実験・2019年

文法の授業を多読に置きかえた1年間、高専1年生の文法・語彙と読解がともに上昇

Aka, N. (2019). Reading performance of Japanese high school learners following a one-year extensive reading program. Reading in a Foreign Language, 31(1), 1–18 doi:10.64152/10125/66747

文法読解日本の研究長期

ひとことで言うと:週2時間の文法の授業を1年間多読に置きかえたら、文法・語彙と読解の点がどちらも文法授業の学年より伸びた。

対象:日本の高等専門学校(高専)1年生405名(15〜16歳、統制群205名・多読群200名)、1年間

なぜこの研究?

日本の中学・高校の検定教科書に出てくる英語の量はとても少なく、多読でインプットを増やすことが提案されてきた。しかし、高校生を対象にした多読研究は大学生に比べて少なく、統制群(比較のためのグループ)があり、長期間で、参加者の多い研究はさらに少ない。著者の勤める高専でカリキュラムが変わり、文法の授業が多読の授業に置きかわったため、大きな2学年を比べる1年間の研究ができるようになった。

どうやって調べた?

高専の1年生(高校1年生にあたる)405名が対象。2014年度の学年(205名)は週6時間の英語のうち2時間が文法の授業で、文法規則の学習と英日・日英の翻訳練習をした(統制群)。2015年度の学年(200名)は、その2時間が多読の授業になった(多読群)。多読群は図書館にある約3,000冊のGR(学習者向けの段階別読本)やレベル別の本から、自分の力より少しやさしい本を選んで読んだ。年度の始め(4月)と終わり(2月)にBACEという英語テストを受け、「文法・語彙」と「読解」のセクションの点を比べた。

何がわかった?

年度の始めには、両群の点数に差はなかった。1年後、多読群は統制群より「文法・語彙」でも「読解」でも有意に高い点を取り、効果量(差の大きさを表す指標)は中程度だった。文法の授業を受けた統制群の文法・語彙の点はほとんど伸びなかったのに対し、多読群は大きく伸びた。多読群を事前テストの点で上位・中位・下位に分けると、中位と下位のグループで伸びが特に大きく、下位グループは大きな効果量を示した。一方、上位グループの読解の点は伸びなかった。多読群が1年間に読んだ量は平均約11万5千語だった。著者は、中学で習った知識が多読によって使える形で活性化されたと考えている。

  • 1年後、多読群は文法・語彙と読解の両方で統制群より有意に高かった
  • 文法の授業を受けた統制群より、多読群のほうが文法・語彙の点も伸びた
  • 中位・下位の学習者で特に大きな伸びが見られた
  • 上位の学習者の読解の点は伸びなかった

主な数字

  • 参加者:405名(統制群205名・多読群200名)、置きかえた授業:年間60時間
  • 事後テストの効果量:文法・語彙 d = 0.68、読解 d = 0.60(中程度)
  • 下位グループの伸び:文法・語彙 d = 1.37、読解 d = 0.94
  • 平均読書量:約11万5千語(1年間)

読むときの注意(研究の限界)

統制群と多読群は別の年度の学年で、学年ごとの違いの影響は完全には除けない。テストは中学レベルの内容を中心にしたもので、上位層の伸びを測りきれていない可能性がある(天井効果)。この論文には掲載後に批判が寄せられ、著者による応答も同じ雑誌に掲載されているので、あわせて読むとよい。

多読をする人・教える人へ

文法の授業を多読に置きかえても、文法の力が下がるどころか伸びる場合があることを、日本の高校段階の大人数で示した研究。特に、英語が得意でない生徒ほど多読から得るものが大きかった。中学で習ったことを「使える知識」にするには、やさしい英文をたくさん読む時間が有効だと考えられる。成績の上位層は伸びにくかったので、上位層には少し難しめの本を勧めるなどの工夫も必要だろう。

今日からできること

  • 中学英語の復習として、中学レベルの文法で書かれたやさしい本を年間10万語を目標に読む
  • 授業では週1〜2時間を多読にあて、図書館の本を自由に選ばせて1年間続ける

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録+本文(RFL、オープンアクセス)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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