読解に必要な語彙は? 最低ライン4,000〜5,000語、理想は8,000語
Laufer, B., & Ravenhorst-Kalovski, G. C. (2010). Lexical threshold revisited: Lexical text coverage, learners' vocabulary size and reading comprehension. Reading in a Foreign Language, 22(1), 15–30 doi:10.64152/10125/66648
ひとことで言うと:知っている単語が1,000語増えるごとに読解の点が上がった。自力で読むには8,000語ほどが理想。
対象:イスラエルの学生745名(大半は大学で学術英語のコースを受講。母語はヘブライ語・アラビア語・ロシア語)
なぜこの研究?
英文を十分に理解するには、どれだけの語彙が必要なのか。先行研究では、文章中の既知語の割合(カバー率)として95%や98%という数字が言われてきたが、学習者の実際の「語彙サイズ」と「カバー率」と「読解テストの成績」の3つを同時に調べた研究は少なかった。また、「十分な読解」とは何を指すのかもあいまいだった。著者らは、大規模なデータでこの3つの関係を調べ、語彙の「必要ライン(閾値)」を具体的に示そうとした。
どうやって調べた?
イスラエルの大学で学術英語を学ぶ学生735名と、英語の授業を免除された上級者10名の計745名を対象にした。読解力は、国の大学入学試験(心理測定入試)の英語の部(150点満点、学術的な英文の読解)で測った。語彙サイズは語彙レベルテスト(どの頻度帯の語を知っているかを測るテスト)で推定し、1,000語ごとのグループに分けた。カバー率は、公開されている過去の入試問題(約19,000語)を語彙分析ソフトで調べ、「最頻出の何千語を知っていれば文章の何%がわかるか」を計算した。人名・地名などの固有名詞が文章の約2.1%を占めることも別に計算した。
何がわかった?
語彙サイズが大きいほど、読解の得点は高かった。平均点は、約1,000語の学生で83点、2,000語で90点、3,000語で102点、4,000語で111点、5,000語で122点、6,000〜8,000語の上級者は138点だった。1,000語増えるごとに得点はおよそ10点ずつ上がり、語彙の差で読解の得点のばらつきの約64%が説明された。興味深いのは、語彙が増えると、カバー率はほとんど変わらなくても読解の点は上がり続けたことである。例えば5,000語から6,000〜7,000語へのわずかなカバー率の上昇(1%前後)が、大きな得点の伸びと結びついていた。著者らは、自力で学術的な英文を読める「理想ライン」を8,000語族(固有名詞を含めカバー率98%)、助けを借りながら読める「最低ライン」を4,000〜5,000語族(同95%)と提案した。
- 語彙サイズが大きいほど読解の得点が高く、1,000語増えるごとに約10点上がった
- 語彙の差で、読解の得点のばらつきの約64%が説明された
- 語彙が増えるとカバー率はわずかしか増えないのに、読解の得点ははっきり上がった
- 理想ライン:8,000語族(固有名詞を含めてカバー率98%)で、自力で学術英文を読める
- 最低ライン:4,000〜5,000語族(固有名詞を含めてカバー率95%)で、助けがあれば読める
主な数字
- 参加者745名
- 語彙サイズ別の読解の平均点(150点満点):1,000語 83点/2,000語 90点/3,000語 102点/4,000語 111点/5,000語 122点/6,000〜8,000語 138点
- 1,000語増えるごとに読解の得点が約10点上昇
- 理想ライン:8,000語族(カバー率98%)、最低ライン:4,000〜5,000語族(カバー率95%)
読むときの注意(研究の限界)
読解力は学術的な英文の入試で測っており、物語を楽しむ多読とは文章の種類も読み方も違う。語彙サイズは語彙レベルテストからの大まかな推定で、著者らも「おおよその値」としている。6,000〜8,000語の上級者は10名と少ない。また、受けた入試の版と、カバー率を計算した過去問は別のものだった(難しさは同程度とされる)。
多読をする人・教える人へ
ふつうの英文、特に説明文や学術的な文章を自力で読みこなすには、数千語単位の語彙が必要である。そこに届くまでは、語彙を制限したGRやレベル別の本が頼りになる。また、語彙がわずかに増えるだけでも読解は楽になるので、多読と語彙学習を地道に続ける意味は大きい。大学入試や資格試験の長文読解を目指す人にとっても、「4,000〜5,000語」「8,000語」は具体的な目標になる。
今日からできること
- 自習:語彙サイズテストで自分のおおよその語彙数を知り、4,000〜5,000語を中間目標にする
- 自習:多読で出会う語を増やしつつ、単語帳などで頻度の高い語から計画的に覚える
- 授業:説明文を扱う前に、語彙レベルに合ったやさしい本で読む量を確保する
確認方法:Crossref(書誌・抄録)+RFL掲載の本文PDF(方法・結果の表・考察)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
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