実験・2014年

GRの最上級から原書の小説へ:語彙カバー率は下がっても楽しんで読めた

Uden, J., Schmitt, D., & Schmitt, N. (2014). Jumping from the highest graded readers to ungraded novels: Four case studies. Reading in a Foreign Language, 26(1), 1–28 doi:10.64152/10125/66691

Graded Readers読解読む速さ語彙動機づけ

ひとことで言うと:GRを最上級まで読んだ人は、原書の小説に移っても、少し読みにくさはあるものの楽しんで読めた。

対象:英国の読書クラブに参加する移民の成人女性学習者4名(ポーランド・リトアニア出身、語彙サイズ約4,700〜6,000語族、中上級)、約29週間

なぜこの研究?

GRで多読を続けた学習者の目標の一つは、書き直されていない原書を楽しんで読めるようになることである。しかし、GRの最上級と原書の間には大きな語彙の「ギャップ」があると言われ、GRを卒業した学習者が本当に原書へ移れるのかは、ほとんど調べられていなかった。著者らは、GRシリーズを最上級まで読み進めた学習者を追跡し、原書への「ジャンプ」がどれほど大変なのかを、理解・速さ・語彙・気持ちの面から確かめた。

どうやって調べた?

週1回の読書クラブに参加する中上級の成人学習者4名が、Cambridge Readers のレベル5(2,800見出し語)を10冊、レベル6(3,800見出し語)を10冊、週1冊のペースで自分で選んで読んだ。最後の2冊のレベル6と、参加者の好みも考えて選んだ原書の小説2冊(『Peaceful Warrior』『The Innocent』)を評価に使った。4冊それぞれについて、事前に本の中の語の語彙テスト(カバー率の算出用)、読む速さの測定、読後の質問紙(楽しさ・読みやすさ)、内容理解のテスト(再生・選択式・図解)を行った。原書は読み終えるまでに最大4週間を認めた。

何がわかった?

語彙のカバー率は、GRの最上級では平均99.1%(全員98%以上)だったが、原書の小説では平均95.7%に下がった。知らない語が「100語に1語」から「25語に1語」ほどに増えた計算になる。内容理解の平均はGRで87.6%、原書で71.3%と下がったが、遊びの読書としては十分な水準で、4人中3人は原書でも十分に理解できた。読む速さは平均で毎分183語から170語へとわずかに下がっただけだった。楽しさや読みやすさの評価は下がったが、ほぼすべてが肯定的な側にとどまった。一方で、語彙カバー率は同程度でも、1人は原書で理解が大きく下がるなど、ジャンプへの対応には個人差があった。著者らは、GRから原書へ移ることは可能で、両者の語彙のギャップは従来考えられていたほど大きくない可能性があると結論づけた。

  • 語彙カバー率:GR最上級で平均99.1% → 原書の小説で平均95.7%
  • 内容理解はGR 87.6% → 原書 71.3%と下がったが、遊びの読書には十分な水準だった
  • 読む速さは毎分183語 → 170語と、わずかな低下にとどまった
  • 楽しさ・読みやすさの評価は下がったが、多くは肯定的だった。ただし個人差が大きかった
  • GRと原書の語彙のギャップは、従来の見積もりより小さい可能性が示された

主な数字

  • 参加者4名、レベル5・6のGR計20冊(週1冊)+原書2冊、約29週間
  • 語彙カバー率:GR最上級 平均99.1% → 原書 平均95.7%
  • 内容理解の平均:GR 87.6% → 原書 71.3%
  • 読む速さの平均:毎分183語 → 170語

読むときの注意(研究の限界)

参加者は4名だけの事例研究で、全員が意欲の高い読書クラブのメンバーだった。英国に住んで英語に日常的に触れている成人で、日本の学習者とは環境が違う。原書は2冊だけで、1人は途中で読むのをやめ、1人は映画を見ていたなど、データにばらつきがあった。著者らもこれを限界として認めている。使ったGRは原作のある名作の書き直しではなく、オリジナル作品のシリーズだった。

多読をする人・教える人へ

GRを最上級まで読み進めれば、原書の小説はもう射程圏内である。最初は知らない語が増えて読みにくく感じても、それは自然なことで、理解や速さが大きく落ちるわけではない。原書に移るときは、好きなジャンルで、短めの読みやすい小説から挑戦するとよい。ただし人によって感じ方は違うので、つらければGRに戻ってもかまわない。GRと原書を行き来しながら、少しずつ原書の割合を増やしていくのも一つの方法である。

今日からできること

  • 自習:GRの上級レベルが楽に読めるようになったら、好きなジャンルの短めの原書を1冊試す
  • 自習:原書では知らない語が増えるのが普通。話の流れがつかめていれば気にせず読み進める
  • 授業:原書への移行期には、生徒が自分で表紙裏のあらすじを読んで本を選べるようにする

確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(方法・結果の表・考察)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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