実験・2011年

単語を覚えるなら、講義を聞くより文章を読むほうが効果的。ただし上級者では差が縮む

Vidal, K. (2011). A Comparison of the Effects of Reading and Listening on Incidental Vocabulary Acquisition. Language Learning, 61(1), 219–258 doi:10.1111/j.1467-9922.2010.00593.x

語彙リスニング大学生

ひとことで言うと:同じような学術的な内容でも、読んだ人のほうが聞いた人より単語を多く覚えた。ただ、英語力が高い人ほど差は小さくなった。

対象:大学で英語を学ぶ学生230名

なぜこの研究?

読むことでも聞くことでも単語は自然に覚えられると考えられているが、両者を同じような条件で直接比べた研究は多くなかった。また、単語がどのくらいの回数出てくるか、どんな種類の語か、説明のされ方、語の形から意味を推測しやすいかといった要因が、読む場合と聞く場合で同じように働くのかもわかっていなかった。そこで、両者を直接比べた。

どうやって調べた?

230名の学生を、①3つの学術的な文章を読む群、②3つの講義(映像)を見て聞く群、③何もインプットを受けずに単語テストだけを受ける群に分けた。単語の知識を、インプットの前後と1か月後に測った。さらに、英語力を4つのレベルに分けて比べ、単語の出現回数、語の種類、説明の仕方、語形からの推測しやすさが、学習とどう関係するかも分析した。インプットを受けない群を置いたことで、テストを受けたことによる伸びと区別できるようにしている。

何がわかった?

4つの英語力レベルすべてで、読んだ群のほうが聞いた群より多くの単語を身につけた。ただし、英語力が上がるにつれて、読む場合と聞く場合の差は小さくなる傾向があった。記憶の残り方も同じ傾向で、1か月後も、最上級の学習者を除いて読んだ群のほうが多く覚えていた。最上級の学習者では、読む場合と聞く場合の1か月後の成績に意味のある差はなかった。また、出現回数などの4つの要因と学習の関係も、読む場合と聞く場合で違っていた。この研究は、読む・聞くのどちらが単語学習に向いているかが、学習者の英語力によって変わることを示した点で重要である。

  • どの英語力レベルでも、読んだほうが聞いたより単語を多く覚えた
  • 英語力が高いほど、読むと聞くの差は小さくなった
  • 1か月後の記憶も読むほうが多かったが、最上級者では差がなかった
  • 単語の出現回数などの要因の働き方は、読むと聞くで違っていた

主な数字

  • 参加者:230名(読む群・聞く群・インプットなしの群)
  • 記憶の確認:1か月後

読むときの注意(研究の限界)

使ったのは学術的な文章と講義で、物語を楽しむ多読・多聴とは内容も目的も違う。抄録で確認できる範囲では、各群の人数や具体的な得点は確かめていない。聞く群は映像つきの講義を見ており、純粋な音声だけのリスニングとは条件が異なる。

多読をする人・教える人へ

とくに初級〜中級のうちは、単語を増やす手段として「読む」ことの効果が大きい。耳だけで知らない単語を覚えるのは難しいので、音声を使うなら文字といっしょに聞く(聞き読み)のが現実的。英語力が上がれば、聞くことからも単語を学びやすくなっていく。多聴だけで語彙を増やそうとするのは、初級者には効率がよくない。

今日からできること

  • 初級のうちは、音声だけで済ませず、文字を見ながら聞く聞き読みを基本にする
  • 授業では、講義や動画を使う前後に、同じテーマの文章を読ませて単語に出会う回数を増やす

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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