実験・2013年

聞いて理解するには、読む場合ほど多くの単語は要らないかもしれない(95%で十分)

van Zeeland, H., & Schmitt, N. (2013). Lexical Coverage in L1 and L2 Listening Comprehension: The Same or Different from Reading Comprehension?. Applied Linguistics, 34(4), 457–479 doi:10.1093/applin/ams074

リスニング語彙

ひとことで言うと:話を聞いて理解するには、知っている単語が9割5分あればだいたい十分で、読む場合の98%より低かった。

対象:英語の母語話者36名と非母語話者40名

なぜこの研究?

読む場合、文章の98%の語を知っていると十分に理解できるという研究が多い。この98%という数字はリスニングにもあてはめられ、「聞いて理解するには6,000〜7,000語が必要」という目標の根拠にもなってきた。しかし、聞く場合も本当に同じ数字でよいのかは、直接確かめられていなかった。そこで、聞く場合のカバー率を直接調べた。

どうやって調べた?

日常的な語り口の話し言葉(4つの短い話)を用意し、その中で知っている語が占める割合(語彙カバー率)を変えて、聞き手が理解できるかを調べた。英語の母語話者36名と非母語話者40名に音声を聞かせ、話の内容(事実情報)をどれだけ理解できたかを測った。語彙カバー率とは、ある文章や音声の中で、聞き手(読み手)が知っている語が全体の何%を占めるかを表す数字である。話の中の一部の語を変えることで、同じ内容の話でカバー率だけが違う条件を作り、カバー率によって理解がどう変わるかを比べた。母語話者を含めたのは、非母語話者の結果と比べる基準にするためである。

何がわかった?

母語話者も非母語話者も、多くの人は知っている語が90%しかなくても話の内容をおおむね理解できた。ただし、非母語話者では90%のときの理解度に大きなばらつきがあった。95%になると、非母語話者も比較的よく理解でき、ばらつきもずっと小さくなった。95%を目安にすると、聞いて理解するのに必要な語彙は2,000〜3,000ワード・ファミリーとなり、98%を基準にした従来の計算(6,000〜7,000)よりかなり少なくなる。この結果は、読む場合の基準をそのまま聞く場合に当てはめると、必要な語彙を多く見積もりすぎてしまう可能性を示している。

  • 多くの聞き手は、知っている語が90%でも話をおおむね理解できた
  • 非母語話者では、90%のときは理解度の個人差が大きかった
  • 95%になると、非母語話者も安定して理解できた
  • 聞いて理解するのに必要な語彙は、2,000〜3,000ワード・ファミリーと見積もられた

主な数字

  • 参加者:母語話者36名、非母語話者40名
  • 十分な理解の目安:語彙カバー率95%(90%でも多くは理解、ただし個人差大)
  • 必要語彙の見積もり:95%基準で2,000〜3,000、98%基準の従来値は6,000〜7,000ワード・ファミリー

読むときの注意(研究の限界)

使ったのは日常的で易しい語り口の短い話で、講義のような情報量の多い音声では結果が違う可能性がある。理解は事実を問う問題で測っており、細かいニュアンスまで理解できたかは別の問題である。話の数も4つと限られている。

多読をする人・教える人へ

リスニングは、読む場合より少し多めの未知語があっても理解できる可能性がある。易しい物語の音声なら、2,000〜3,000語レベルの語彙で十分に楽しめる素材も多い。多聴では、読む本より少し難しめのものも試せるが、95%前後の「ほとんどわかる」素材から始めるのが安全である。ただし個人差もあるので、自分の理解度を確かめながら素材を選ぶことが大切。

今日からできること

  • 読んで楽に理解できるレベルの本の音声から多聴を始め、慣れたら少しずつレベルを上げる
  • 授業では、リスニング素材の語彙レベルを確認し、ほとんどの語を知っている素材を選ぶ

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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