実験・2007年

単語は文脈で10回出会うとかなり身につくが、すべてを知るにはもっと必要

Webb, S. (2007). The Effects of Repetition on Vocabulary Knowledge. Applied Linguistics, 28(1), 46–65 doi:10.1093/applin/aml048

語彙日本の研究

ひとことで言うと:文の中で同じ単語に1回・3回・7回・10回出会わせると、回数が増えるほど単語のいろいろな面が身についた。

対象:英語を学ぶ日本人学習者121名

なぜこの研究?

読書で単語を覚えるには、同じ語に何回出会う必要があるのか。これは多読でどれだけ読めばよいかを考えるうえで大切な問いである。また、単語を「知っている」には、つづり、意味、文法的な使い方、ほかの語との結びつきなど、いろいろな面がある。出会う回数によって、それぞれの面の知識がどう伸びるのかを確かめた。答えがわかれば、多読の量の目安を考える助けになる。

どうやって調べた?

日本人英語学習者121名を対象に、文脈の中で目標語に出会う回数を1回・3回・7回・10回と変えて比べた。目標語は、本物の文章の中のよく知られた語を、学習者が知らない「作り語(ナンセンス語)」に置き換えたもので、もともと知っている可能性をなくした。そのうえで、つづり、連想、文法的な働き、文の中での使い方、意味と形の結びつきなど、10の面の知識をテストした。このように知識をいくつもの面に分けて測ることで、「意味はわかるが使い方はまだ」といった、知識の深まり方の違いを見ることができる。

何がわかった?

出会う回数が増えるたびに、少なくとも1つの面の知識がはっきり伸びた。つまり、回数を重ねるほど単語の知識は広く深くなっていった。著者は、文脈の中で未知語に10回出会えば、かなりの学習が起こりうると述べている。一方で、10回出会っても、単語のすべての面を十分に知るところまでは届かず、完全に身につけるには10回より多くの出会いが必要かもしれない、としている。この研究は、単語を「知っている/知らない」の二択ではなく、いくつもの面が少しずつ育っていくものとしてとらえている。回数を重ねるほど広い面の知識が育つという結果は、多読で同じ語に何度も出会うことの大切さを、具体的な形で裏づけるものである。また、10回出会っても完全ではないという点は、読書だけで単語を完璧にするのは難しいことも示している。

  • 出会う回数(1・3・7・10回)が増えるごとに、単語知識のどこかの面が伸びた
  • 10回出会うと、かなりの学習が起こった
  • それでも単語の全ての面を知るには、10回では足りない可能性がある

主な数字

  • 参加者:日本人学習者121名
  • 出会う回数:1回・3回・7回・10回、測った知識の面:10種類

読むときの注意(研究の限界)

作り語を使った実験なので、実際の多読で本物の単語に出会う状況とは違う点がある。今回確認できたのは抄録の範囲で、各回数での具体的な正答率などの数値は確かめていない。出会いは短い期間に集中しており、時間をあけて出会う場合の効果はこの研究だけではわからない。

多読をする人・教える人へ

多読で単語が身につくには、同じ語に何度も出会うことが必要で、10回はひとつの目安になる。易しい本をたくさん読み、同じレベルの本を何冊も読むと、よく使われる語に自然と何度も出会える。それでも足りない面は、単語学習と組み合わせて補うとよい。また、つづりや文法的な使い方など、意味以外の知識もくり返しの中で育つので、多読は単語を「使える」状態に近づける場にもなる。

今日からできること

  • 同じレベルのGraded Readersを何冊も続けて読み、同じ語に何度も出会う機会を増やす
  • 読書中に何度も見かける気になる語は、読み終えてから例文ごとメモして確認する

確認方法:Crossref(書誌)+出版社サイト(Oxford Academic)の抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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