書く練習を増やすより、多読を加えたほうが作文がうまくなった:香港の中高生
Tsang, W.-K. (1996). Comparing the Effects of Reading and Writing on Writing Performance. Applied Linguistics, 17(2), 210–233 doi:10.1093/applin/17.2.210
ひとことで言うと:作文の練習をたくさんするより、多読を加えたほうが、英語の作文の内容と言葉づかいが伸びた。
対象:香港の広東語を母語とする中等学校の生徒(4つの学年レベル)
なぜこの研究?
英語の作文を上達させるには、たくさん書くのがよいのか、それとも読むのがよいのか。「書く力は書くことで伸びる」と考えるのが普通だが、インプット(読むこと)を重視する立場からは、たくさん読むことで書く力の土台ができると考えられる。この研究は、香港の中等学校で、通常の授業に多読を加える場合と、頻繁な作文練習を加える場合とで、英語の描写文(ものごとを描写する作文)の力がどう変わるかを比べた。
どうやって調べた?
広東語を母語とする香港の中等学校の生徒を、4つの学年レベル(form level)にわたって対象とした。生徒は次の3つのプログラムのどれかに参加した。(A)通常の英語授業+英語と関係のない数学の補充授業、(B)通常の授業+多読、(C)通常の授業+頻繁な作文練習。英語の描写文を書かせ、全体の出来に加えて、内容(content)や言語使用(language use)などの観点から評価し、プログラムの種類と学年の影響を分析した。
何がわかった?
プログラムの種類と学年レベルのそれぞれに有意な効果があり、両者の組み合わせによる違い(交互作用)は見られなかった。全体として有意な効果があったのは「通常の授業+多読」のプログラムだけで、数学の補充授業を加えたプログラムも、頻繁な作文練習を加えたプログラムも、有意な効果はなかった。観点別に見ると、「内容」で有意な伸びを示したのは多読のプログラムだけだった。同じく「言語使用」(文法や語の使い方の正しさ)でも、有意な効果があったのは3つのうち多読のプログラムだけだった。つまり、作文の練習量を増やすより、読む量を増やすほうが作文の改善につながった。
- 通常の授業に多読を加えたプログラムだけが、作文全体で有意な効果を示した
- 頻繁な作文練習を加えても、作文の成績に有意な効果はなかった
- 作文の「内容」で有意に伸びたのは多読のプログラムだけだった
- 作文の「言語使用」でも有意な効果があったのは多読のプログラムだけだった
読むときの注意(研究の限界)
1つの地域(香港)の中等学校での研究で、作文の種類も描写文に限られている。抄録では参加人数、期間、読んだ量、効果の大きさは確認できない。頻繁な作文練習にどのようなフィードバックがあったかによって結果は変わる可能性があり、「書く練習は無意味」とまでは言えない。
多読をする人・教える人へ
作文力を伸ばしたいとき、書く量だけを増やしても成果が出にくい場合がある。多くの英文を読むことで、書く内容のアイデアや、自然な表現・文の組み立て方が身につき、作文の質が上がる。作文指導をする教師は、書く課題を増やす前に、読む時間を確保することを検討する価値がある。自習で作文を上達させたい人も、書く練習と同時に英文を読む量を増やすとよい。
今日からできること
- 英作文が苦手なら、まず毎日やさしい英語の本を読み、気に入った表現をノートに写す
- 授業では作文課題の一部を多読の時間に置きかえ、読んだ本をもとに短く書かせる
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。