実験・2004年

読書中心の授業を受けた大学生、文法と語彙のテストで従来型の授業を上回る

Rodrigo, V., Krashen, S., & Gribbons, B. (2004). The effectiveness of two comprehensible-input approaches to foreign language instruction at the intermediate level. System, 32(1), 53–60 doi:10.1016/j.system.2003.08.003

文法語彙大学生

ひとことで言うと:たくさん読む授業を受けた学生は、文法の授業中心の学生より、文法と語彙のテストで良い成績だった。

対象:米国の大学で外国語としてスペイン語を学ぶ4学期目の学生(多読クラス・読書討論クラス・従来型クラス)

なぜこの研究?

「理解可能なインプット」(わかる言語を大量に受け取ること)を中心にした授業は、初級ではよく研究されてきたが、中級レベルでの効果はあまり調べられていなかった。また「文法は直接教えなければ身につかない」という考えも根強い。この研究は、大学の中級レベルの外国語(スペイン語)の授業で、インプット中心の2種類の授業を従来型の授業と比べた。英語ではないが、多読の文法への効果を考えるうえで参考になる研究である。

どうやって調べた?

米国の大学で外国語としてスペイン語を学ぶ4学期目(2年目の後半)の学生が対象。①多読クラス(指定された読み物と自分で選んだ読み物を組み合わせて読む)、②読書・討論クラス(指定された読み物を読み、ディベートや話し合いをする)、③従来型の授業のクラス、の3つを比べた。チェックリスト形式の語彙テスト、文法テスト、クローズテスト(文章の空所を埋めるテスト)の成績を比べた。どちらのインプット中心のクラスも、読むことを中心にしている点が共通している。

何がわかった?

多読クラスと読書・討論クラスのどちらも、チェックリスト形式の語彙テストと文法テストで、従来型の授業のクラスを上回った。クローズテストでは、読書・討論クラスが従来型のクラスを上回ったが、多読クラスと従来型のクラスの間には差がなかった。文法を中心に教えた従来型の授業より、読むことを中心にした授業のほうが文法テストでも良い成績だった点が注目される。著者らは、中級レベルでもインプット中心の教え方が有効であることを確かめた結果だとまとめている。「読むだけでは文法は身につかない」という見方に対する一つの反証になる。

  • 多読クラスと読書・討論クラスは、語彙テストで従来型のクラスを上回った
  • 両クラスは、文法テストでも従来型のクラスを上回った
  • クローズテストでは読書・討論クラスが従来型を上回ったが、多読クラスと従来型に差はなかった

読むときの注意(研究の限界)

対象はスペイン語を学ぶ米国の大学生で、英語学習とは言語も環境も違う。クラス単位の比較で、参加人数は抄録では確認できない。クローズテストの差について抄録が示す有意確率(p = 0.105)は一般的な基準(0.05)を満たしておらず、この部分は慎重に読む必要がある。

多読をする人・教える人へ

文法を直接教える時間を減らして読む時間を増やしても、文法の力が落ちるとは限らず、むしろ伸びることがある。多読の授業に不安を感じる教師にとって、「読むことは文法の学習にもなる」ことを示す一つの証拠になる。学習者は、文法書の学習に加えて、たくさん読むことで文法を実際の文の中で確認できる。教える側は、文法テストの成績を理由に多読を避ける必要はない。

今日からできること

  • 文法の問題集だけでなく、同じ時間をやさしい本の多読にも使ってみる
  • 授業では文法の説明を短くし、浮いた時間を多読と読んだ内容の話し合いに回す

確認方法:Crossref(書誌)+ERICの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

関連する研究