)

ここでの説明は抄録に基づいており、テストの具体的な得点や、2通りの指導方法それぞれの結果は確認できなかったため載せていない。対象は1980年代のフィジーの、本がほとんどない農村部の小学生で、本や英語に触れる機会の多い現代の日本の中高生と条件は大きく違う。比較群は「読書をほとんどしない通常授業」であり、比べる授業の内容によって差の大きさは変わりうる。

多読をする人・教える人へ

多読研究の古典。子どもでも、面白い本がたくさん手の届くところにあれば、英語の力は大きく伸びる。家庭や学校で「読みたくなる本」を豊富にそろえる環境づくりの大切さを示している。また、効果は8か月より20か月のほうが大きく、続けるほど差が広がった点も重要で、短期間で判断せず長く続けることが大切である。文法や文型を一つずつ教える授業だけでは得られない力を、物語の大量の読書が補ってくれる。

今日からできること

  • 自習・家庭:英語の絵本やGRを、手に取りやすい場所にたくさん置いておく
  • 自習:子ども向けの短い物語から、絵を楽しみながら毎日1冊読む
  • 授業:教室に学級文庫を作り、文型練習の一部を物語の読み聞かせや自由読書の時間に置き換える

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認(ページ範囲は Robb & Susser 1989 の参考文献で確認。Crossrefには開始ページ53のみ登録)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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