工夫した多読で、韓国の中高生が英語の前置詞を正しく使えるように
Song, J., & Sardegna, V. G. (2014). EFL Learners’ Incidental Acquisition of English Prepositions through Enhanced Extensive Reading Instruction. RELC Journal, 45(1), 67–84 doi:10.1177/0033688214522623
ひとことで言うと:工夫を加えた多読を1学期続けた生徒は、前置詞の誤りに気づき、正しく使えるようになった。
対象:韓国の中等学校の生徒24名(強化型多読の群12名・比較群12名)、1学期間の放課後プログラム
なぜこの研究?
in、on、at などの前置詞は、多くの学習者にとって難しい文法項目だ。規則で覚えにくく、使い方は文脈によって細かく変わる。多読で大量の英文に触れれば、前置詞の使い方も自然に(付随的に)身につくのだろうか。この研究は、多読に指導上の工夫を加えた「強化型多読(enhanced extensive reading)」が、前置詞の付随的な習得にどう役立つかを調べた。
どうやって調べた?
韓国の中等学校の生徒が、1学期間の放課後プログラムで強化型多読の指導を受けた(12名)。比較群は、この追加の指導を受けなかった同程度の生徒12名である。両群に、前置詞の使い方についての事前・事後テストを行い、①文中の誤った前置詞に気づく力、②誤りを直す力、③正しい前置詞を自分で書く力を測った。さらに、強化型多読の群の生徒にふり返りのインタビューを行い、習得に影響した要因を調べた。テストに加えてインタビューを行うことで、なぜ伸びたのかを学習者の側から探っている。
何がわかった?
強化型多読を受けた群は、誤った前置詞に気づく力、それを直す力、正しい前置詞を書く力のすべてで伸びた。一方、比較群の伸びは小さく、誤った前置詞に気づく力で少し伸びただけだった。インタビューからは、習得を助けた要因として5つが挙げられた。読解力が上がったこと、語彙が増えたこと、意味のある文脈の中で前置詞に何度も出会ったこと、前置詞の使い方についての直感が育ったこと、そして新しく取り入れた表現をアウトプット活動で使う機会があったことである。量的なテストの結果と、学習者自身のふり返りの両方から、多読が文法の習得を助ける道筋を示した研究である。
- 強化型多読の群は、誤った前置詞に気づく・直す・正しく書く、の3つすべてで伸びた
- 比較群は、誤りに気づく力でわずかに伸びただけだった
- 文脈の中で前置詞に何度も出会うことが習得を助けたと考えられる
- 読んだ表現をアウトプット活動で使う機会も要因の一つに挙げられた
主な数字
- 参加者:24名(強化型多読12名・比較群12名)
- 期間:1学期間(放課後プログラム)
読むときの注意(研究の限界)
各群12名と非常に小さな研究で、統計的な一般化には限界がある。強化型多読の群は追加の指導を受けており、比較群との違いは「読んだ量」だけでなく「追加の指導時間」でもある。多読そのものの効果と、加えた工夫の効果を分けることはできない。
多読をする人・教える人へ
前置詞のような細かい文法も、文脈の中で何度も出会うことで感覚が育つ。ただし、ただ読むだけでなく、読んだ表現を使ってみる活動などの工夫を組み合わせると、正しく使う力まで伸びやすい。多読をベースに、気づいた表現を書いたり話したりして使う機会をつくるとよい。文法の練習問題だけでは身につきにくい項目ほど、多読との組み合わせが役立つ。
今日からできること
- 多読中に気になった前置詞のフレーズ(例:on the bus)を3つメモし、自分の文を作る
- 授業では多読の後に、本の中の文を使った短い文作りやペアでの説明活動を入れる
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。