台湾の大学生の英作文力を最もよく説明したのは「自由な読書」だった
Lee, S.-Y. (2005). Facilitating and Inhibiting Factors in English as a Foreign Language Writing Performance: A Model Testing With Structural Equation Modeling. Language Learning, 55(2), 335–374 doi:10.1111/j.0023-8333.2005.00306.x
ひとことで言うと:英作文の上手さを左右する要因を調べたら、意味のある影響があったのは「自分から楽しんで読む読書」だけだった。
対象:外国語として英語を学ぶ台湾の大学生
なぜこの研究?
英語の作文の出来には、いろいろな要因が関わっていると考えられる。書くことへの不安(ライティング不安)や、書けなくなる「ライターズ・ブロック」はマイナスに働き、自由な読書や自分から書く習慣はプラスに働くかもしれない。また、受けてきた授業についての考え方や態度も関係するだろう。この研究は、これらの要因と作文の関係を一つのモデルにまとめ、どの要因が本当に作文力を説明するのかを検証した。
どうやって調べた?
台湾の大学生を対象に、作文の出来を妨げると考えられる要因(ライティング不安、ライターズ・ブロック)、促すと考えられる要因(自由な読書、自分から始める書く活動)、そして受けてきた授業活動に対する信念や態度を調べた。そのうえで、構造方程式モデリング(多くの要因の関係を同時に図式化して検証する統計手法)を使い、要因どうしの関係と、それぞれが作文の成績に与える影響を分析した。このような手法を使うと、ある要因の影響を、他の要因の影響を考慮したうえで評価できる。作文の成績が何によって最もよく説明されるかを、要因を並べて比べられる点が特徴である。
何がわかった?
分析の結果、作文の成績を有意に予測した要因は「自由な読書(free voluntary reading)」だけだった。自分から書く習慣や、不安・ライターズ・ブロックといった要因は、作文の成績を有意には予測しなかった。また、促す要因と妨げる要因の両方を含む修正版のモデルが、データをうまく説明できることが確かめられた。英語の作文を伸ばすうえで、楽しみのための読書が重要な役割を果たしていることを示す結果である。自分から書く習慣より、読む習慣のほうが作文と強く結びついていた点は、「書く力は書くことで伸びる」という常識に一石を投じるものだ。
- 作文の成績を有意に予測したのは、自由な読書だけだった
- 自分から書く習慣は、作文の成績を有意には予測しなかった
- 促す要因と妨げる要因の両方を含むモデルが、データをうまく説明した
読むときの注意(研究の限界)
一度の調査データをもとに要因どうしの関係を分析した研究で、読書を増やす実験をしたわけではないため、因果関係は慎重に考える必要がある。読書量などは学習者の自己申告に基づく可能性がある。参加人数や作文の評価方法は抄録では確認できない。
多読をする人・教える人へ
作文の上達には、書く練習や不安を減らす工夫だけでなく、ふだんから楽しんで英語を読んでいることが大きく関わっている。英作文の授業でも、読書の習慣づくりを並行して進めると効果的だと考えられる。書くのが苦手な人も、まず読むことから始めればよい。作文に不安がある人も、まずは英語を読む楽しさから入るのが近道かもしれない。
今日からできること
- 英作文の勉強と並行して、寝る前の15分を英語の本を楽しむ時間にする
- 授業では作文クラスでも多読用の本を用意し、読書記録を課題の一部にする
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。